2015年12月6日日曜日

Dec 2015 - Legend of B-3 - Organized!? 01 


にわかに寒さも厳しさを増し、街にも12月の灯りが灯りはじめましたね。そう、クリスマス!というわけで当劇団でもクリスマスにふさわしき演目を上映しまーす\(^o^)/

昨年は北欧の教化の時代をテーマにアドベントカレンダー形式で綴ったこの"pax fantasica"、2015年は…その誕生、そして発展の歴史においてキリスト教徒が大きな役割を果たした、とある楽器をフィーチャー。それは、オルガン!

…といっても、みなさん、オルガンというとどんな楽器を思い出しますか?え?小学校の音楽室にあった?木製の筐体に鍵盤が2つ?ここではまず、そんなオルガンの起源から、そして、オルガンをもちいて世界に影響を与えた3人のアーティストたちをフィーチャーします。

題して、『Legend of B-3 - Organized!?』

出演は、、、これはご覧になってのお楽しみ、です\(^o^)/


第一楽章 オルガン - その起源 


やあ、みなさん、クリスマスカウントダウン、楽しくお過ごしですか?僕たち、ワシたちは、

チーム・ニコラスと仲間たち!

きょうは僕たち、ワシたちが、オルガンという楽器をテーマにありがたーいお話(?)を語ります。




あれ?ナレーターは僕じゃないの?若くたくましいこの、現代の僕、新大陸産のサンタクロースじゃないの?おじいさん、誰?



まあまあ、慌てるでない、若いの。オルガンの歴史は古い。そなたには旧い旧い時代のことはわかるまい。

まずはこのワシ、聖ニコラオス

…ではなく、シンタクラースに任せなさいっ!



え?誰?聖ニコラオスさまじゃないの?シンタクラースって、あなた、誰? や、そんなことより、長ーい歴史の話はいいからさ、そんなことやってるとまた演目が長くなりすぎるから^_^; 僕に任せてよー。

なにー!ワカゾウよ、ワシを、先輩であるワシを知らんのかー?うう、これだから最近のサンタは(T_T)



やれやれ、サンタ君もめだちたがりやだねえ。先輩に、まずは任せておけばいいものを。でもあれ、誰だっけ?

あらあら。この国ではあまり知られていないのですね、シンタクラース殿は。きょうは彼の記念日だというのに。

あなたは?

わたしはガブリエル。四大天使のひとり、ガブリエルよ。そういうあなたは?

ボクは雪だるまの…

あー!いいわ!聞かないでおくわ!

???


さて、では、ワカゾウはほおっておいて、はじめようかいな。このワシ、ネーデルラントにその人ありと知られた、シンタクラースが解説して進ぜよう。


…むかーしむかし、あるところに、キリスト教、すなわちイエス・キリストの教えを奉じるありがたーい団体がおりました。

その名を、ローマ・カトリック教会





あ、あれ?そのへんからはじめるの??

もしかしておじいさんも、最初は知らないんじゃないの??

最初は確か、キリスト教よりももっともっと旧い…


これこれ、シンタクラース殿、気持ちはわかりますがズルはいけませんね。フェアにいきましょう。教えとオルガン、どちらが旧いものなのか。あなたはご存じでしょう?

…う、ガブリエルどの、やはり、そこからですかな?


それは当然です。正しい知識は正しい信仰の第一歩。見栄を張ってはいけません。フェアに。フェアに。(だってあなたはご存じなはず。気付いていないでしょうが、その身体は、かつて小アジアのミラにあった聖ニコラオスの身体が、アラゴン王家の領した時代のナポリ王国を経て、ネーデルラントにやってきたものなのですからね。その身のうちに、地中海の記憶があるはずです。こどもと、商人と、船乗りの守り神たるそなたには…。)

…むむう。

では仕方ない、あの話から、はじめるとするか。(ほー。教化以前の話とは。。一瞬、ワシの正体がバレとるのかと思って焦ったわい。何せワシ、こんな格好しとるけど元はといえば、あの大神オーディ… いやいやいや、それはまだナイショにしておこうかのう。)



