Jan 2015 - making of
あとがき
2015年、新年あけましておめでとうございます!
ことしの干支は「未」。にちなんでやってみました、金羊毛をめぐるアルゴナウタイの大冒険 featuring 『スキタイの子羊』。
実際これ、アルゴナウタイも『スキタイの子羊』も、どちらもgeneの好きなエピソードです。このために未年の来るのをいまかいまかと待っていました。
…の割には、なかなか演目のストーリーや絵柄が思いつかず、なんと同じくギリシア神話つながりの2月演目のほうが先に出来てしまう始末。。。と言っても、もともとこのブログは月が替わってから撮影して創っていたのがいつのまにか事前準備するようになってるだけなので、まあいいんですが^_^;
ともあれ、なんとか無事、まとめました。
スキタイの子羊
冒頭登場する『スキタイの子羊』の話は、いまは絶版となっている名著、博品社から出版されていた、ヘンリー・リー氏とベルトルト・ラウファー氏の博物学論文を元にした叢書をベースとしています。
この博品社の「シリーズ 博物学ドキュメント」は、美しい装丁と魅惑的な題材が秀逸な本で、geneはこのほかに『鼻行類』、『ランゲルハンス島航海記』、『中国のセミ考』を所蔵しています。あ、たったいま、『中国のテナガザル』(西遊記好きなら知っている中野美代子さんの訳!)もポチっとしました^_^;ほかにも『キリン伝来考』、『動物と地図』、『ノミ大全』などなど、タイトルだけでワクワクしてしまう書物がずらり。
『スキタイの子羊』は、神田の古書店で購入しまして、いまみると、なんと1,050円で入手しているようです。これはおトク。博品社は、書籍好きや業界の方々に惜しまれながら業務を終了しましたが、その際、いくつかの書店が博品社フェアを開催して-在庫処分とも言えますが-、同社の展開した魅力的な本を高く評価していたのが記憶に在ります。
芸術とは一文のカネにもならないことに懸命に労力を捧げること。そんな定義に従うのならば、このシリーズがとりあげている博物学、奇譚、考察は、ある意味、文章による芸術、まさに、文芸の極みと言っていいでしょう。博物学という分野が打ち捨てられて久しく、工学、医学、薬学などの実学が重視されるいまの時代。ただ純粋に知的好奇心だけで動いた脳があったことを考えると愉しくなるのはgeneだけでしょうか?
そして、その題材。
ヨーロッパ人が長らく信じていた、動物植物の伝説。樹になるヒツジ。スキタイの地。その正体だとされた、チウゴク産のヘゴ科のシダのおもちゃ。それに対する反論。アジアの服飾文化。
どれをとっても、geneとここ"pax fantasica"のど真ん中!
というか、まあ、geneの精神世界の形成にこの書物が大きな比重を占めているのですからまあ当然と言えば当然ですか^_^;
いまでも、amazonや楽天、それに古書店で手に入りますので、ぜひ、お楽しみいただけるとgeneもうれしいです。
アルゴナウタイ
そして、第二の題材、アルゴナウタイ。
英語での読みであるアルゴノーツのほうが有名かもしれません。astronautsと同じで、-nautsは乗組員[複数形]という意味で、すなわち、アルゴ号の乗組員。
レイ・ハリーハウゼンの特撮映画『アルゴ探検隊の大冒険』(en/ja)は、geneが幼い頃にTV放送を観て釘付けとなった作品のひとつ。ストップモーションでカクカクと動くドラゴンや竜牙兵。当時の戦隊モノやメタルヒーローモノ、スター・ウォーズ等に比べると、明らかに旧くて古典的なその表現手法の、しかし同時に、ローテクながらに生き生きとした描写に、幼いながらも何か神的なものを感じたのでしょうか…。公開は1963年。プレモとgeneに先立つこと11年。うーん。凄い。
もともとこの国においては、アルゴノーツのエピソードは、オルフェウスの竪琴やヘラクレスの試練、オリオンと牡牛とサソリ、ペルセウスとアンドロメダなどに比べてあまり知られてなかったかと思いますが、この映画の甲斐あってか、知名度はアップ。と同時に、アルゴノーツと言えば特撮、というイメージも残ったようで、最近では2014年にTV放送されていたドラマ『ブラック・プレジデント』にて、主人公の三田村社長が社会人入学する大学の映画サークルの名前がアルゴノーツとされていました。ニヤリ、とするところですね^^ 確か他にもこんなのがあった気がします。
