2014年7月8日火曜日

Jul 2014 おまけ 

グレイ、モソク、ペイソター。セイチャソ、ロシア軍、そして劉 洪玄。それぞれの思惑を秘めつつ、事件は片が付いた。行方不明となった、発酵ハオマ一瓶を除いては…。

エピローグ


「お、グレイ!グレイじゃないか!どうしたんだ?昨日バスケやるって言ってたじゃないか?おれ、待ってたんだぞ。」


「コワレスキ…おれはおまえをいまほどうらやましいと思ったことはないよ。」

「なに?なんだって?どういう意味だ?わかんないぞ?おい、グレイ!グレイ!?」







- end -





この物語はフィクションです。実在の国家、団体、組織、人物とは一切関係ありません。類似の名前の人物とも、ジェームズ・ロリンズ氏ならびに岩井俊二氏とも一切関係ありません。ハオマ/ソーマに関する伝承、およびその種の特定については一定の事実に基づいていますが、発酵ハオマの存在についてはgeneの創作です。製造を試みないでください。オートバイで転ぶと発酵したハオマを摂取していても命に関わる事態になりますので注意して運転しましょう。ephedraおよびephedrineは循環器系に対する副作用の危険性のため、2014年現在、アメリカ合衆国、日本国を含む多くの国で規制の対象となっています。保持および流通には注意を払い、医療用途で使用する際には医師の指導のもと合法かつ適切な利用法を守ってご利用ください。 元気がほしい場合、ハオマ、ソーマ、麻黄、ephedraまたはさらに危険な植物を使用することなく、コーヒーを買いに走りましょう。






special thanks to
Russian special force(ウソ)



Stunt persons

5118 & 5524



Special thanks to
Police special task force
of Republic of P&M(ウソ)




Question :

Which plant
 do you think is
 "ephedra maelifica"?



「あーあ。最後までアクヤクだったなあ。

これで印象、
ますますワルくなるなあ、おれ。

ジャンク品人生も楽じゃないっすよ。」


「あんたはいいだろ、
もともとアクヤク顔なんだし。

おれなんて、警官のはずなのに…。

エキストラ合格して浮かれてたら、当日その場で配役変えるなんてなあ。そりゃないよ。署に戻ったら大目玉だよ…。

あーあ。もう映画はこりごりだヨ!

さ、パトロールパトロール!

こらそこ!バイク停めない!

ピピー!!





エンドロール

  • グレイ/グレイソソ・ピアース隊長
    • 制服姿 : 4693 警察の特殊部隊(special)
    • スタント(オートバイ) : 5524 スポーツバイク
    • スタント(ジェットスキー) : 3326 ジェットスキーレーサー
  • モソク・コッカリス
    • 制服姿 : 5186 特殊警察部隊 より 
    • オフタイム姿 : 4648 スノーボーダー(special)
    • 友情出演 妻 : fi?ures series 5 ガールズ 7 スケーター
    • 友情出演 息子 : 4698 こどもとモトクロス(special)
  • ペイソター・タロウ司令官
     : fi?ures series 4 ボーイズ 10 パイロット カスタム
  • ツグマ・フォース隊員 : 5186 特殊警察部隊 より ベレー&ハンドラー
  • アン・カニンガム博士 : 3087 女性探検家
  • ヘリコプターパイロット : fi?ures series 4 ボーイズ 10 パイロット
  • コワレスキ : fi?ures series 2 ボーイズ 5 バスケットボール選手
  • セイチャソ(二人一役)
    • その1 : fi?ures series 2 ガールズ 2 トゥームレイダー
    • その2 : 4265 宝石泥棒 より 女

  • 黄麻党の首領 貴霜/丘 黄淳 : fi?ures カスタム
  • 黄麻党の副官 周 黒龍 : fi?ures series 2 ボーイズ 11 拳法家
  • 黄麻党のコロシ屋 猫俘 : fi?ures カスタム 型番はこちら
  • 黄麻党のコロシ屋 ロドリゲス・リー : fi?ures カスタム 型番はこちら
  • 黄幇のチンピラ A : fi?ures series 3 ボーイズ 9 カンフー
  • 黄幇のチンピラ B : fi?ures series 3 ボーイズ 11 タトゥーの海賊
  • ナゾの協力者A : 4265 宝石泥棒 より 男
  • ナゾの協力者B : 5816 警察官と泥棒(ブリスターセット)より泥棒
  • ゴムボートと潜水士ユーリ : 4910 深海ダイバーと小型ボート
  • 牢番(エキストラ) : 5816 警察官と泥棒(ブリスターセット)より警察官
    • アン教授やモソクにはめた手錠も同セットより
    • おまけシーンのセグウェイ
       : 5296 トップエージェントとバランスレーサー
        (special plus)より バランスレーサー
  • ゾンビ・ライダー : 5118 カスタムバイク
    • アサルトライフル : 80533 プレモマガジン ドイツ警官より

