2014年12月8日月曜日

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第八章 出逢い、そして、裏切り    



修道士の予言


あー、遠い。遠すぎるわ。水もねーし。

最近いいことないなー。これじゃあヴェンドの時のがマシだな。


だな。ここは楽勝で勝てるけど、ロクなもんがねーしな。やっぱ辺境は辺境か。

お頭も結局またふさぎ込んでるし。つまんねーな。


あいつ、もうダメだろ?ちゃんとおれらの給料払えるのかね。おれたちヨムスの者は、カネ次第だぜ?やっちゃって、舟だけいただいてどっかいくか?

だなー。


親方ぁ、、



どうしやす?


…。






-その頃オーラヴは…-


トボトボ。はあ、ゲイラ。ゲイラ。


ん?なんだ、あのヘンな髪型のおっさんは。


貴殿の顔には影がみえるな。

うるさいな、おっさん。なんだきちゃないカッコして。

わたしは神に仕える者。貴殿の行く先に、ジゴクが見えます。

…マジでヤバいジゴク。
わかる?ジ・ゴ・ク!


うるせーっつってんだよ!何が地獄だ。おれの行く先には王の道があるんだよっ。

乱暴なお人だ。愛する者を喪い、信じるものを見出せず、カネめあてのかりそめの道連れと共に、王になれるとでも?

な、なんだと!

愚かな若者よ。そなたは高貴の血筋と信じ込み、それをおのれの誇りと、目指す道と見定めてここまで参ったな。志は良し。しかし、ほんとうに大事なのはそのようなものか?愛する者の気持ちをほんとうに汲んでやることも、理解してやることもなく、妄想に捉われて旧き神々を盲信しておるな。そんなものにすがって何になる。

黙れ。新興宗教かぶれめっ!オーディンもトールも、みな自然の中で我々を見守り、力を及ぼしている。わが祖もそれを信じてきた。それが何がいけないっ。

そうではない。オーディンも、トールも、ヤハウェもイエスも、みな同じよ。

な、なにっ?



信じるべきは、そのような、世を超えた者たちではないと言っているのだ。おのれの愛する者が何を観、何を聴き、何に心を動かされているかを見よ。そこにこそ、そなたの信ずべきものがあるのではないか?時代は変わる。人も変わる。その時、人が頼るモノをもっと理解してやれ。そなたは強い男だ。おのれの中に築いた妄想だけを糧にここまで生きてきた。しかしその強さがあれば、己の中だけでなく、人々の心の中を考えてやる余裕を持てようものを。汝の隣人を愛せよ、主もそうおっしゃっておる。それだけでも信じる価値がある。

やかましいな、おっさん。

これより後、そなたは裏切りに遭うだろう。

な、なにっ!

その時、知るだろう。おのれがおのれの理想を追い求めるあまり、周りの人たちのほんとうの気持ち、恐れや不安や心配を気遣ってやることができていなかったことを。


ちっ。
縁起の悪いことをいうんじゃない、このボウズめ。うせろっ。









予言の成就


…。

くっ。ま、まさかあのボウズの言うとおりになるとは。。あいつら、信じてたのに。みんなで楽しくやってきたはずだったのに。ノルウェーを、ノルウェーをこの手に取り戻す夢を、共に追い求めていたつもりが、、、カネとは…

くっ


兄さん、もうやめようよ。そもそもオーディンもトールも、おれたちに加護をもたらしてくれるはずもないよ。


バカを言うな、ソルギルス。それに兄と呼ぶなと言ったろう。おれの曾祖父はハーラル美髪王。おれはオーラヴ・トリグヴァソンだぞ。従者のくせに、兄と呼ぶな。

兄さん、それじゃあソロルフ父さんがかわいそうだよ。せめて二人きりのときだけでも、ホントの兄さんに戻っておくれよ。


うるさい。幼い頃にお前の兄替わりだったのを、カンチガイしているのはお前の方だ。

…。わかったよ。それならそれでいいけど、ほら、オーディンやトールは、こうして兄さんの敵のほうについているよ。いつもそうじゃないか。先の戦いもそう、こうしてヨムスのやつらもそう。兄さんは旧き神々に頼っているから、ほんとうの強さを発揮できないんじゃないの?


ほんとうは、旧き神々が、ハーラル美髪王の亡霊の姿をして兄さんの強さを押さえつけてるんじゃないの!ソロルフ[Thorolf]父さんが、トール[Thor]が、兄さんを怒ってるんじゃないの?夢から醒めろって。アロギアさまやゲイラさまの言葉にも耳を貸さず、兄さんはいったい何を後生大事にしていくつもりなの!?じぶんだけの妄想!?

兄さんは、、、

もっとまわりの人を大事にして、兄さんを大事に思う人たちとの道を切り拓いてよ!!

ソ、ソルギルス…



.. To be continued.