Jul 2015 - chapter 1
嵐が去り、雨が上がり、するとそこはもう、夏だった…。海の日直前、海をフィーチャーした物語、上演ッ!2014年の夏はちゃらっとした海岸青春群像劇でしたが、2015年は、そう、あの新たな物語につながる断章。シリアスに、そしてデンジャラスに、、、はいかないかな?請うご期待!(予告編を"production 75mm"に掲載しました。予告編その1 タコと宝箱、予告編その2 ビョルン博士とグレイソソ・ピアース隊長、こちらも併せてご覧ください。)『海洋冒険譚 ~フェンリルの宝箱~』 開演!
第一章 われら、私設救難隊
…よく、わからなかったよ。
おいおいおい、ジョナ~、頼むぜ~。
僕、ジョナじゃなくて、ヨナだ…
レムの説明がわるい。もっとわかりやすくできないの?
なーにー?
フフ、ジョナ君、言うなぁ~。レムも困ってる。確かにちょっとわかりにくい予告編だったものね。
だーかーらー。
昨夜入った報せによればだな、北大西洋ニューファンドランド島沖で、一隻のクルーザーが消息を絶ったらしい。船に乗っていたのは男女二名、それからこどもがひとりの家族連れ。
こども?
そう。男の名は鄭尊民(ジョン・ジョンミン)、通称ジョニー。女は鄭華蓮(ジョン・ファリャン)、通称カレン。夫妻で、こどもの少浄(シャオジャン)と一緒なんだと。
裕福で幸せそうな家族が事件にあったってこと?
裕福なんてもんじゃないぞぉ。鄭尊民といやあ、華僑系のコンツェルン、大青海公司(ターチンハイコンス)総帥、鄭成公(ジョン・チェンゴン)翁の孫。大金持ちも大金持ち、世界でも十指に入るほどの大富豪なんだと。趣味はクルージング兼海に沈んだお宝さがし。なんでも、じいさんの道楽である骨董集めを手伝ってるってことになってるらしい。
んでもって、その海域は、例の沈没船があるらしいってんで、学者(ブックマン)のビョルン・マグヌースソンが、ツグマのグレイソソを護衛に付けて調査に向かったところとほぼ同じ。
数日前に巨大頭足類の調査を行っていたダイバーが、妙な形の船影と宝箱らしきものを海底でみつけたって情報のあった、あの海域さ。
な~、なんだかきなくさいだろぉ?ジョナ。
…。やっぱりわからないや…。
…。まぁ、いいさ。
いまビョルン博士やグレイソソとの連絡役で当地にあったアールのやつが救出と調査に向かってる。
じきに詳しい情報が届くだろう。それまではベルマー、それにジョナ、ここで待機だ。
単なる遭難事故かもしれん、だーが、なんか気になるんだよなあ。そもそもその宝箱ってのが、ビョルン博士の言うとおりだとすると、、、
プルル!
プルル!
おーっと、ビックリしたぁ。だーれだ、いまどき携帯じゃなくってこんな電話にかけてくるのは…
ハイハイハイ、出ますよ出ますよ、まったくやかましいねぇ。
なんだとぉぅ!?
やぁっぱりあの宝箱が、、、
マズいなぁ。だとすると、急ぎ回収しないといかんなぁ。
大青海公司がやつらと繋がっているとすれば、おそらく現場には。。。しかぁしそれならなぜおれたちにわかるように救難信号を送ってきた?罠なのか…?
レム?どうする?
…いずれにせよ、アールがあぶないねぇ。ジョナ、ベルマー、それにニキータとカズトも呼ぶんだ。
スピードワンコ財団私設救難隊"チーム・ココ・マイアミ"、出動するぞぉ!
- 幕間 -
遥かな昔、それは、あった。
古代、中世、そして近世。
バルト、ノルド、そしてもうひとつの大陸。
遥かな太古より伝わりし呪われた頭巾。力の源。
それは、確かに、そこにあった。
新しき大陸の砂漠に。
遠くバルトの渓谷に。
あるいは氷の海に。
…それはあった。