2014年7月4日金曜日

Jul 2014 - p4/p7 - 

黄幇のアサシン、猫俘に倒されたモソク・コッカリス。そして、すべてのナゾを解き明かしたかにみえるグレイソソ・ピアース。舞台は再び、アゼルバイジャン、バクーへ。そして戦いは、カスピ海上へ…。






第四章 黄麻党 


- カスピ海 湖上 -


「このあたりだろう。やつらが樽を発見したというのは。」

「だな。しかしあの樽には残念ながら、活きた株は残っていなかった。結局、地元のあほうどもをキョウボウにしただけだったよ。」



「なーに。樽はひとつだけってことはないさ。」

「だな。あいつ、ユーリって言ったか。しっかり働いてくれるといいな。元黒海艦隊の潜水士だか知らんが、何せえらくふっかけやがったからな。」

「おめでたいヤロウだな。」

「ハッハッハ!」

「しっかし、ホントに二千五百年ものあいだ、こんな深い塩湖の底で活き続けられるもんかねえ。」

「知るか。アタマを使うのはオレの仕事じゃねえよ。だが貴霜のダンナの云うことだ。まあ何か確証があるんだろうよ。あるいは神頼みかもしれんが、報酬がもらえればそれまでよ。」

「おまえ、やつらに心底組してるわけじゃないんだな。」

「そりゃそうよ、おれはその都度、やりたいようにやる。この入れ墨だって、あいつらが喜ぶからやってるだけよ。何も信念なんてありゃしねえ。ハッハッハ。」

「おい!おまえたち!そこで何してるっ!石油ドロボウ、天然ガスドロボウは重罪だぞ!こっちへ来い!」

「うるさいな、じじい。おまえはせこせこ油でもガスでも掘ってろ。おれらはもっと大事なものを、探してるんだよ。」

「まったくだ。」


「おい!岸へあがれ、怪しいヤツ!キサマら、許可証はあるのか!」
「だからうるせーって!あるわけあるか!」

ブクブクブク…

ブクブクブク…

「お、これかな?確かに樽だ。しかも王冠マークがついてる。ホップみたいな絵は気になるけど…ま、マツガイないだろ。

おーい!あったぞー!

「暗くてよく見えんな…。うん、よし。こいつは開けた様子はない。これを引き挙げれば、おれも億万長者だな!」

おーい!引き上げるぞー!

「岸へあがれ~」
「うるせーんだよ!じじい!」

ガガッ

「おい、紐が牽かれてるぞ。見つけたんじゃないか!?」


「おーい!おーい!…おかしいな、返事がないな。まあいいか。こうしてああして、紐をかけて、これで持ちあがるな。お、明るくなってきた。そろそろ日の出か。ちょっと仕事がしやすくなってきた。ぐるぐるぐるっと…

…できた!おーい!持ち上げろ!

「おい、あほうが何か言ってるぜ。」

「ふふん。紐を掛けたみたいだな。よし、じゃあ、「樽」を引き挙げるか。「樽」を。」


「おーい、早くあげてくれー。ブクブク。もう酸素がないぞー。」


「そろそろ酸素が切れる頃だろう。テマが省けていいってもんだ。」

「ユーリさんっつったっけかな。おサカナと仲良くな。ワッハッハ!」



ドドドドドドドド…

「ん?なんだ!?」

「あ、あれは誰だ!?」

「し、知らんぞ!」

「警察じゃないな?軍か?」

「関係ないさっ!」

ガガガガガッ!
ガガガガガッ!



「お、おい、あれは…」

「なに!?や、やつはバーサーク・バイカーにやられたんじゃ!?」


「アメリカ合衆国国防総省所属、国防高等研究計画局Defense Advanced Research and Planning Agency配下のツグマ・フォース隊長、グレイソソ・ピアースだ!キサマら、何を牽き上げている!?古代の秘薬を、災厄の薬をこの現代で何に使うつもりだッ!」

「くっ!バレたか…」
「お、おのれ、あとわずかのところで…」

「岸へ上がれ!!」





「これが、、、確かに開封された跡がない。二千五百年前のままだというのか…。そしてこの中に、その株が?」

フフフフフ…
ご苦労だったな
ピアース隊長…

「誰だ!」


「お、おまえたちは!?タロウ司令官から連絡があった、"黄幇"か?」

「ハッハッハ。黄幇などというケチなヤクザ組織は、世を忍ぶ仮の姿。われらの名は…

黄麻党!!
[Huan Ma Dang]

「黄麻党だと!?Huan Ma…

!?

Huma?Haoma?
ハオマか!?

「そうだ。われらは二千年以上にも渡って、真のハオマを探し続けてきた者。"塞"の血を引き、かの秘伝を東の地にて伝えし者。すなわち、その樽の正統なる継承者よッ!ピアース!下がれ!その樽をわれらに、本来の持ち主に返すのだ!」


「き、きさまら、モソクをどうした?」

「モソク?ああ、あの弱っちぃ美国人か?この猫俘サマに刃向ってきた?

あいつならいまごろ…

ニャニャニャー!」

「猫俘!無駄口をきいている暇はないぞ。さっさと樽を回収するんだっ。」

「(チッ。周 黒龍のヤロウ…。ロクな働きもしないくせに筆頭の立場をいいことにエラそうに…。)

はいはいはいニャっと。」

「おまえ、バカにしてるのか!!」

「黒龍、くだらん仲間割れはヤメロ。それよりこの翡翠杯へ、その、酵母…じゃなかった、菌の活きたままのハオマをそそいでみよ。」

「貴霜さま…

はっ。」

コポコポコポ…

「む~ん!み・な・ぎ・る・のお!翼をさずけるどころの騒ぎではないのお!

これこそが、活きたハオマだ。

二千五百年、よーく発酵が進んでおるわい!!



よし!ピアースはヨウナシだ!捨ててしまえーい!」

「はっ!」



ドカッ!バキッ!
ドッボーーーン!!

ブクブクブク…

「ゴボボ…

ゴボボ…

ゴボボボ…


ボ、ボブブ…
ビ、ビベイバン…」






(つづく)