    • ロシア軍カスピ秘密軍管区スペツナズ
      • 司令官 : 6287 三人の警察官[制服緑](add-on)より
      • 少佐 : 6287 三人の警察官[制服緑](add-on)より
      • 大尉/軍人ガール
         : 6287 三人の警察官[制服緑](add-on)より
        • 帽子カスタム : 他の特殊部隊、パイロットより
      • 少尉/スナイパー : 80533 プレモマガジン ドイツ警官より
        • スナイパーライフルカスタム
    • 人民解放軍憲兵隊
      • 准将 劉 洪玄
         : 5515 地方警察特殊部隊チーム(SEK)
           (ブリスターセット)より
      • 少佐 陽 淵
         : 5515 地方警察特殊部隊チーム(SEK)
           (ブリスターセット)より


    • 友情出演 Navy SEALs
      • SEALs兵士 : 上記の警官セットベースのカスタム
        • P&M、POLICEのロゴなし、オレンジヘア、ベレー
      • Seals、つまり、オットセイ
        • 7332 アザラシ。。。の親子

    • 発酵ハオマの樽 : 6218 大きな樽(add-on)

    あとがき


    あとがきのはじめに

    いやあ、ずいぶんと長い演目となってしまいました。過去最長。"pax fantasica"としてははじめての複数日連続公開となりました。しかも一週間以上に渡って^_^;

    もうひとつのプレモブログ"production 75"のほうでは、最近連続モノや複数日掲載をしていますが、"pax fantasica"はもともと月替わりのプレモ棚からはじまった企画なだけに、基本的には月に1つ、あるひとつの棚に並べたプレモの写真を撮って公開するスタイルでした。

    先月の『PAX FASHION WEEK - MALTA GIRLS COLLECTION』も連載でしたが、同日一挙公開でしたし、撮影の点でいえば、舞台装置や周辺のプレモ(たとえばプロモーター、カメラマン、警備員、ランウェイ、照明など)はすべてあらかじめ設置した上で、ランウェイを歩いてくるモデルだけが次々替わるというスタイルでしたので、これまでのスタイルの変型にすぎませんでした。(特別映画として載せた1回分とおまけのお嬢さま邸は、棚以外の場所で撮っています。いつも"production…"のほうの撮影をしているテーブルと、バスルームです。)

    しかし今回はまったく違います。各シーンごとに配役と立ち位置、脚本を決め、それに応じてプレモを組み替えては並べ、撮影し、解体して片付け、またそれを繰り返す…というヒジョウにテマのかかるやり方で撮影しました。イントロで暴れるセルゲイ君や、暴走バイクのライダー、モソクの家族、グレイとモソクの同僚のコワレスキなど、ホンのワンシーンしか登場しない役/プレモも多数あります。お疲れさんっ!

    そもそも普段の演目については、まずテキトウに気に入ったようにプレモを並べ、写真を撮りまくり、よく撮れたものを残してアップし、それを貼り付けながらテキトウにセリフや物語の流れを書いています。これは"pax…"も"production…"も、どちらも同じ。もちろんフィーチャーしたテーマによってはストーリーの骨子は決まっていますが、原則写真が先にあって、セリフやキャラ作りはほぼ最後にやっているわけです。しかし今回はこれを逆にし、キャラ設定とシナリオに沿ってプレモを並べる、ということに挑戦してみました。

    感想は?いやー、めちゃめちゃ楽しかったです(^_^)

    プレモを組み立て、並べ、また片付けるという本来の遊び方に立ち返った感じでした。しかし、時間かかった…あと基本的に立ち仕事が多く、約12時間近く立ちっぱなしで設置と撮影の繰り返し。早朝にガールズコレクションの片付けからはじめましたが、腰を落ち着けて文章に取り掛かれたのは夕方でした^_^;

