Apr 2016 Reinheitsgebot 01
2016年4月23日土曜日。ビール好きの方の中にはこの日を心待ちにしていた人も多いでしょう。かく言うgeneもそのひとり。近所の酒屋さんも職場のそばのドイツビール店も、どこもこの日を楽しみにしていました。そう、きょうは、ドイツビールフェア!え?Yet Another Oktoberfestかって?確かに、最近はいつの時期でもOktoberfestを名乗る商売もといお祭りが行われていますが、きょうは違います。きょうは、''ビール純粋令"制定500年記念!さて、ビール純粋令とはいったいいかに?『もやしもん』未読という方も、よく知ってるよ!という方も、pax fantasica版のご紹介を、ご覧くださーい\(^o^)/
さあさあ、お祭りですよ。ソーセージもたくさん用意したわよー。
ワーイ!
おい、おかわりしていいかー。
はいはい。でももうすぐお客さまがみえますから、あまり飲み過ぎないでくださいね。
ん?客?
あら、言ったじゃあないですか。きょうは、取材の方が来るんです。だからほら、こうしてみんなで伝統的な衣装を着て、こうして盛り上げているんです。わたしたちの…バイエルンを!
ばいえるーん!
ばいえる~ん!!
プレモの故郷、バイエルーン!
ふーん、客か。まあいい、おれはとりあえずもう一杯飲むからな。あー、ビールはうまい。ドイツビールはうまい。バイエルンのビールは世界で一番うまい。言うなれば…
我がドイツのォォォ!
ビール醸造力はァァァ!
世界イチィィィィィィィ!!!
…あなた、そのセリフは、元ネタがドイツ的、バイエルン的にビミョウですからやめてくださいな…
お、おう、そうか?
あら!お客さまがいらしたみたいよ!
みなさん、コンニチハ!
『PBC 地球伝説』、ついに専属ナレーター兼カメラマンとなった、韓国出身の崔観宇です!
えー、きょうは、"ビール純粋令"発布500年で盛り上がる、ここ本場バイエルンのとある家庭におじゃましています。そう、きょうは…
『PBC 地球伝説 LIVE』!!
東方重工とスピードワンコ財団の協力の元、衛星中継を駆使して生放送でお送りしています~
グーテンモルゲーン~
グーテン!
はじめまして。
こちらはバイエルンの、ヨハンさんとハンナさん。そしてそのお子さんのペーター君とクララちゃんです。歓迎、ありがとうございます!あー、お父さん、さっそく飲んでますね~。
そして、もうひとり。スペシャルゲストをお招きしています。お忙しい中を縫って参加くださったのは…
そう、もうおなじみですね。ウォルフェン・ホールディングスの幹部…
最近、ウォルフェン・ラクティック・プロダクツ社に続いて新規事業ウォルフェン・ブルーイングを軌道に乗せたばかりの…
両社COO兼VP, Research & Development…
マルヴァ・カニンガム=ウォルフさんです!
みなさん、こんにちはっ!いえ、きょうは、グーテン・ターク!
さっそくですがマルヴァさん、あまり尺も取れないのでうかがいます。"ビール純粋令"とはいったい?
…え、、、い、いきなり…?…
ま、まあいいわ。では、解説しましょう。
"ビール純粋令"とは、いまからちょうど500年前の1516年4月23日、バイエルン公であったヴィルヘルム4世によって発布されたとされる法律です。
その内容は、「ビールは、水、大麦、ホップのみを使って造るべし!」というもの。後に酵母の存在が知られるようになって条文に酵母が追加されたようですが、とにかく、マゼモノ禁止!という趣旨の法令なんですね。
現在でも有効な食品に関する法令としては世界最古とも言われるこの法令は、当初はバイエルン公国領域内における法令だったわけですが、その後、1871年、プロイセン王だったホーエンツォレルン家のヴィルヘルム1世がドイツを統一した際、バイエルン側が統一の条件としてこの法令の適用範囲を全ドイツとすることを求めたため、その影響はますます大きくなりました。
その後、法令は、ワイマール共和国、かの悪名高き第三帝国、そしてドイツ連邦共和国へと受け継がれていき、冷戦中のドイツ民主共和国を例外としながらも、脈々とドイツに影響を与え続けています。そう、ドイツ人はいまもこの法令を守って、ビールを"純粋"に醸造し続けているわけです!!
な~る~ほ~ど~
いつもながら、Wikipediaどおりの素晴らしい解説ですねっ!さすがマルヴァさん!
…。
で、このヴィルヘルム4世、ですか?いったいなぜそんな法令を出したのですか?それにこの人物はいったいどんな方なのでしょう?
