2017年12月31日日曜日

Dec 2017 3X3 Sages extra episode

えー、時はいま、2018年2月。2月演目作成中に気付いてしまいました。そう、12月のマギの演目に重要な一説を書き加えてなかったことを。(一部途中で)アップしてなかったことを!"Purple Jack"のアップといい、なんだかなーな12月ですが、、、めげずにいまさら追記します。ご容赦を!



こんにちは!きょうはわたくし崔観宇が、ディレクターモードから准教授モードに戻って、とある論文を発表したいと思います。その論文とは、、


『新・東西文化交流史
   - 東の果てのマギ』

テーマはそう、極東のマギです!!


Actually uploaded on Feb 23rd 2018



みなさん、ここであらためて言うまでもなく、マギ/Magiとは、ヨーロッパで信仰される、聖書に登場するジーザス生誕の折に黄金と乳香と没薬という貢物を持って現れた、いわゆる東方の三博士であることはご存じでしょう。東方とは、アケメネス朝ペルシャの故地たる、現代のイラン。そう、マギは、ゾロアスター教の神官たちだったと考えられています。

ところで、そのマギ/Magi、単数形でいえばMagusの語源について、考えてみたことはおありでしょうか?Wikipediaによれば、次のように書かれています。

(以下、色付け文字が引用部分です)



サーサーン朝時代では、中期ペルシア語(パフラヴィー語)でゾロアスター教の神官であるマギのことを「マグ」ないし「モウ」 (mgwy / mag, mow) と呼んでいた。特にオーフルマズド神(アフラ・マズダー)やアナーヒード女神(アナーヒター)などの神々に捧げられた拝火神殿を管理するような高位の神官は「モウバド」 (mgwpt / mowbad, mōbad) と呼ばれ、モウバドの管理のもと多くのマグたちが神殿の運営や儀式を執り行っていたようである。

英語版には例によって更に詳しく、こうあります。少し長いですが…

In Median sources:
The Avestan word magâunô, i.e. the religious caste of the Medes, (see Yasna 33.7: ýâ sruyê parê magâunô "so I can be heard beyond Magi"), seems to be the origin of the term.

The term only appears twice in Iranian texts from before the 5th century BCE, and only one of these can be dated with precision. This one instance occurs in the trilingual Behistun inscription of Darius the Great, and which can be dated to about 520 BCE. In this trilingual text, certain rebels have 'magian' as an attribute; in the Old Persian portion as maγu- (generally assumed to be a loan word from Median). The meaning of the term in this context is uncertain.

The other instance appears in the texts of the Avesta, i.e. in the sacred literature of Zoroastrianism. In this instance, which is in the Younger Avestan portion, the term appears in the hapax moghu.tbiš, meaning "hostile to the moghu", where moghu does not (as was previously thought) mean "magus", but rather "a member of the tribe" or referred to a particular social class in the proto-Iranian language and then continued to do so in Avestan.

An unrelated term, but previously assumed to be related, appears in the older Gathic Avestan language texts. This word, adjectival magavan meaning "possessing maga-", was once the premise that Avestan maga- and Median (i.e. Old Persian) magu- were co-eval (and also that both these were cognates of Vedic Sanskrit magha-). While "in the Gathas the word seems to mean both the teaching of Zoroaster and the community that accepted that teaching", and it seems that Avestan maga- is related to Sanskrit magha-, "there is no reason to suppose that the western Iranian form magu (Magus) has exactly the same meaning" as well.

But it "may be, however", that Avestan moghu (which is not the same as Avestan maga-) "and Medean magu were the same word in origin, a common Iranian term for 'member of the tribe' having developed among the Medes the special sense of 'member of the (priestly) tribe', hence a priest."

すなわち、マギとは、もともとマグ / モウ / モウバドなどと呼ばれた司祭階級で、子音でいえば、mghという音で表現されていたという訳です。

ところで、英語版Wikipediaには次のような驚くべき説明もありました。


In Chinese sources:
Chinese Bronzeware script for wu 巫 "shaman".
Victor H. Mair provides archaeological and linguistic evidence suggesting that Chinese wū (巫 "shaman; witch, wizard; magician", Old Chinese *myag) was maybe a loanword from Old Persian *maguš "magician; magi". He describes:

The recent discovery at an early Chou site of two figurines with unmistakably Caucasoid or Europoid feature is startling prima facie evidence of East-West interaction during the first half of the first millennium Before the Current Era. It is especially interesting that one of the figurines bears on the top of his head the clearly incised graph which identifies him as a wu (< *myag).


These figurines, which are dated circa 8th century BCE, were discovered during a 1980 excavation of a Zhou Dynasty palace in Fufeng County, Shaanxi Province.

Mair connects the ancient Bronzeware script for wu 巫 "shaman" (a cross with potents) with a Western heraldic symbol of magicians, the cross potent ☩, which "can hardly be attributable to sheer coincidence or chance independent origination."

Compared with the linguistic reconstructions of many Indo-European languages, the current reconstruction of Old (or "Archaic") Chinese is more provisional. This velar final -g in Mair's *myag (巫) is evident in several Old Chinese reconstructions (Dong Tonghe's *mywag, Zhou Fagao's *mjwaγ, and Li Fanggui's *mjag), but not all (Bernhard Karlgren's *mywo and Axel Schuessler's *ma).