    シグマ・フォースとは

    で、その大大大長編、いかがだったでしょうか。

    演目としては極地探検以来の近未来モノあるいは現代モノのSFとなります。元ネタはその名の通りシグマ・フォースシリーズ。アメリカの作家ジェームズ・ロリンズ氏による冒険活劇で、インディ・ジョーンズとダイ・ハードとミッション・インポッシブルとダン・ブラウン系を足して割ったようなおはなしです。

    シグマ・フォースは、インターネットの開発を行ったことでも知られるDARPA - Defense Advanced Research and Planning Agency / 国防高等研究計画局(早口言葉じゃないよ!!実在の機関だよ!)に属する戦闘部隊で、その構成員は特殊部隊勤務歴を持った博士号取得者、つまり、コロシの技術を備えたエリート科学者・・・。うーん、中二な世界!!アメリカ~ン!かっくいい!!(笑)

    シリーズはこれまでに『マギの聖骨』『ナチの亡霊』『ユダの覚醒』『ロマの血脈』などが和訳刊行されており、geneが読んだ初期四作はいずれも"カタカナ二文字+の+漢字二文字"を貫いている徹底ぶり(原題はぜんぜん違います)。そこで"pax fantasica"でもこれに倣ってみました、シグマフォース異伝 ツグマ・フォース『サカの神酒』です。ちなみにみきではなくしんしゅです(笑)

    サカ

    サカとは、かつてギリシアのヘロドトスにスキタイと呼ばれた黒海北岸の遊牧騎馬民族。まだ騎乗が一般的でなかったギリシアの人には、馬にまたがるその姿が半人半獣の姿にみえたのか、ケンタウロスの伝説を産み出したとも言われています。黒海沿岸だけでなく広く中央アジアの草原を疾走したと考えられるサカ族は、ペルシア、バクトリア、北インドなど各地の記録にその足跡を残しています。なんと大陸の東部でもその存在が知られており、「塞」の名で史書に記録があります。

    "人間万事塞翁が馬"という故事成語がありますが、この馬を飼っている老人は、塞の人、とも考えられます。なるほど、馬なわけです。中原の人々とは違った草原の民の達観した人生哲学が、この成句の由来なのでしょうか。(注:一般的には塞=砦と理解されています。)

    「塞」という字はふさぐとかさえぎるという意味の文字ですが、その形もとても興味深いところです。なぜなら、兜をかぶったサカ族の姿そのものだから。もちろん、土の上に標を立てて屋根をかぶせたこの文字の由来がサカ族であることはないと思われますが、サカ族の存在を知り、それを表記するにあたって、音だけでなく形も似た文字を選んだのではないかとgeneは半分妄想で考えています。

    草原から来る騎馬の蛮族のことを"塞外の民"のようにいいますが、これは防壁の外という意味と、サカそのものの意味と、両方を指していたのではないか。いや文字の形も合わせて三重に・・・。

    そもそも、サカは、帽子、とがった帽子をかぶっていると考えられていました。ヘロドトスによればサカには、大きく三つの種族があるそうです。それはサカ・ティグラハウダー、サカ・ハオマヴァルガー、サカ・パラドラヤ。それぞれ、「とんがり帽子のサカ」「ハオマを造る/飲むサカ」「海の遠くのサカ」という意味です。サカ族の遺物として最も知られているものに、イシク・クルガンで出土した黄金の戦士像がありますが、それをみれば"とんがり帽子"は一目瞭然。洋の東西を問わず、これが特徴とされたのもうなづけます。ヘロドトスはその部族名に、東方では漢字の形に、その驚きを表したのではないでしょうか。

    ハオマ

    さて、その中でも本演目の題材にもなった「サカ・ハオマヴァルガー」です。

    ハオマとは!?

    それは、古代ペルシアのゾロアスター教の聖典"アヴェスター"に登場する神々の飲み物で、お隣の古代インドではヴェーダソーマとして記録されています。古代ペルシア語と古代サンスクリット語がきわめて近い言語だというのは前にも書きましたが、ご想像の通り、ハオマ(あるいはハウマとも)とソーマももとは同じ言葉です。「sauma」という語が、西ではhaumaに、東ではsomaに、変化したと考えられています。

    このことから、ハオマ/ソーマは古代ペルシアと古代インドの民が別れる前、つまりインド・イラン語派元となった言語[祖語/Proto-]をしゃべっていた時代の原郷(あるいはさらにさかのぼっていわゆる"印欧語話者の原郷"の可能性も?)に住んでいた頃から存在しているとも考えられており、たとえば、オクサス文明とも呼ばれる、紀元前2,000年頃にアムダリア(オクサス河)の流域に栄えたとされる文明、いわゆる"Bactria-Margiana Archaeological Complex"に住む人々がハオマ/ソーマと火を使った儀式を行っていた、と考える研究者もいるそうです。