え?えっと、、それは、、、
え?あれ?ご存じない?(マズい、困ったな…これ生放送だからなあ。いったんCM行くか?いやいや、PBCにはCMはなかったか…)
フフフ。マルヴァ、あなたはいつもベンキョウが足りないわネ。
ハッ!そ、その声はもしかしてっ?
マルヴァさんのお姉さま、ファラウェイさん!ウォルフェンのCEOにして経営の天才、ファラウェイ・カニンガム=ウォルフさん!
ええ、崔准教授、おひさしぶり。
そうか、ファラウェイさんは確か大学の副専攻として、近世ドイツ史をベンキョウなさっていましたよね?
ええ、父がドイツ人なものですから。
で、もしかして、ヴィルヘルム4世にもお詳しい?
もちろんです。
(た、助かった~(>_<))
ヴィルヘルム4世は、12世紀末以降にバイエルン公を世襲するようになった名家ヴィッテルスバッハ家の御曹司。
かのコロンブスの新大陸発見の翌年、1493年に生まれた彼は、1508年、父アルブレヒト4世の後を継いで、公国の領主となりました。
アルブレヒトは生前に長子単独相続を定めていたため、嫡男であったヴィルヘルムにすべての相続権があったというわけですね。
しかし、納得いかないのは弟のルートヴィヒです。
父ちゃんがあれを言いだしたときにはおれはもう産まれてたんだ!遡及効はダメだぞ!なんて主張して、公国の共同統治を希望します。ヴィルヘルムは嫌がりましたが結局なんやかんやで二人は公国の一部を共同統治することになりました。
その後ヴィルヘルムとルートヴィヒは、ルートヴィヒのボヘミア王位相続を主張して神聖ローマ皇帝位であったハプスブルク家のフェルディナント1世と対立。
ちなみにこのフェルディナント1世は、スペイン(カスティーリャ)で生まれ、スペインで育ち、スペイン語が堪能であったのに、なんやかんやでオーストリアを担当することとなり、いわゆるオーストリア系ハプスブルク家の祖となった人物です。
彼が生涯に渡って担当したのは、オーストリア大公、ドイツ王すなわちローマ王、イタリア王、ボヘミア王、ハンガリー王、そして神聖ローマ皇帝。
なお、彼の兄のカルロス5世は、スペイン系のハプスブルク家の祖となっています。まさに、スペイン=オーストリアのハプスブルク帝国が太陽の沈まぬ国として隆盛を極めるその時代。
なんとなく、コロンブスだの大航海時代だのという新時代の風薫る世界観と、ハプスブルク家だの神聖ローマ帝国だのという大時代な世界観が同じ時代だとは思いにくいのですが、とにかくまあそんな時代だったのですね。
…えっと、結構、なんだその、"なんやかんや"とか"とにかくまあ"とか、テキトーなんですね、ファラウェイさんも…
あら?もっともっと詳しく聞きたい?いいけど、生放送なんでしょ?
あああ!そうだった!ハ、ハイ、その辺でOKです!
まあ、せっかくだからもう少し。
え…。
いえいえ、冗談です。ヴィルヘルム4世に戻りましょう。このほか彼は、ドイツのReformation、すなわち宗教改革とのかかわりでも語られますね。
当初、プロテスタント側に同情的だったとされる彼ですが、その後、改革運動が活発化するに伴いカトリック支持に転向。ザルツブルク大司教と結んでドイツ農民戦争(German Peasants' War)の鎮圧側に回ります。
なるほど!そういえば昨年、マルティン・ルター500年が記念されていましたが、ちょうどその時代なんですね。同じ500年ですが、ルターとビール純粋令は当時は敵同士だったと、こういうわけですか。
いえ、まあ、ルターは実はこの農民戦争には激しく反対、厳しく批判した上で、なんとカトリック諸侯側について鎮圧を支持したというわけですので…
え、、、そうなんですか?知らなかった。
はい、それでしばし南ドイツではルターは評判を落とすのですよ。
なるほど、北ドイツと南ドイツの違いにはそんな歴史もあったのですね。
(おねえちゃん!それより、"ビール純粋令"の話は!?)
(え?あ、ああ、そうね)
あんた、話が長いなあ。ヒック!ヒック!ビールの話をしないか~。ヒック。。。
ちょっとヨハン!生放送世界同時中継なのに、そんな酔っぱらってちょっと!
あ、いえ、奥さま、ヨハンさんのおっしゃるとおりですわね。わたくしつい。
ヴィルヘルム4世、いいぞ!ビールはやっぱり、水!大麦!ホップ!それに酵母!そうと決まってるんだよなあ、昔っから。ドイツのビールは純粋だ!ヒック…
オトコはだまって、ドイツビール!!バイエルンビール!ヴァイツェン!!むかしっからそうと決まってんだぁ~、なあ、大公殿下!ヒック…
あ、ヨハンさん、ちょっと待って。それ、ジツはビミョーなんですよ。
ん?