要約しますと、なんと、チウゴク語における「巫」という語/文字は、ペルシアのmghが語源だというのです。山西省にある周代の遺跡から出土した紀元前8世紀の人物が頭にという印をもっており、これが「巫/wu」であることを意味する、と。

「巫」という文字は現代チウゴク語では wu と発音しますが、上古音では myag という音であり、これはまさに、ペルシアの mgh にあたるというわけです。その他の時代や地域のチウゴクにおける音を調べても、ペルシア語との近接性がみてとれます。







な、なんと!!!

南斗水鳥拳!シャゥオっ!


まさかの、巫術、巫女、巫(かんなぎ)の由来が遠くペルシア!?


印欧語と中国語の関係はまだまだ研究途上です。しかし、わたくし崔としては秦の始皇帝の登場時期、彼の風貌の描写、彼の導入した(周代の封建制とは異なる)中央集権的国家制度とペルシアのサトラップ制度の類似性、そしてその中間にいたであろうスキタイ系、月氏系、戎系の各種遊牧民や後のソグディアナの商圏などを考えると、血沸き肉躍る仮説ではありませんか。



さて、ここで気になるのは、この「巫」と、さらに極東の島嶼たる、ニッポンのいわゆる「巫女さん」との関係です。ハイ、わたくし崔は、これ、まったく関係あると考えています。

なぜって?だって、「巫女」って、ミコって読むじゃあないですか。倭の言語では「かんなぎ」。おそらくは、神(かん)と、凪/和(穏やか)あるいはイザナギのナギ。

これぜんぜん違いますよね。ミコって、御子とか神子とか皇子/皇女/親王とかあるがゆえに、ついついあたりまえに和語だと思いがちですが、少なくとも神に仕える神官としてのミコは、mgh → myag からの、Mの音ではないでしょうか?さらに言えば、ミコ/miko の Kは、mgh/myag の g の濁音が清音になっての k なんじゃあないでしょうか!?

だとすればですよ!

卑弥呼倭迹迹日百襲姫命倭姫命などなど、神に仕えた伝統的な倭国の巫女たちも、源流としてはゾロアスター教の神官にあるともいえるのです。卑弥呼の没年は247年または248年。ゾロアスター教の勃興は紀元前6世紀。その間、実にミレニアム!しかし、ペルシアからおそらくは中央アジアのステップや砂漠を経て、チウゴクの周、秦、漢の時代を経ての三国志の時代までに、ついには極東の島嶼にまで辿り着いた、

マギ!!


す、すごいですよ、これは。

とすれば、大高忍さんの『マギ』で、紅帝国の練玉艶が、マギに相対する魔女のような人物として描かれましたが(正体についてはネタバレになるのでここでは書きません)、それってすごく、示唆的なことだと言えますね!!



いっやー!凄いニダ!!!

これは、麻黄=マオウ=Hauma/Haoma/Soma としたあの学説や、酪≒LAC とした学説に続く、チウゴク語の(少なくとも語彙の点での)西との共通点、ユーラシア大陸を超えた人類の歴史ってことになりますね!!!








なお、来年2018年の1月には、東の果ての民間信仰、七福神をフィーチャーした映画についてレポートする予定ですが、その登場人物たちの中にも、マギがいるってことになりますね。つまり、道教の仙人である福禄寿と寿老人は、マギであり!!




はっ!!

いや、巫女/巫子がmyag、mghだということは、、

命(みこと)/尊(みこと)も!?
あの最もニッポンぽいと感じられる言葉も!?

七福神的に言えば、大黒こと大国主命も、恵比寿こと事代命も。あと、そもそもは先ほど述べました卑弥呼も、百襲姫も、倭姫命も、みーんな、mgh→myag→mk→…って可能性も!?

ゾロアスター教は、一神教、すなわち"アブラハムの宗教"と通称される、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の源流にもなり、一方で仏教の大日如来こと毘盧遮那仏=ヴァイローチャナも元はイランのアスラすなわちゾロアスター教における太陽信仰が起源だとも言われています。さらに、チウゴクの巫から連なる道教や、ニッポンのシャーマニズム的な八百万の神信仰まで、ユーラシアの西の端から東の果てまで、一神教からペイガニズムまで、すべての源流がゾロアスター教に帰する可能性だってあると!?

…さらには、大黒こと大国主命を祀った出雲大社だってある意味、マギの神殿。へたするとゾロアスター教の鳥葬の塔と、三内丸山遺跡や出雲大社の巨大神殿だって、根底でつながってるかもしれません!(いや、三内丸山はさすがに…いやでも、もしかしたらシベリア、沿海州、樺太、北海道経由で??いやいや…)




…というわけで、幾分興奮気味で脱線してしまった、わたくし崔ですが、この論文(なぜだか公開が年を越して2月になってしまっていますが(T_T))を納めて、これから2018年カウントダウンに向かいたいと思います。なんでも、ポルシェ登場らしいですよ!!


それでは、みなさん、よいお年を!!(…お迎えになったことかと…^_^;)


- Secret of Magi -

- End -