    演目では、面白くするためにまるでサカが発見したのかのように描いていますが、実際にはサカ族が活躍した時代よりはるかな昔からその存在、効能が知られていたわけです。HaomaとSomaという言葉があり、それがインドとイランの民族が分化する前の語である以上、それはマツガイありません。サカ・ハオマヴァルガーというのは、その生産と流通に携わっていたか、あるいは単に好んで摂取していたか、程度の意味で、彼らが発見者ではありませんのでお間違いなく。


    では、ハオマ/ソーマの効能とは?

    英気、天啓、高揚感、栄養、活力、長寿、霊感、生命力、などなどなど。もう少し詳しく、"アヴェスター"に記された効能を英語版のWikipediaより引用してみますと;
    • it furthers healing (Yasna 9.16-17, 9.19, 10.8, 10.9)
    • it furthers sexual arousal (Yasna 9.13-15, 9.22)
    • it is physically strengthening (Yasna 9.17, 9.22, 9.27)
    • it stimulates alertness and awareness (Yasna 9.17, 9.22, 10.13)
    • the mildly intoxicating extract can be consumed without negative side effects (Yasna 10.8).
    • it is nourishing (Yasna 9.4, 10.20) and 'most nutritious for the soul' (Yasna 9.16).
    治癒力、繁殖力を高め、肉体に力をもたらし、神経を研ぎ澄まして認知・認識力を向上させ、魂を豊かにする。しかも副作用ナシ。

    いやー、いかにも人間が、とくにわるーい人…いやいやいや、ではなく、つよーい人が興味を持ちそうな効能です^_^;^_^;いや、それだけでなく、もっと元気になりたい!活発でいたい!勝ちたい!夜更かししたい!と考える人ならみんなかな。コーヒーやお茶、レッドブルガラナアンタルチカと同じ動機と言ってもまあいいでしょう。

    しかも神々の飲料とまで言われるものです。さては相当の効果があるはず!というわけで、古来、そして近年に至っても、その正体をつきとめようとする人々は後を絶ちません。

    で、結局なんなのよ?と言えば、演目の通りかな?まだ諸説あるわけですがgeneはやっぱりマオウ科の裸子植物だと考えています。

    ふたたび英語版Wikipediaより、"アヴェスター"に書かれた植物としてのハオマの描写を引用すると…;
    • the plant has stems, roots and branches (Yasna 10.5).
    • it has a pliant asu (Yasna 9.16). 
      • The term asu is only used in conjunction with a description of haoma, and does not have an established translation. 
      • It refers to 'twigs' according to Dieter Taillieu, 'stalk' according to Robert Wasson, 'fibre' or 'flesh' according to Ilya Gershevitch, 'sprouts' according to Lawrence Heyworth Mills.
    • it is tall (Yasna 10.21, Vendidad 19.19)
    • it is fragrant (Yasna 10.4)
    • it is golden-green (standard appellation, Yasna 9.16 et al.)
    • it can be pressed (Yasna 9.1, 9.2)
    • it grows on the mountains, 'swiftly spreading', 'apart on many paths' (Yasna 9.26, 10.3-4 et al.) 'to the gorges and abysses' (Yasna 10-11) and 'on the ranges' (Yasna 10.12)
    なんだか見た目も奇妙な植物であったことがわかります。裸子植物であるのに樹ではなく草、葉っぱはあるけれどなんだか枯れているような金緑色の鱗片。山岳地帯の渓谷や丘陵に生えます。

    なお、プレモ界では有名な(?)ベニテングタケではないとほぼ断定してよいでしょう^_^; 根や枝があるはずないですし、効能の多くが明らかに覚醒系のものなので、幻覚系のベニテングタケとは思えません。

    アン博士が捕まるシーンの写真に「4194 キノコの妖精の隠れ家」と付属のベニテングタケを映しておいたので、ひっかかったかな?(笑)

    Ephedra

    マオウ/麻黄。正式にはEphedra属の植物の総称で、北アジアから中央アジア、そして北米大陸西南部などの砂漠や乾燥した岩場に自生しています。近代以前には、風邪やぜんそくの薬として、つまり気管支の異常を治療する薬として活用されていました。また北米では、ネイティブアメリカンのほか、ユタ州のモルモン教徒が活用していた歴史があり、俗に"Mormon tea"などと呼ばれていました。

