2016年4月23日土曜日

Apr 2016 Reinheitsgebot 03 

というわけで、崔准教授とカニンガム=ウォルフの双子の案内の元、"ビール純粋令"に絡めてドイツの近世史、ヨーロッパの現代史、そしてビールの歴史と多様性をたどってみました『PBC 地球伝説』第三作め。ヒツジヨーグルトと来てのビール!

しかしそこはそれ、せっかくの純粋令500年祭。もう少しだけドイツビールをフィーチャーしてお楽しみください。その後は恒例の、あとがきです。


よーし、それじゃここらでひとつ、ドイツビールの紹介、行ってみよ~

おー!

わーい!

ちょっとヨハン、あなたまだ飲んでるのっ!?


まあまあいいじゃないか、ハンナ。

ファーター、飲んだくれ~



(おいら、大きくなったらファーターみたいなリッパなノンダクレになるぞー)

飲んだくれ、キラーイ!

う、クララ、キビシイね(>_<)

わたしの教育のたまものです。

う、、、ジョシはキビシイね…

でもそこはそれ、気を取り直して、ビール紹介、はじめるゾっ!

こらっ!


いいか、ペーター、おまえはまだまだ飲めるのは先の話だが、わがドイツの伝統ビールにもいろいろあってな。

うんうん。

この真ん中のでっかいのは、さっきあのカネモチの姉さんが言ってたように、ここバイエルンで造られているビールだ。いわゆるヴァイツェン、つまり白ビールってことだな。


ちなみにこの醸造所では白ビール以外にもたとえばデュンケルなんかも造ってるぞ。

でゅんける?

そう、ダークビール。つまり、色の濃いやつだな。ただし、黒ではない。あくまで濃い褐色だな。

例えばこれね。

そう、そいつはWARSTEINER DUNKEL

ネーデルラントやベルギーと接するノルトライン=ヴェストファーレン州の醸造所で、モータースポーツのスポンサーもやってるな。なにせ大都市デュッセルドルフ、ケルン、エッセン、ドルトムントを抱える州だけあって生産量も多いな。

※ちなみにドイツは領邦国家の歴史ゆえ、小規模な都市が多く、これらの都市をはじめとする「人口50万人以上の都市」はぜんぶで12しかありません。驚き!

ここの醸造所はピルスナーで有名だけれど、このデュンケルはコクが際立つうえにほのかな甘みがあっていいわね。

そうだな。前にケルンに行った時にビールが薄くて閉口したんだが、こいつはうまかった。下面発酵ラガーの純粋ビール、伝統的なミュンヘンビール、その典型だな、バイエルンじゃないけど。。。

ローストされた大麦麦芽の香りと芳醇さが力強いわよね。ちなみに本国のサイトには載ってなくてUSサイトにだけあるから、もしかしてドイツ製じゃないのかしら…

え・・・もしかして純粋じゃないとか・・・いやいや・・・

※いえいえ、ちゃんと二条大麦麦芽で造ってますしドイツ製だそうです!

gene的にはUKのNewcastleに似た味だなあと感じました。種類はぜんぜん違うはずなのに。

だが我がドイツにはこんなビールもあるぞ!

これは


ここバイエルンの真北にあたるテューリンゲン州の一部だったライプツィヒ近郊のとある村で16世紀から造られてたシュヴァルツビア、つまり黒ビールで、いまはあの巨大なビットブルガーグループの一員だが、これもまた、下面発酵の純粋ビールだ。

詩人ゲーテが好んだってよく言われるが、この豊かなアロマ、まさに天啓が得られそうな味わいだな。そうそう、シュヴァルツもここバイエルンが発祥だ。バイエルン、えらいぞ~\(^o^)/

※geneも同じ黒でもギネスよりこっちですね!ちなみにギネスはスタウトと呼ばれる上面発酵タイプの黒。黒にもいくつもあるんですね~

そういやややこしいけど、ケストリッツァー村は、当初はテューリンゲンの一部、その後にライプツィヒ分割を経てザクセン州の一部となって、ちょっと前まではいわゆる東側だったんだよなあ。

ねえねえファーター、"ひがしがわ"ってなあに?どなうがわよりおっきいの??