えー、コホン。

オルガンの起源ともいうべき、複数の管、つまりいくつもの笛を束ねて音をだす楽器は、イエスさまよりもずっと以前から、世界に存在した。

例えば遠く東の果ての異教の世界では、「笙」という楽器がある。チウゴクやニッポンで、「雅楽」という旧い旧いオーケストラ音楽を演奏するのに使われていた楽器じゃ。

同じようなものが、西の世界にもあった。有名なモノが、「パンの笛」あるいは「Pan Flute」呼ばれるものだ。

パンと言っても、パンと葡萄酒のあのパンではないぞ。


異郷時代のギリシア。

つまり、かの大大大先輩 聖ニコラオス殿が活躍されたギリシアの地にわれらの教えが広まる以前の、牧神パンのことじゃ。

そう、ワシらには、あのヒワイなナイトパーリィの主催者として、アクマ扱いされた、あやつ。半分ヤギで、半分サカナ!なんじゃそりゃ!

なんでもテュポーンなる怪物から逃げるときにこの姿になったらしいな。本来は、ツノと蹄のあるニンゲン型のやつじゃ。

たとえばそう、正教の国のストラヴィンスキーの「春の祭典/Le Sacre du Primtemps」をニジンスキーが演じたときの姿がよく知られておるな。おやあれはサテュロスじゃったかな?

ちょ、ちょっとおじいさん!近現代のことをおじいさんが話すなんて、ズルいよー。

おう、ワカゾウ、すまんすまん、ついな。ヒドい不協和音にヒワいな踊りじゃったが、何、結構おもしろかったわい。正教の世界の芸術も捨てたもんじゃないな。

それにしても、オルガンのことを酷評してオルガンのための音楽を一切つくらなかったというストラヴィンスキーと「パンの笛」か。何やらヒニクな話じゃな。

さて、それより話を戻して、じゃ。

「パンの笛」のような原始的な楽器の次に現れたのは、一応は文明時代となった頃。

かのアレキサンドリアにおった発明家が、「水オルガン」あるいは「Hydraulis」なるものを造ったと言われておる。

(やや、これがかの有名な、アレクサンドロス大王の馬、ブケファロスか。なるほど、この兜のツノのせいで、こやつツノのある馬だとマツガわれたということか…。ワシの白馬スレイプニー…じゃなくってアメリゴにも負けぬ、よい馬じゃのお。)

さて、この、当時の学識の都で造られた楽器は地中海地方に拡がり、ギリシアのデルフォイの街などで演奏されたという。

なつかしのデルフォイの巫女!Haoma Powered Version!?

詳しくはこちら『サカの神酒』をご覧ください。

以上、番宣でした。



この頃、オルガンの奏者は女性が多かったそうだが、剣闘士の試合などでは、男性も演奏したらしい。何やら勇ましい曲、いや、ヤバンな曲じゃったのかな?

ヤバンといえば、あの評判のよろしくないネロ帝、ワシらにとっては思い出すのもいまいましいあの暴君も、水オルガンを好んで演奏したそうじゃ。ちょっとフクザツな心境じゃな。

やがて、かのローマ帝国はその不徳の報いか、滅亡の憂きめにあうことは皆もご存じであろう。なに?知らん?ならばこちらをご覧なるとよい。ローマの最期を紹介した演目、『落日』をな。ちょっと脚色があるのはご容赦を。

ともあれ、ローマは滅びた。そして地中海世界に新たな覇権を打ち立てたのは、かの、わしらと同じ神を、少し違った形で信じたものたち、イスラームの人々と、、、



それから、東にあったもうひとつの教会。すなわち、ギリシアの教会。

聖ニコラオス殿が所属した、Orthodoxの世界もまた、ローマ亡き後の地中海に覇を唱えた文化、文明であったな。

『落日』より、いわゆる東ローマ皇帝ユスティニアヌス君の友情出演です。)






アラブの勢力がアレキサンドリアを奪い、かのウマルの時代に街と蔵書を焼き払った後も、彼ら -アラブ、ペルシア、そしてコンスタンティノープルの彼ら- はギリシアやローマの智慧を熱心に研究し続けた。このあたり、ローマを継いだフランクやゲルマンたちがその智慧をしばし喪ってしまったこととは対照的じゃな。

こうして、水オルガンも、アラブ世界や新ギリシア世界で改良が続けられたらしい。

アラブ、そしてギリシア。東方の三賢者たちの末裔をも取り込んだ彼らの世界は、この時期、世界の叡智の最先端にあった。これは確かじゃな。

(どうじゃ、ワシ、フェアじゃろ?)