    なんと近代には、やせ薬として大々的に流通。その名もズバリEphedraという名で大量に販売されていたようです。なぜやせ薬なのか?そもそもEphedraは交感神経系に作用するアルカロイドの一種を含んでおり、気管支に効くのも、代謝をよくし気管支を拡張する働きがあるから。身体が熱を持ち、つまりエネルギー燃焼が高まるというわけです。このため、カロリー消費を促進するやせ薬として、また重量挙げ選手が効率よく筋肉を鍛えるためにも使われたとか。もちろんドーピングになりますから、次第に利用は下火となっていきました。それでも、気管支の薬としてEphedraを使っていた選手がこの規制にひっかかってしまうというヒゲキもおきたようです。

    現在では、このEphedraはFDAや厚生労働省によって禁止薬品とされ、基本的には単体での流通はしていません。というのもアメリカで何件かの副作用(心臓へのダメージ)が確認されたからです。ただしそこは訴訟の国アメリカ。権利の国アメリカ。伝統的にこれをもちいてきたコミュニティは禁止に反対し、ついには最高裁まで争いました。しかし結局FDAの規制は合憲と判断され、流通はストップ。ただ気管支の薬としてはより安全で効果の高いものがすでに代用されているので問題になっていません。

    このように、交感神経に作用するクスリであったEphedraは、まだコーヒーや茶などのカフェイン含有飲料が人類に知られていなかった時代-あるいは場所で-、ゾロアスター教やいわゆるバラモン教の祭祀の中で、"身体を強くし"、"力を発揮し"、"頭をはっきりさせる"クスリとして用いられていたと考えられます。ただし、後にはアラブ地域ではコーヒーが、インドではチャイが普及していったように、そのパワーはそんなに高いものだったとは言えないのではないでしょうか。それゆえに、気管支炎の薬としてのマオウは残ったものの、神々の飲料としてのソーマ/ハオマは、一部のゾロアスター教徒の儀礼の中で使われるのを除いて、すたれていったものと思われます。

    闇のハオマ

    しかし、英語版のWikipediaで、HaomaやSomaについて次々クリックして読み進めてくと…気になる記述を発見しました。しかも2つ。

    マオウに含まれるアルカロイドの濃度は、どうやら標高の高い地域に育つ種ほど、濃いようなのです。そして、ゾロアスター教のコミュニティでは、湿度の関係でEphedraが育たないインドに暮らす現代のパールシーの人たちは、儀式に使う高品質のハオマを求めてわざわざアフガニスタンの山岳地帯にあるハリ河渓谷から輸入しているのだとか。(関係ないですが、ハリってサンスクリット語の水や水晶と同じ語??)

    また、マオウの発酵についての一文。マオウは通常、幻覚系の効能は持たない。しかし、fermentation つまり発酵プロセスを経た場合には、幻覚作用を持つ。…これ、明確な根拠を示されないで書かれていたので、ホントかウソか判別できませんが…(というより、ホントウだったら心臓へのダメージ以上にヤバい話で、過去に事件になっているでしょうから、この記述はどうもガセネタでしょうけど^_^;^_^;^_^;)


    むむむ・・・。これは伝奇小説のいいネタになりそうではありませんか!!\(^o^)/

    ~かつて、より高い高山地帯にいまでは絶滅したEphedraの品種が生育していた。これは非常に希少なもので、かつてはこれをめぐって争いがおきるほどだった。サカ・ハオマヴァルガーは、もともとはその居住地に普通に生えていたハオマを、ペルシア、インド、あるいはギリシアの地に輸出していたが、やがてより高品質な品種を求めて、高山地帯へ進出する。そこは、現在のインド、パキスタン、アフガニスタン、チャイナなどの国境にあたる、ヒンドゥークシュ山脈クンルン山脈近辺。これが、アヴェスターの民、ヴェーダの民、そして最後にサカ族がインド亜大陸に進出するに至った最大の理由。


    そして、さらに秘儀とされたのはハオマの発酵。もともとギリシアのデルポイ神殿に連なる巫女や巫覡が、乾燥地帯に生育するハオマを誤って湿潤な部屋で保管していたことがはじまり。腐ったハオマを飲んだところ、その身に神が降り、予言の言葉を吐いた。それまで神託の真似事をしていただけの巫女が、ホンモノの巫女となった。