…そうか、おまえたちの世代は東側を知らんのだよな。ま、平和が一番だな。

???


なーに。

いろいろあったってことさ、ここドイツも。


そんなドイツのいまに、、、


プロージット!(T_T)

くー、感無量だな、おい


さあさあ、昔話はさておき、食べましょうね!(って、ヨハン、あなたも80年代生まれ、まだ30そこそこなんだから、当時のことなんてたいして覚えてないでしょうに、おおげさね~(笑))フフフ


ムッター、どうしたの?なにがおかしいのー?

なんでもなーい。さあ、ソーセージよっ!

ワーイ!わーい!



-ホントにオシマイ-

あとがき


ドイツビア


さて、いかがだったでしょうか。えー、いかにも知ったらしく書いているgeneですが、ホントに詳しい方が読めばわかりますね、はい、まさにきょう、ドイツビールを飲みながらいろいろと調べて書きました。IPAとベルギービールはよく飲むのですがドイツビールはたまーにしか飲まず、また種類も豊富かつドイツ語がわからないため、あまり知らなかった、というのが真相です。

そもそも前にドイツのボン、ケルンへ行った時、当然のようにミュンヘンスタイルのヴァイツェンを探してしまい、街の人に、あれは南のだよー、ここではピルスナーがフツウだよー、と笑われてしまいました。そして、南でもまたラガーが一般的だという。。。

で、そのヴァイツェンですが、実をいうとそんなに好きではありません^_^;ベルジャンホワイトもそう。一番好きなビールはヒューガルテン!というニッポン人は多いと思いますし、Blue Moonの人気をみても、またベルギービル店の成功をみても、さらにはドイツビール=ヴァイツェン、という認知をみても、白ビール、ホントに人気ですね。

ただgeneはあのバナナっぽさと、安息香的な香りがダメで…。

ではなぜきょうはケーニヒのヴァイツェンを飲んだのかと言えば…そう、あまりよく知らないドイツビールを適当に三本選んで買ってきたら入ってたからなんですね~

一般的には、ここでも触れたBitburgerのピルスナーや、ブレーメンのBECK'S、それにPaulaner、Franziskaner、そしてもちろんかの有名なバイエルンはミュンヘンにあるLöwenbräu!!(アメリカでもニッポンでもライセンス生産だったらしい。その後アメリカはオリジナルの輸入に回帰)なんかがドイツビールとしては有名だと思うのですが、せっかくの記念日だからマイナーなものを飲んでみようと画策。でもその結果、調べてわかった、いわゆるビール純粋令にズバリなのは地理的にも製法的にもレーベンブロイだったんだという事実^_^;

でも結局、三本ともうまかったです!

ケーニヒのヴァイツェンは白すぎなくていいですね。
ちなみにイチオシは、ケストリッツァーでした\(^o^)/

ドイツの三王家


ヨーロッパの複雑な歴史の中でもとりわけ複雑さを極める中世から近世にかけてのドイツ史。それは神聖ローマ帝国と諸侯たちの領邦国家という二重性に加えてさらに教会が絡んできて、そこに宗教改革で皇帝、王家、騎士、聖職者、自由都市と商人、そして農民たちが入り乱れるがゆえ。。。しかもそれが何百年も続く。。。

英仏百年戦争やランカスター家とヨーク家のばら戦争、それにニッポンの戦国時代やインド史もそれなりにフクザツですが、ドイツもまたすごい。

そんな中、gene的にひとつの軸ととらえているのが睨み合う三王家。すなわち、ハプスブルク、ホーエンツォレルン、そしてきょうの主役(?)、ヴィッテルスバッハ家です。