しかしやがて、西の世界、いわゆるヨーロッパにもふたたび、オルガンがやってくる。

それは中世。8世紀から9世紀ごろのことだったらしい。

かの三賢者がお生まれになったペルシアの学者の記録によれば、ビザンツ、つまり東地中海のギリシア人の帝国で、urghunという楽器が使われていたそうじゃが、これが、オルガンの直接の起源と言えるじゃろう。

もしかすると、聖ニコラオス殿も、ミラの地でオルガンをお聴きになったかもしれんな。



さて。その記録の少し前、8世紀のこと、ビザンツのコンスタンティヌス5世から、フランクの -かのシャルル・マーニュの父- ピピンに贈り物としてオルガンが届けられた。これが、中世ヨーロッパ、あるいは西ヨーロッパにおける最初のオルガンじゃ。

(写真:昨年のクリスマス演目『星霜』に回想シーンで登場したシャルルマーニュ a.k.a. カール大帝です。)

シャルルマーニュはアーヘンに設けた教会に、同じようなオルガンを造ることを命じたそうじゃ。これが、教会の楽器としてのオルガンのはじまり。やがて13世紀ごろまでには、オルガンといえば教会、というくらいに密接な関係になっていく。

そう、いわゆる、パイプオルガン/Pipe Organというやつじゃな。

なにやら東の国ニッポンでは、オルガンといえばガッコウにある小さな楽器で、パイプオルガンのことはわざわざ"パイプ"と断って呼ぶそうじゃが、ワシらヨーロッパのニンゲンにとっては、オルガンといえばこれ、パイプオルガンじゃ。

うーん、荘厳じゃの~\(^o^)/




そして、時代は14世紀、15世紀、16世紀と続き…いわゆるルネサンスの時代。ここでも新たなオルガンの発展があった。

ちなみにワシら的に言えば、かのマルティン・ルターやらカルヴァンやらが教会の堕落を批判して、新しい考え方を示し始めた時代じゃな。


(ワシは『星霜』では大司教役も演じたわけだし、ネーデルラントでワシを祝ってくれるのはカトリックの信者たちだから、キホン、カトリックびいきなんじゃが…

まあ、ルターの弟子たちは、カルヴァン派の信者たちと違ってワシら"聖人"を否定はしなかったんだったかな…)


(ただ、あやつ、あのアルブレヒト・フォン・ブランデンブルク=アンスバッハ。教会の庇護を受けたテュートン騎士団の総長でありながら、ルターとの会談を経て、あっさりと騎士団ごと新教に改宗、教会を捨てたあやつ。


あれは結局おのれの世俗の領土を手に入れたかっただけじゃあないのか、…ブツブツ…)

(えー、またまた話題がそれていますが、このあたりに関心のある方は、10月演目、ドイツ騎士団の東方植民時代を描いた『獣の時代』をご覧ください。こちらもキリスト教史ネタになっています。もちろん脚色御免!)

おーい!おじいさんおじいさん!話が逸れてるぞ!きょうは、オ・ル・ガ・ンの話だろ!?


で、宗教改革も行われたわけだしここらでそろそろ、近現代担当の僕、サンタクロースに代わってくれないかな?シンタクラースのおじいさん。

な、な、なに?いやいや、宗教改革がなされたとは言ってもじゃな、なにもカトリックがなくなったわけでも衰えたわけでもないゾ!ネーデルラント南部でも、ベルギーでも、このワシ、シンタクラースのお祭りは続けられたし、それにそもそもオルガンは教会のじゃな…

だけど、当時最高峰のオルガンが建造されたネーデルラントやデンマーク、北ドイツなどは、わりと新教の勢力が強かった地域だよ?パイプオルガンの最盛期は、新しい宗派とともにあったんじゃないの?

なにー!? お、お主が新大陸で大事にされてるのも、このワシの伝説が、ニューアムステルダムにまで伝わったからだというのに、まったくこのコゾウは…

まあまあ、よいではありませんか。それより話を進めましょう。

シンタクラース殿、それにサンタクロースとやら、オルガンとはそもそもどのような楽器なのか、少し話してみてはくださいませんか?