    そしてその技術は、やがて東方にも伝わり・・・

    現代。パキスタンの高地で新種のハオマが発見された!これこそがアヴェスターに記された真のハオマ!!ではその発酵を可能とする菌種は現代にも伝わっているのか?とすればどこに!?~


    うーん。古代と現代をつなぎ、国家と犯罪集団がしのぎを削りあう。科学と伝承。まさにシグマフォース的世界!が出来そうではありませんか!(笑)

    というわけで、これをネタに演目を一つやってみました。

    トップエージェント

    "活用したのはまず、これ。トップエージェントシリーズ!"…となる予定でしたが、結局おまけに宇宙セグウェイが出てきただけでした^_^;

    うーん、ショウジキ、いちばんよくわからんプレモシリーズです^_^;^_^;いえ、宇宙モノにも意味不明なのがたくさんありましたがこれも。。どうもドイツの近未来イメージがよくわかりません。こども向けにするとこうなってしまうのでしょうか。。

    セグウェイがほしい!とか吸盤がほしい!とかいう不純な動機で(笑)、少しだけ所蔵していたのでここで活用しようと思ったのですが、結局、二体とも登場せず!^_^;

    ポリスシリーズ

    で、むしろポリスシリーズが大活躍。

    どちらかというとドロボウさんのほうが何も盗らなかったわいいえやつはトンデモないものを盗んでいきましたそれはあなたの心です的な感じで好きなので、ズバリ警官を買うことはあまりなかったgene。消防士は好きでも警官は・・・そんなアナーキーぶったgeneをズキューン!!と狙い撃ちしてくれたのが、「5186 特殊警察部隊」でした。装備、かっこいい・・・。AVIREXのPDWそのものだ。そしてこれ、向井君主演のドラマ『S - 最後の警官』 がやれるじゃーん。ということでひとめぼれしました。

    が、プレモ時間的にトロいgene。またもや大人気商品は在庫切れ。結局、待つこと2か月、ようやくあれそれさんで再入荷されたところをガッチリキャッチしました。

    実はその間、一体だけ購入した警官がありました。それはプレモマガジン。青い制服の一見普通の警察官なのですが、なんとブルパップ式の自動小銃をもっています。。ただものではありません。。街のおまわりさんを装った特殊部隊なのでしょうか。。「5186 特殊警察部隊」をあきらめかけていたこともありこいつはゲットしておきました。

    その後、ヘルメットや帽子の違い、制服の文字の違いのあるものや、特殊部隊でない一般警察も含め、add-onを中心に収集。今回の演目にて勢揃いさせました。



    ドロボウさん

    続いては愛すべきドロボウさんシリーズ。カール・アウグストⅩⅠ世の宝冠を狙う宝石強盗のカップルは、黒い衣装と精悍な表情がなかなか使えます。

    男子の方は、黄麻党に付かず離れずのナゾの悪党役。女子の方は…お気づきでしたでしょうか?ずっと正体不明、セリフなしで最後まで来ましたが、そう、セイチャソのもうひとつの姿です。黄麻党に雇われたフリをしながら機会をうかがい、ツグマ・フォースに協力し、最後は一瓶残ったハオマを闇に葬り去りました。ユーラシアの守護女神ですから。

    そしてもう一人のドロボウさんは、、、このページの最後にも登場した、ブリスターセットの二人。geneはこの二人をジャンク品として入手しました。にもかかわらず、ドラゴンのタトゥーといい、手錠といい、大活躍。最後の写真では、ドロボウさんはゴムボート、警官はセグウェイと、とっても似合う乗騎を手に入れ、ある意味イチバンご満悦でしょう。もともとはコモノのコソ泥と街のお巡りさんでしたが、これで一挙に人気コント俳優としてデビューできました(笑)黒をベースとしたファッションが、ゴムボートにもセグウェイにもピッタリで、かなり気に入ったエンドロール写真となりました(^_^)

    ボート、ダイバー、そして樽

    で、そのボート。美術品ドロボウさんの男子の方がドラゴンタトゥーのドロボウさんと一緒にカスピ海をさらうシーンでは、「4910 深海ダイバーと小型ボート」に大活躍してもらっています。そもそも、ハオマとサカというネタで考えていたこの演目に、樽に入って湖に沈んだナゾのハオマ、という設定を加えることになったのはこのプレモを入手できたから。

