2014年7月3日木曜日

Jul 2014 - p3/p7 - 

ペイソター・タロウ司令官の指示の元、行方不明の植物学者アン・カミングス博士の消息を追って、ワシントンからパキスタンへ、そして上海へと飛ぶモソク・コッカリス。その行く手には思いもよらない危険が待ち受けていた。そして、連絡の途絶えたままのグレイソソ・ピアース隊長の安否は…







第三章 冷面殺手 


- 上海 暗黒街 -


「おうおうおう、昨日からここらでコソコソ嗅ぎまわってる美国人ってのは、おまえか!?」

「はー?そういうおまえたちは何だ!」

「おれたちは、黄幇[ファンパン]だッ!よそもの、覚悟ッ!」

「うわっ!」

「なーんつって。
おまえら、ヨワっ!!」
「プロのオレ様の相手じゃあないが、かと言ってタダの街のチンピラじゃないな?アン博士の行方を知ってるのか!?」

「…。」


「ハッハッハ!そいつらは知らんよ。しかし、おれたちは知っている。知りたいか?美国人のコゾウ!知りたいか?教えてやらないよーダ!」

「誰だッ!」

「アイヤー!」

「うわっ!

こんどは強いなッ

何だ、おまえたちッ」

「だーかーら。おれたちは黄幇よ。黄幇の用心棒…というのは表向きで、ヨゴレ仕事専門の、暗部よ。」

「お、おまえは!トウキョウの新宿を、たった一人、わずか30分で壊滅させたという、、冷面殺手、猫俘[マオフゥ]か!?」

「大正解~!
よーくご存じで、光栄光栄。いかにもボクが、冷面殺手こと猫俘DEA~TH!!」

「くっ、それにそっちはマニラにその人ありと知られた武闘派、ロドリゲス・リーか…。いったい何が…」


「さーて、行くよーーー!」
「ホイサッサーーーー……


!?
ん?
ガンッ!ガンッ!

…ギャーーー!イッテー!」


「誰だっ!」

「クスリ漬けのけがらわしいケダモノに名乗る名は持ち合わせないわ。」

「お、おまえは、セイチャソ!?」

「ひさしぶりね、モソク・コッカリス。グレイは元気?」

ガガガッ!

セイチャソのGLOCK 18Cが火を噴いたっ!

「モソク、いまのうちにアン博士をっ。こいつらにだけは、あの悪魔の草を渡してはいけないっ!」

「お、おうっ。何だかわからんが、わかった!」

「あ、あなたはっ?」

「アメリカ合衆国国防総省所属、国防高等研究計画局Defense Advanced Research and Planning Agency配下の特殊部隊、ツグマ・フォースの隊員、モソク・コッカリスです。早口言葉ではありませんよ。アン博士、あなたの救出に来ました。」

「ああ…」

「うわっ。やっべ。おれ単なるホリョの見張り役だから、戦闘力はナシナシ。出番ないけど、三十六計、逃げるに如かず~」





「ありがとう。助かりました。何とお礼を言ったらいいか。」

「任務ですから。それよりいったいなんでまた、あんな危険なエリアにわざわざ。その、"悪魔の草"というのは何ですか?察するに、ヤバい薬の原料かと。なぜあなたがそんなものを…」

「え?いえっ!違いますっ!あれは、あれはそんなやましいものではありませんっ!確かに、現地の方々は長らく、そのように呼び習わしてタブーとしてきました。しかし、あれはそんなものではないのです。あれは、あれは、、、

わたしはある方に依頼され、あれを採集にまいりました。その方が言うには、あれでなくてはならぬと。ええ、あれに近いものは、イラン、アフガニスタン、いえ、それこそこの大陸にも、あなたたちの暮らす大陸にも、地球上あちこちの砂漠にあるのです。しかし、あの方々は、これでなくてはダメだと…」

「あの方々とは?」

「わたしの依頼主は、ムンバイに住む実業家の奥さまで、バルサラ夫人とおっしゃいます。彼女の夫は不治の病に冒されています。いえ、それでも十分な気力がありさえすれば、まだ10年は生き延びるでしょう。そのためにも彼女は、一族に古くから伝わるこの、"聖なる草"で作った神酒が必要だと…。」



ガタン…

「誰だっ!」


「ニャニャニャニャーー!


猫俘だヨ。ゾンビじゃないよ?
おれいま、
 無敵モードに入ってるんだ~♪
名付けて、猫俘・エル・アルマダ

あれ?もう聞いてない?聴けてない?
ニャニャニャニャー!
モソク、弱し!ツグマ・フォース、弱し!
ニャニャニャニャー!」

「ぐ、ぐっ…。ば、ばかな…。やつは確かに、セイチャソに撃たれて…」


ガクッ…

「キャーーーー!」
「にゃにゃにゃ?」



- その頃、バクーでは…



「…フジミの肉体。不屈の精神。アゼルバイジャン。バクー。カスピ海。樽。宝冠。湖。湿気。『アヴェスター』、『ヴェーダ』、ヘロドトス、アレクサンダー、ペルシア、マギ、デルポイ、スキタイ、匈奴…」

calculating... calculating... calculating...

グレイソソ・ピアースの頭脳を、無数の火花が駆け巡った。それはまさに文字通りの電光石火。現代最先端の化学、医学と東洋の道教を修めたグレイの脳裏に、無数の情報が、跳ねたっ!

「そ、そうかっ!そういうことかっ!
こいつは、ハオマだっ!
しかも通常のハオマじゃあない。
これは、、、

ファーメンテッド・ハオマか!?」

(つづく)