2014年12月12日金曜日

Dec 2014 - p12/p24 - 


第十二章 エイリークの妻    



勝利王、去る


ノルウェーの覇権がハーコン・ヤールからオーラヴ・トリグヴァソンへと移り、半島の西に新しき教えが染み渡りつつある頃…

スウェーデン王エイリーク・ザ・ビクトリアス(勝利王)、崩御!

その全領土は、女王シグリッドが継いだっ。嫡子オーロフ・シェートコヌングの長ずるまで女王が統治するとのことっ!



よしっ、馬を牽けっっ。

…シグリッドか。いい女だってウワサだし、わしの得意なヒモ・パワー!を持ってすればイチコロ。戦わずしてスウェーデンもこの手に入るって寸法だな。わし、頭いい♪


…陛下、新しき神は重婚はお好みではありませんよ。アイルランドに残してきたギダさまはどうなさいます。


つべこべいうな、司教め。
行くぞ、ソルギルス。




過(あやま)てる拳(こぶし)


おお、シグリッド殿。
このたびは。


まだ喪も明けぬうちに不謹慎とは思うが早いに越したことはない。どうだろう?わしとともにこのスカンディナヴィアをひとつにまとめんか。



新しき神の治める北方の王国を二人で築こうではないか。もう海賊の時代は終わりにしよう。ほれ、改宗の準備もできておる。洗礼を…



…ウワサどおりですね

ん?



女と新しき神の力にすがって偉くなったお人とのウワサですわ

な、なんだと!!


わたしは貴方が捨てた旧き神々を信じています。先祖の大切にしたこの半島の自然に住まう神々を大切にしています。厳しいけれど、ウソをつかないこの自然。夫もそうでした。民もそうです。あなたもかつてはオーディンやトールを敬うものだったと聞き、いったい何があなたをそう変えたか、ホントウは噂は根も葉もないものではないかと、一度お話をしてみたいとは思っていましたが、もはやかつての誇りの片鱗もないようですね。


おおかた、ハーラル美髪王の末裔というのもまゆつばなのでしょう。誇り高き美髪王の裔がそのようにカンタンにオーディンを裏切るはずもありません。


お、おのれ、この女!言わせておけば!わしがオーディンを裏切ったのではない!あやつがわしを!

ははは。器の小さきものの言葉よ。オーディンは人々に軽々しく加護を与えたりはせん。そのかわりに仇なすこともない。すべては自然の理。そんなことももう忘れたか。ははは。おまえが強い理由がわかったぞっ。ワルキューレもお前のことを見限り、とうに忘れてしまったがゆえに、ラグナロクに導こうともせぬ。だからおまえは戦場で死なぬのだな。ヴァルハラに捨てられたヴァイキングか。はっはっは!





お、おのれー!愚弄するか!オーラヴ・パーンチ!!


(う、うわー!お、おれ、やっちまった~~ orz.. おれ、サイテイ…)

イタっ!あ、あんた、ぶったわね!

この、ヴェンドのお父さまにもお母さまにもぶたれたことがないこのわたしを!


おのれ!このこと、忘れるでない。必ずやこのことが、きさまときさまの王国に滅びをもたらすだろう!雷神トールの真の怒りの鉄槌は、このわたしがおまえの上に落としてやる!






あれ?にいさん、どうしたの?シグリッドさんは?

うるさいっ、知らんわっ。

何がワルキューレだ、何がラグナロクだっ。あんなふるくさい頑固女はこっちからお断りだっっ。ばかばかしい!…ブツブツ。プンプン。でもちょっと悔い悔い…




あれー、もうモテ期は去ったのかなあ。

うるさい!帰るぞ!








シグリッドの決断


ああ、あの男、思い出しただけでもハラがたつ。確かにイケメンだったけど、東西の各地で浮名を流してきたのもわかるけれど、ちょっとでも期待して待ってしまったじぶんがにくらしいワ。


あんなやつが半島を治めるなんて考えただけでもキレそう。エイリークさまが懸命に切り拓いたあの凍てつく大地をあんなやつに渡してなるものか。




しかし、と言ってわたしとまだ若いオーロフだけではどうしようもない。。。

ああ、エイリークさま…





よし、あやつの仇敵だというデーンの藍牙王の子、スヴェンと手を結ぼう。たしかわたしの妹が嫁いでいるはずね。

それに、やつが倒したラーデ伯ハーコンの子、エイリーク・ハーコナルソンもいい同盟者だわ。デーンとラーデはモメてたけれど、いまやオーラヴのせいで再び同盟を結ぶ好機。いや、わたしがそれをまとめよう。


デーンとラーデの艦隊の力を借りて、やつを滅ぼしてくれよう!われながら、名案ね!!


オーロフ、おいでっ。海を渡るわよっ。







ギィ

ギィ


ザザー

ザザー




ザザー

ザザー




.. To be continued.