南部バイエルンはドイツの中でも様々な点で特異性を持っています。これは古代の民族構成の違いなんかももちろんありますが、ヴィッテルスバッハ家の元で長らく独立性を保ってきたことも関係するでしょう。その一方で、ライプツィヒに代表される都市や、北部の(宗教的な)改革派諸侯の領邦に比べて保守的な性質が取りざたされることも。ここでも触れた、ルター派とのビミョーな関係を思えばそれもさもありなん。※ライプツィヒは自由都市ではなくザクセン選帝侯領です。

ちなみに、みなさん、ルートヴィヒといえばかの新白鳥城すなわちノイシュヴァンシュタイン城を建てさせた狂王ルートヴィヒを思い出されるでしょうが、あれはルートヴィヒ2世。Oktoberfestの由来となったルートヴィヒ1世は祖父にあたります。

プレモたち


最後に。エンドロールを省略することにしてここで登場プレモを一部紹介。

ライブ中継の取材を受け、ドイツビア3本を紹介してくれた家族は「6359 チロル地方の家族」。そう、なんとバイエルンではなくてチロルなんですね^_^;まあ、この地方はバイエル、オーストリア、イタリアの境にあたる山岳地帯で、民族的にはバイエルンとほぼ同じなので。。。

続いて、ヴィッテルスバッハ家のヴィルヘルム4世と弟のルートヴィヒ10世を演じたのは「5090 レンブラントの『夜警』[The Night Watch](限定品)」

ネーデルラントの美術館との提携でつくられた限定品ですが、時代的に衣装がぴったりだったため、黒い方の帽子を別の銃士と替えて両公としました。Wikipedia掲載の肖像画に似てる?

こちらは同じく限定品、「6090 マルティン・ルター(限定品)」。ルターの教え(「95か条の論題」?)の500年を記念して作られました。プレモはバイエルンの会社が造っていて、普段はカトリックネタが多いですがこちらは改革派。

このほか、おなじみの崔観宇准教授やカニンガム=ウォルフ姉妹については、以前の演目をご覧ください。

そうそう、崔さんには、OBベクチュ!とかHite!とかについて語ってもらおうかとも思ったのですが時間の関係で割愛です。

あ、そうそう、もうひとつ。。。

「5054 ネーデルラント国王夫妻」

えー、スペインの某お店から取り寄せした際にサイトで発見してこれは!と思って購入したのがこちら。文字通り、いわゆるオランダ国王夫妻の何かの記念日の品なのですが、、、geneはどうしたことか、購入後これをベルギー国王だと思っており・・・(よく見りゃ箱に国旗が描いてあるじゃん…)ベルギービールの章で撮影してしまったのでした。。。それゆえ、特に必要もないのにネーデルラントのことを語ってしまったという。。。お粗末さまでした^_^;



ビール純粋令


で、肝心のビール純粋令ですが、これ、要するに技術や産業の遅れていた南部のバイエルンが、北部との貿易不均衡、貿易赤字を解消するとともに、国内においては民間の醸造所に対して特権的な優越性を持つ貴族や修道院の醸造所を実現すべく(あるいは結果的に)行われた、れっきとした経済政策なのですね。その結果かどうかはわかりませんが、バイエルンはその後、北部の国家に対して一定の距離を置きつつ、宗教改革を生き延び、民衆をカトリックの側に引き戻しつつ、強力な王国として成立。後の19世紀ドイツ統一においても重要な役割を果たすこととなったのでした。

たかがビール、されどビール。たかが小麦、されど小麦。

ヴァイツェンは、ゼイタクビール、稼げるビール、だったのでした。ちゃんちゃん。


1516年4月23日発布、純粋な形のビール純粋令…

「ビールは、水、大麦麦芽、ホップからしか造ってはなら~ん!」

(おれんちの醸造所では小麦もいれるけどねっ)

by ルートヴィヒ・フォン・ヴィッテルスバッハ