Dec 2015 - Legend of B-3 - Organized !? 02
ネーデルラントのシンタクラース、アメリカのサンタクロース。二人のサンタによって語られた、オルガンの起源、そして中世、近世ヨーロッパにおけるパイプオルガンの発展と、かのJ.S.バッハ。しかし、突如登場した賢者によって示唆された新大陸のオルガンとは!?そして、国教会の時代に教会から取り払われたオルガンが再び、ブリテン島に鳴り響く!?
第二楽章 新大陸の猫
ややや?なんだか見慣れない方々があらわれましたね?異教の方ですか?
こここ、これっ。雪だるまや。畏れ多いことをっ。
彼らは、いや確かに異教ゾロアスター教の司祭ではあるのだが、われらにとっても、"東方の三賢者"、すなわちマギとして知られる、偉大なるお方だ。
ジーザスの誕生を予見し、乳香、没薬、そして黄金という三つの宝をもたらした、貴いお方、そのひとりだよ。
でも二人いますよ。
…。
どうも。東方の三賢者とは、いわばイエスの教えよりも以前に中東に存在した教え、そして善悪二元論、光と闇、天国と地獄などの思想の元祖であった、ペルシアのゾロアスター教の司祭を意味しています。つまり、具体的な誰かというよりは、抽象的な概念なんですね。だから何人いてもいいんです。
そして僕らはその中で、若さを象徴するバルタザール。インドから来たとも言われるわれらはプレモではこんなビジュアルで表現されていまして、これがここからの演目にちょっとなじむもんだから。。。
あ、でも、正確には彼らは、東方じゃなくって、エルサレムからみると西方の人たちなんですけどね。
新大陸も、そして、彼らの故郷たるあの大陸も、ね。
おや?彼らは?
さすがガブリエル。察しがいいね。そう、エルサレムから遠く西南に、旧き大陸があり、そこに、彼らはいたのです。
しかし、近代にいたると、いろんな理由、主にフコウな理由で、彼らは新大陸と呼ばれた西の果てに移り住むことになりました。
そしてそこで…
ハレル~ヤ~♪
ハレル~ヤ~♪
ハレル~ヤ~♪
きよしこの夜~♪
もろびとこぞりて~♪
主は来ませり~!!♪♪
Jesus Christ Superstar!!!
彼らはこの楽器、オルガンと出逢います。
と言っても、ここでいうオルガンは、かのバッハさんが好んでいたあのパイプオルガンとはちょっと違いました。
パイプオルガンは教会で教えのためのさまざまな曲を奏でましたが、実際、ちょっとデカすぎました。
権力の集中した中世、近世の教会ならともかく、新大陸、とくに彼らの暮らした貧困地区では、そんな大袈裟な楽器を建造するための資金も場所もありません。
そんな中登場したのが、、、
そう、この、ハモンド・オルガン!!
1934年にイリノイ州の発明家ローレンス・ハモンド氏によって産み出されたこのHammond organは、新大陸、新時代に求められた新たなオルガンだったと言えるでしょう。(実際には、上下鍵盤と足鍵盤、計3つの鍵盤を備えていましたので、この写真とは違いますけどね^_^;)
パイプオルガンにおけるパイプの代わりに、トーンホイールという歯車によって磁界を変化させて波を発生させ音源とするこの電気楽器は、当初はこんなのオルガンじゃない!と言われましたが、やがて、ブラインドテストでもパイプオルガンと区別がつかない、なんて逸話を経て、オルガンの一種として市民権を得ていきます。
そこには、主にアフリカ系アメリカ人の居住する地区のための安価で小規模なオルガンとして、
あるいは、軍を世界に派遣したアメリカにあって、、、
軍隊と共に各地に移動させる必要のあるモバイルオルガンとして、、、
のさまざまな役割がありました。
まあ、いろいろありますが。
ゴスペルミュージックをはじめとした、アフリカ系アメリカ人の宗教音楽は、この楽器抜きには語れないでしょう。
ハモンド・オルガンの音色は、ドローバーと言われるバーを引き出して、幾つかの音源を加算的に混ぜ合わせることで創りだされますが、このバーは、パイプオルガンのパイプの長さになぞらえてそれぞれ、16'、5 1/3'、8'(基音)、4'(第一倍音)、2 2/3'、2'(第二倍音)、1 3/5'、1'(第三倍音)と名前が付けられています。
そして!
この楽器と共に育った、あるアフリカ系アメリカ人の少年たちが、成長して、オルガンの歴史を変えることになるのです!
中でも、忘れることのできない彼の名は…
ジミー・スミス/Jimmy Smith!
ソウル・ジャズの創始者にして、ジャズ・オルガニストの代名詞!
1925年、ペンシルベニアの出身にして、6歳から父のステージに立っていた彼は、ピアニストとしての教育を受けた後、ハモンドオルガンの奏者として、ジャズの歴史に不朽の名を刻むことになります。
左三本のドローバー、すなわち基音の1オクターヴ下の16'、5-1/3'、そして基音8'のバーを全開にして3rdパーカッションを加えた彼の音色は、ジャズオルガンの基本として長らく親しまれることとなります。
あ、これ?
これ何かですって?
これは…
Leslie Speaker!
レスリー・スピーカー、すなわちDonald Leslie氏によって発明されたロータリースピーカーは、もはやスピーカーというよりはハモンドと共に演奏される楽器の一部。
ドップラー効果を利用してビブラートやトレモロなどの効果を産み出すように設計されたこの"楽器"は、ハモンドオルガンと併用され、この時代の音となりました。
さて。
そんな、ハモンドオルガンを活かしたソウル・ジャズ、Jimmy Smithの代表的なアルバムといえば、"The Sermon!"、"Root Down"、そして…
そう!
"The Cat" !!!
1964年。
Hammond B-3とビッグバンド。
ピチカート5によってサンプリングされたタイトル曲"The Cat"をはじめとする、計8曲。いずれも、ハモンド好きにはたまらない~!
Jimmy Smithの波紋度、
もとい、
ハモンドは、
世界一ィィィ!
…と、Jazzの喧騒も冷めやらぬ60年代。
そこには…
かのJimmyの伝説をさらに塗り替えるある青年が、すぐそこまでやってきていました。
彼の名は…