    ダイバーは人気なので、「4478 深海探検用ポッド」ほか、大抵品薄か高値です。かろうじて訳あり品で安く売られていた4910をゲットし、登場させることが出来ました。このセットのダイバーは、fi?uresシリーズで新型宇宙飛行士として登場している人[5-9]の元ネタといいますか、色違いモデルといっていいと思います。ダイバーとボートとどちらにもサメのマークがついているのですが…ボートのほうはゴムボートであるがゆえの黒とあいまって、なんだかワルっぽい感じ^_^; そこであえて悪役側に乗っていただき、グレイはジェットスキーを別途用意しました。

    黄色のジェットスキーはたくさん販売されているのですがどうしてもイメージ的にシャープにしたかったので、ちょっとムリしてこちらの旧色を入手しています。嗚呼、出費が…^_^;

    カスピの湖底に沈んだ樽は、「6218 大きな樽(add-on)」を2つ用意しました。

    これ、ホップの絵が描かれていますので、明らかにビア樽なんですけどね(笑)




    チャイニーズ・マフィア

    最後に、悪魔の麻黄 - ephedra maelifica -を狙うさまざまな集団の一角(※当初は元KGBのハグレ者が築いたロシアンマフィアを登場させる予定でしたが、冗長になるので割愛しました)を担うべく、東方からも黒社会の方々に参戦してもらいました。超ステレオタイプでごめんなさい。

    麻黄って、Ma Huanです。逆にすると、黄麻 Huan Maです。つまり、hauma。これ、偶然なんですかね?漢方薬となった麻黄の裏の効能ことを知ってた人々が、隠語として-つまりザギンとかグーフーとかみたいな^_^;-アナグラムを行った!?だから、Maの音に、Hempと同じ「麻」の文字を使った!?(いや実際には上古音を考えるとそれはないでしょうけど。)

    ・・・なーんて妄想がひろがるひろがる。

    今回、かつての東アジア海賊として、あるいはWizardryの敵のNINJAとして活躍していただいていた暗部の二人をはじめ、アジアンカンフージェネレーションな5体に、黄麻党を構成してもらいました。



    サカ、月氏、クシャーナ

    妄想と言えばもうひとつ。黄麻党の来歴です。

    首領の丘 黄淳は、党の中で"貴霜"と呼ばれていましたが、これはインドのクシャーナ朝の漢文表記から、姓の"丘"はクシャーナ朝の王、クジュラ・カドフィセスの漢名"丘 就却"からとっています。仏教保護でも著名なカニシカ王の曾祖父にあたる人物です。

    『漢書』西域伝などに記された西方の国クシャーナ朝=貴霜国。実はサカそのものではなく、サカ=塞族と接していた月氏(大月氏)の後継政権。匈奴が大月氏を押し、大月氏がサカ=塞族を押したと言われており、その後、西北インドに進出した大月氏の一派が、クシャーナ朝の礎となったというわけです。つまり、塞族=サカと月氏=クシャーナ朝は敵同士なわけです。が、、、かつては月氏もスキタイ=サカの一派なのでではないかとする主張もあったようです。

    …はたして真相は。geneは、クシャーナ朝はサカである可能性もまだ残っていると考えています。

    貴霜とは、もともと匈奴に追われて移住した大月氏が設けた五つの諸侯のうちのひとつの名。ほかには高附(カブール)などがありました。アフガン方面まで拡がっていたわけです。

    やがてクジュラ=カドフィセスの時代に貴霜(クシャン)が強勢となり、他の四諸侯を統一して、貴霜王国、すなわちクシャーナ朝政権となりました。この五つの諸侯、これすなわち月氏の有力者であると考えるか、月氏に従った現地の有力者であると考えるかで、貴霜の来歴が決まるわけですが…

    …geneは、五諸侯国の主流は月氏であったものの、少なくとも貴霜だけは月氏でなかった、あるいはサカであったかもしれない、と考えています。

    というのは後のカニシカ王の時代、彼らは諸国の風習に倣って複数の王の称号を名乗ります。なんと漢風の"天子"、ペルシア風の"諸王の王"、インド風の"マハラジャ"、ローマ風の"カエサル"に相当する呼び名もあったとか。うーん、誇大妄想ですが(笑)、重要なのはその順序でした。最初が月氏において王を意味する、シャーヒ(Shahi)、そしてその次に来るのが、サカにおける首長の称号ムローダ(Muroda)でした。これをどう解釈するかですが、主流派の顔を立てたのが最初の称号 Shahi、本来の自身の称号が二番目の称号 Muroda だとすれば…。