ビール純粋令が出された理由ですが、まずひとつには当時北ドイツのビールが品質が良くて、南のバイエルンではその輸入が経済的な負担になっていたということがあげられます。つまり、まぜものだらけでイケてなかったバイエルンのビールをマトモにするために出されたわけですね。
…。
そして、第二の理由はパンの主原料であった小麦やライ麦をビール醸造に使わせないため。ビールじたいも栄養源ではありますが、やっぱり主食は大事ってことですね。
…。ビ、ビールよりパンが大事ってことか…。
ホラ、ヨハン、パンではありませんがちゃんと食事も食べましょう。飲んでばかりではダメよ。
それからね、その小麦、なんだけど、実はその後もビール醸造に使われていたらしいわ。
何?ってことは法令違反じゃないか?
ええ、そう。いつの時代も何事にも例外はあるのね。この時は、小麦を使ったビールの醸造が貴族や修道院の特権として許された。人気のあった小麦ビールは支配者層に独占され、彼らの富の源泉のひとつになったってわけ。
…大麦ビールは、、、粗悪品なのか???
あら?でもその小麦ビールが、わたしたちバイエルンが誇るヴァイツェンよ。英語ではWheat beer、つまり小麦のビールって呼ばれるくらい。あなたがいま飲んでるそれも、ね。先に開けたほうの樽はヴァイツェンなのよ(笑)
な、なに~?ホントか~?じゃ、じゃあこれ、純粋じゃないじゃないか!
いいえ、いまはいいの。なぜなら、ビール純粋令はその後、形を変えていき、下面発酵ビールの場合には大麦麦芽でなければいけないけれど、上面発酵なら小麦麦芽やライ麦を加えてもいい、ってことになったわ。
もっとも、いまでもガンコに、大麦麦芽しか使わん!なんて言ってる醸造所もたくさんあるし、それがこのドイツのビールの価値につながってもいるけれどね。
ムッター、すごーい!
すごーい!
ハンナさん、さすが地元の女は詳しいのね。わたしなんて来る必要なかったかな。
いえいえ。ではファラウェイさん、あのビールを紹介してくださる?このバイエルンの、あのビールを。
あ!あれは?(な、なんて巨大なビールなんだ…中、入ってるのか?結露の様子から入ってるっぽいけど…)
ええ、そうね。あれはKÖNIG LUDWIG WEISSBIER HELL。
その名のとおり、ヴァイスビアすなわちヴァイツェンで、ここバイエルンのもうひとつの伝統、Oktoberfestとも関係の深いビールね。
このビールを創っているケーニッヒ・ルートヴィッヒ醸造所は、ヴィルヘルム4世の時代から300年ほど前、1260年、ヴィッテルスバッハ家のルートヴィヒ2世が設立した醸造所がその起源といわれています。ゆえにその名を"ルートヴィヒ王のヴァイツェン"というわけです。
[醸造所はこちら]
そして、こんどは逆にヴィルヘルム4世の時代から300年ほど後の1810年。バイエルン王ルートヴィヒ1世が10月に結婚。それを祝うお祭りが好評を博し例年の恒例行事に。後のOktoberfestのはじまりです。
ちなみになんでここでまた1世に戻るのかというと、2世は"公"としての2世で、この1世はバイエルン"王"としての1世だからです。あ、てことは、ケーニッヒ・ルートヴィヒってのはこっちのルートヴィヒのことかな?
バイエルン!バイエルン!
ヴィルヘルム!
ルートヴィヒ!
ヴァイツェン!
ヴァイツェン!
ドイツビール、最高!
純粋ビール、最高!
フフフ。そうね、わたしもドイツビール大好き。あの香りの高さや甘み、コク、それにさまざまな色や味わいを決められた原料だけで作り分ける。発酵の仕方や麦芽のローストの仕方で、白いビールから黒いビールまでも作り分ける。ビールと言えばドイツ、ドイツといえばビール、とまで云われるほどのブランド力は、経営者としても尊敬するわ。
ま、まあな(照)
でもね、いろいろ、苦労もあるのよね、ドイツビールも。純粋令のおかげで。
そ、そうなのか?
フフフ…。ええ、でもこの生放送の時間はそろそろ終わりみたいだから、この続きは、夜に放送予定の『PBC 地球伝説』の本枠でお話しするわね。
よーし、姉ちゃん、じゃあそれまで一緒に飲もうぜ!
いいわね!
えー、と、と、いう訳で、生放送は以上、でした!え?これ番宣じゃないかって?いえいえ、こっちがメインですよ!え?じゃあなぜここでいったん切るのかって?そ、それは、プロデューサーのgeneさんが、そろそろビールを飲むんだと、ソーセージを食べるんだというので…
とにかく、また後ほどっ!