この神話、詳しくはWikipediaなどをご覧いただきたいのですが、正直なところ、話としてめっちゃくちゃになっていますし、特に後半、金羊毛を手に入れてからの帰路は悲惨極まりないストーリーです。ハリーハウゼンの映画では比較的きれいにまとめられていましたがそれもそのはず、原作(?)では、イアソンと恋に落ちるコルキスの王女メデイアという姫がこれまたとんでもない人で、強いのはいいんですが、かなーりザンギャクな手を使って窮地を切り抜けたり、結果的にはそのせいでイアソンもハッピーエンドに終わらなかったり…
演目で取り上げた以外にも、ハーピーの登場とか、アフリカへの漂着とか、おもしろいシーンはたくさんあるのですが、原作通りの筋だとあまりにも正月に不向きだったので、割愛しました。そう、これが、ストーリーが定まらなかった原因です(T_T)
それはさておきこの物語は、巨船アルゴ号、それに搭乗する数々の英雄たち、そして立ちふさがるドラゴン、竜牙兵、そして青銅の巨人タロスなどフォトジェニックかつロマンティックな要素に満ち溢れた、古代世界の一大エンターテインメントだと言えます。
演目で述べたとおり、主人公のイアソンのほか、英雄ヘラクレス、詩王オルフェウス、双子のカストルとポリュデウケスなど、星座の世界でも著名な人物がこれでもか、ASBか、というほどに登場しますし、ドラゴンやタロスなど、当時のギリシア人にとっての世界の不思議がふんだんにちりばめられた、SF的な作品となっています。
ゴールデン・フリース
そして、そのアルゴナウタイが求める金羊毛、つまり、ゴールデン・フリース。
Brooks Brothersのロゴでも知られるこのアイコンは、ギリシア世界を含むヨーロッパから見たアジアの宝、神秘、不思議のひとつの象徴と言っても過言ではないでしょう。
正体については様々な説がありますが、よく知られているのは、演目で触れたような、砂金の採取に使われていた羊毛を木に干していたものだという論。よくあるように話にはいろんな尾鰭が付き、古代、中世、近世を通じてヨーロッパ世界の基層に、静かにしかし力強く横たわっていました。
その証拠に、その名は騎士団の名称に使われたり、近代になってからも、コーカサス山脈に位置するロシア領アブハジア共和国の紛争に際して取り残された自国民を救出するギリシア国の人道派兵の作戦名に使われたりもしました。90年代、つい先日の出来事ですね。
果たして、この黄金の羊毛が、後の時代の"スキタイの子羊"の伝説と関係があったのかどうか、定かではありません。あるいは、博品社の『スキタイの子羊』の中に触れられていたかもしれませんが、geneの記憶にはありません(すみません、2015年、未年記念に再読したいと思いますm(_ _)m)。ゆえにあくまで、崔准教授の新説、珍説という形で紹介させていただきましたが、実際geneは、この二つの話はマツガイなく、関わっていると考えています。
樹に生るヒツジ。方やその正体は綿、方やその正体は砂金採りの道具なわけですが、同じく、アジア方面からギリシアやヨーロッパ世界にもたらされたもの。その二つが混同されなかった理由があるでしょうか?そもそも、古代世界の時代から、アジアには樹に羊毛がかけられているという話があったからこそ、いやいやあれは羊毛ではなくてヒツジそのものだよ、という形で、バロメッツ伝説が容易に形成されていったのではないかと思うのです。
ま、あくまでいつもの珍説ということで。。。
崔准教授とマグヌースソン博士
で、その珍説を繰り広げた崔准教授。
初登場まさかの主役という、「fi?ures series 7 ボーイズ 04 カメラマン」。
geneのよく観るTV番組、BS朝日『BBC地球伝説』にちなんだ『PBC地球伝説』を、ひとり何役も掛け持ちながら制作する、エネルギッシュな青年という役柄です。
