Jan 2015 - p2/p5 -
かつてヨーロッパでその存在が知られた「スキタイの子羊」こと、植物子羊/バロメッツ。19世紀に、その正体はワタの樹だと説き明かされました。しかしここに、その源流ではないかと崔准教授が考えるもうひとつの物語があります。それはいったい…?
では、ギリシアのもうひとつのヒツジの話を、追いかけてみましょう。
後編(1) アルゴー号の冒険
コルキスの金羊毛
ところでみなさんは、ギリシャ神話でヒツジ、といえば、何を思い浮かべますか?夜空に浮かぶ、おひつじ座?なるほど。え、牧神パーンですか?あれはヤギですね(笑)
わたしは何をおいてもまず、ゴールデン・フリース、そう、アルゴナウタイの大冒険です!
黄金の羊毛、英雄たち、ドラゴン、そして青銅の巨人!
幼い頃から、神話の中でも最も好きなエピソードのひとつ。レイ・ハリーハウゼンによる特撮映画、『アルゴ探検隊の大冒険』でも知られた、あの大冒険です。
うーん、興奮します。
おじの奸計によって王座を奪われた王子イアソンは、王位を取り戻す条件としてコルキスにあるという黄金の羊毛を手に入れる旅に赴かされます。
幸い、神々の王ゼウスと女王ヘーラーの助力を得られたイアソンは、女神アテナーの助言に従い、技師アルゴーに巨船を造らせました。
50の櫂を持つ巨船。
その名は、アルゴ号!
うわー、大きい!!
船尾にはイアソンを助けるべく、女神ヘーラーの像が取り付けられていました。この像を通じて神託をもたらし、イアソンたち一行に助言を伝えていたんですね。
ヘーラーと言えば、人気の高い女神アテナーとは仲の悪いイメージがつきまといますが、この神話では、両女神が協力して一行を助けている、なんてのも面白いところです。ギリシア神話、オールスター共演!なんてね(笑)
アルゴ号にはその50の櫂を漕ぐ、50人の英雄が乗り込むことができます。
あんまりにも多かったので、宿敵であるおじの息子など、イアソンの失脚を狙う者までも乗り込んでしまうのですがそこはさておき…
イアソンはまず、オリンピック大会を開催して乗船する英雄たちを集めることにしました。
こうして、知力、体力、勇気、そして技を併せ持った英雄たちが、ギリシア全土から集められました。
それが、
アルゴナウタイ!!
英語で言えばアルゴノーツ。
その中には、わたしたちにもとてもよく知られた人々も、含まれています。
アルゴナウタイ
まずは英雄ヘラクレス!
そう、ネメアの獅子退治など、12の試練を乗り越える冒険で知られる、あのヘラクレスです。
ペルセウスの子孫、つまり、ゼウスの子孫でもある彼は、ご先祖同様、星座の世界でも知られています。そう、ヘルクレス座ですよね。
続いては、カストルとポリュデウケス!
え?誰だって?ああ、ポルックスと言ったほうがわかりやすいですよね。そう、こちらも星座でおなじみ、あのふたご座の双子です。
ポリュデウケスは途中訪れた島で、ボクシングの試合をして見事勝利しています。さすが、オリンピックで選ばれただけありますね(笑)
おや?あちらには竪琴を持った人がいますよ。
そう、彼はオルフェウス!
ゼウスの娘にして詩の女神ミューズの一柱カリオペーを母に持つ、詩人の"王"。
後に、地獄の番犬ケルベロスをその竪琴の音色で魅了し、ハーデスとペルセポネに遭うという冥界降りの神話はあまりも有名ですが、実はこんな冒険にも、加わっていました。
このほかにもアルゴ号には、ミノタウロスを倒したアテナイの王子テセウス、医術の天才アスクレピオス、有翼の兄弟カライスとゼテス、などなど、大勢の英雄や、半神半人が乗り込んでいました。
なにせ総勢50名!ふー!
ちなみにヘラクレスは、ザンネンなことにコルキスまで辿り着きません。途中の島で、お付きの美少年ヒュラースが泉の精たちにかどわかされてしまったのを救うため、泣く泣くアルゴ号を離脱してしまうのです。
ワシ、ニク派。ケガワよりニク。でもって、ラムよりチキン♪
うーん、もし付いて来てくれていたら、凄い活躍だったでしょうにね!
きっと、こんな感じで。
※そうなんです、ヘラクレスとドラゴンを共に収めた写真が出来てしまっていたのです。これはマツガイ探し写真ですね(笑)
ともあれ、残された一行は一路、黄金の羊毛、すなわちゴールデン・フリースを求めて、現在のグルジア西部にあったとされるコルキスの地へ向け、旅を続けました。
しかし、アルゴナウタイの行く手には、とんでもない試練が待ち受けていたんです。
おーい、主役はおれだぞー。イアソンだぞー。
オルフェウスの冒険じゃないぞー。
(つづく)