…う…

…えと、それは…


説明しよう!

オルガンとは、鍵盤楽器にして管楽器!

圧縮空気の力で複数の管を鳴らすという意味では管楽器。そしてどの音を鳴らすかを選択するのに鍵盤を使うという意味では、おいらの鉄琴と同じ、鍵盤楽器!

ちなみにおいらの国では「管風琴」と呼ぶよ。わかりやすい名前だね。

お、おぬしは誰じゃ?みなれぬやつ。さてはアクマか?オニか?

おいらは雷の神、レイシェンだい!打楽器が得意なんだけど、メロディも演奏したいから太鼓を鉄琴に換えたのさ。鉄琴はいわば、鍵盤楽器と打楽器の合わせ技だからね。

オルガンの管は、一本につき一つの音高。だから、音域のために多数の管が必要になる。しかも、音色の違うパイプを備えたりもしたもんだから、とにかく巨大になったわけだ。これが、オルガンを"建造"なんていう理由のひとつだね。

巨大な権力と財力と建築物を誇った教会だからこそ、こんな楽器を持つことができたとも言える。ただそれがどんな教会だったかって言うと…。

ま、この時期のオルガン建造家としては、アルプ・シュニットガーさんを、同じく演奏家としては彼の友人のヴィンツェント・リューベックさんを調べてみてね。リューベックさんはハンブルクにあった聖ニコライ教会(これ、聖ニコラオスさんの名前だね!!)のオルガン奏者を務めてた。ちなみにこの教会はルター派の教会。

あ、あとちなみにシュニットガーさんは、豊かでない教会にはオルガンの寄付や割賦販売も行ったとか。彼にオルガンを寄贈された教会としては、フローニンゲンにあったルター派の教会があげられるそうだから、、

もう言わなくてもわかるかな?もちろん、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガルをはじめカトリックの盛んな地域でもパイプオルガンは建造されているけどね。演奏される音楽やオルガンそのものの構造も北ヨーロッパとは少し違ったらしい。以上、ボクが空から観察した情報だよ。

よーし!雪だるま君!同じ雨冠なかまの雷の子を呼んでくるなんて、でかした!空はウソをつかないな。

というわけでここからはホントに僕、新大陸バージョンのサンタ・クロースの登場だ!



えー、カトリックとカルヴァン派のあいだでフクザツな立場となったシンタクラースおじいさんはさておき。

オルガンがルター派にとっていかに重要だったか、いや、オルガンの歴史にとってルター派がいかに重要な役割を果たしたかは、この人物を知れば誰しもが納得するはずです。



オルガン奏者としてもオルガン曲の作曲でも知られるJ.S.バッハは、チューリンゲンのルター派音楽家一族だったバッハ家の出身です。

オルガンの黄金時代はプロテスタント運動とは切っても切り離せないのさ!



(な、なんだか豪勢なバッハですね…

この方、以前はたしか、

ハプスブルク家の婿を演じたんじゃ…


それだとぜんぜん敵方じゃん^_^;)

(ま、まあ、バロックの時代の雰囲気を出せるプレモということで、おおらかにおおらかに^_^;)





…ともあれ、

J.S.バッハさんは、オルガニストとしてその音楽人生を歩み始め、後に世界に知らぬ人のいない大音楽家となったのでした。



(え?サンタクロースさん、それだけ?もしかしてホントは僕のことはあまり詳しくない??やっぱり、この時代をじかにみているシンタクラースさんに解説任せたほうがよくなかった??

ま、まあ、いいけど。

とのかく僕よりもオルガンを、よろしくね…

これ、僕の知ってるオルガンとは少し違うけど、結構いい音するじゃない。なんていう楽器かな?)



ハイ、このあたりからは、現代編。

わたしたち二人がお届けする、もうひとつのオルガンの物語。

ドイツ、ライン河畔、ケルン大聖堂から復活してきました、

わたし、バルタザール一世と、

わたくし、バルタザール二世が、お届けします、新大陸のオルガン物語です!


はっ!

あ、あれは…スレシュ!?

…なわけないが…

彼らは確か、東方の三賢者のひとり。なぜ二人いるのかはさておき、僕の出番はもう終わり!?

イヤーだーーー(>_<)