韓国籍の設定にしたのはあまり意味があるわけではないのですが、普段からこのブログでは韓国/朝鮮の人の登場が少ないこと、干支だけに中・日・韓・越のいずれかにしたかったけれど昨年も新春はニッポンネタだったこと、本演目中にチウゴクの人は出てくること、ヴェトナムはピッタリなプレモがないこと…、geneがこのブログを書くときによく聴いているラジオ "Aja Aja Friday"のパーソナリティであるWazz UpのJUNEが兵役のために2年間韓国に戻ること、などなどから衝動的に韓国に決定。
セリフ回しなどは、『BBC地球伝説』に登場するUK、US、カナダなどの研究者兼ナレーターの方々-の日本語吹き替え-をチョコっとだけ意識しています^_^;
対してラストシーンで登場するのが、ビョルン・マグヌースソン博士。この方、12月演目の『星霜』でもプロローグに登場しており、本演目でも、アイスランドのヴァイキング研究家で、フィンランドのTV局と関係深いということで、12月のキャラそのままで出ています。ということは実は、ヴァインキングに交って活躍したポーランドないしはバルトの出身の半人半熊ベルセルクの子孫。
最近かなりお気に入りなこと、アルゴ号として適切なギリシア・ローマ時代の船がなかったためにヴァイキングのロングシップで代用したことの注釈(言い訳)をしておきたかったこと、ヒサンな結末で知られるアルゴ号の冒険を喜劇で終わらせたかったこと、などから、急きょ登場いただきました。
なお、"production 75"ではこの方、南極の野生動物を守るオーストラリアの自然保護官ということになっていますが、、、ライフルを持っているか持ってないかで区別することとします^_^;
ストップモーション
アルゴ号の冒険を題材にしたのをきっかけに、このブログでは初の手法を使ってみました。それがストップモーション・アニメーション、別名、コマ撮り。レイ・ハリーハウゼンへのオマージュ?
制作に使ったソフトは、エンドロールに書いたように、定番のフリーソフト「Giam」です。90年代にPaint Shop Proを使ってアニメーションGIFを作ったことはありましたが、ひさびさの挑戦。
プレモアニメ、最初の題材がこのドラゴンかよ!という指摘はさておき、これまで静止画中心で来たこのブログですが、2015年、新たな手法が今後も活用されるかも?うーん、でもかなりめんどくさいのでどうだろう…。
最初の題材、つまり練習としてこのドラゴンを使ったのは、置いた状態で動かしやすい位置にクビとアゴの可動部分があったからです。
二つめのチャレンジとしてドラゴン・トゥース・ウォリアー役のガイコツたちでもやってみましたが、軽くて小さなガイコツでこの作業をやるのはかなり大変でした^_^;
可動部分が多いことでいろんなところに気を向けないといけないのも理由、軽すぎるため関節を曲げようとしたときについつい全身が動いてしまうのも理由。わかったことは、身体の一部分が動いていればアニメっぽく見えますが、全身が動いてしまうと瞬間移動になってしまうので…うーむ^_^;あと、目線があちこち向くのもダメですね。
そう考えるとやっぱり、レリーハウゼンの技術と忍耐力は、すごいのです!
そして、プレモファンの方々の作る動画も。YouTubeでplaymobilを検索するとかなりの優れたコマ撮り動画を観ることができますが、あらためて、作者の皆様に敬意を表する次第ですm(_ _)m
なお、ドラゴンはカメラを棚に置いて撮影。ガイコツはそれだと角度が合わなかったので、三脚に固定して撮りました。しかし結局フレーミングはシッパイしており、両隅に棚の角が映ってしまいました。。。後ろの岩を少し動かしておけば、草に隠れたのに(T_T) 次回に期待…。
終わりに
というわけで!
オルフェウス!
ヘラクレス!
そしてイアソン! |
新年早々、これいったいなんだ!?という演目になってしまったかな…というきらいはありますが、2月もまた、ギリシア神話ネタが続きます。こんどはヒツジは出ませんが、これでもかというほどにギリシア神話をお届けしたいと思いますのでお楽しみに!
HAPPY NEW YEAR 2015!!