    あるいはそうでなくとも、クシャーナ朝=貴霜の勢力圏で、サカ=塞族が一定の力を持っていたことは、この称号列挙から考えておそらく疑いないでしょう。クシャーナ朝は、サカ族と同じく、イラン語の東方方言を使っていました。

    紀元1世紀から3世紀ごろにかけて。演目に登場したサカたちの時代からは、実に1,000年近い月日が流れていました…。

    というわけで、貴霜こと丘 黄淳は、塞族の血を引くとじぶんで言っていますが、アヤシイもんだ、でももしかしてあいつの言ってることがホントウか?くらいに思っていただけるとありがたいです。おおらかにおおらかに。

    (あ、これ、もしMurodaじゃなくってDamuroだったらきっとgeneは、坂上田村麻呂=サカのダムロって言ってるんだろうなあ(爆)歴史の解読に語呂合わせはイケマセン。禁物です。)

    あとがきのあとがき


    ハオマのおもしろさ

    さて。"pax fantasica"をここまで大長編に盛り上げてくれたハオマのおもしろさ。薬効から言えばコーヒーのカフェインにも及ばない、それ。まだ医学薬学化学が十分に発達しておらず、物資も限られていた古代ならいざ知らず、いまでは単なるリスクを伴うノドの薬にすぎない、それ。そんなハオマのおもしろさはいったいどこにあるのでしょうか?それは、ハオマにまつわる話が、時空を超え、また学問の境を越え、ありとあらゆる分野に及んでいくところかなと思います。

    『アヴェスター』と『ヴェーダ』の両経典への登場。HaomaでありSomaである。語源はSauma。これだけでも、インド語派とイラン語派の共通の祖である原インド・イラン語、つまりProto-Indo-Iranian Languageの存在に気づき、そしてその伝承をたどることで、両民族に来た道をたどる旅に出ることができます。そこには、Bactria-Margiana Archaeological Complexアンドロノヴォ文化をめぐる、いまだ解明されていない両民族の原郷、モヘンジョ=ダロハラッパー滅亡の原因、そして果てはインド・ヨーロッパ語族の共通の祖とそれを話していた人々の原郷にも、調べる者を手繰り寄せる魔力を持っています。BMAC。これ、ソビエト連邦時代に盛んであった人類学の成果として発見され、それゆえに西側には90年代になるまでほとんど知られなかったという、遺跡界の神話(というのはgeneが勝手に呼んでますが)といってもいい存在。それに連なるだけでもワクワク感が尽きません。

    またその正体を探る旅は、歴史学と植物学を交わらせました。古典に描かれた薬効や植物としての描写を元に、幾多の人々がその正体を突き止めんとしてきた。有力な候補と考えられた植物が東洋医学でも薬効を認められていること、また、植物学上珍しい存在である小型の裸子植物であること、なども興味深いです。もともと古代史に興味を持っていた人に、植物について感心を抱かせるきっかけにもなるからです。

    そしてその正体を探る旅に魅せられた人物の中に、ウォール街の成功者、すなわちJ.P.モルガンのVice Presidentを務めたRobert Gordon Watson氏が含まれることもまた、ハオマの奇妙な魅力に拍車をかけます。アマチュアのキノコ学者(あ、アヤシすぎる!(笑))であった彼は、あの60年代末期の地球を包んだなつかしい熱狂の中、68年、ハオマに幻覚作用があると考え、ベニテングタケを候補に考えました。68年に発刊された彼の著書のタイトルは、『Soma: Divine Mushroom of Immortality』…つまり、"ソーマ:神々の不死のキノコ"(笑) 結局、現在ではその説はほぼ否定されているわけですが、あの時代、あの場所でそんなことが考えられたということだけでも、人類の歴史を考えるうえでいろいろな示唆を与えてくれるわけです。

    古代における用法とそれを探る旅だけではありません。現代においても、新大陸の過酷な砂漠で、奇妙な家族形態をともなって維持された宗教コミュニティがお茶として楽しんでいたり、その後に副作用が知られたことで当局とコミュニティのあいだで憲法裁判まで行われたり。かと思えば、現代人のヨクを糧に、ダイエット薬、ドーピング薬、あるいは"受験の薬"として売買されたり^_^; またその陰では、心臓へのダメージのない、代替薬を求めて研究に苦心した薬学者と、その結果生まれたより効果の大きな薬品の誕生、ぜんそくや気管支炎の原因究明と、交感神経系の仕組みの解明など、医学薬学分野の人にもベンキョウになる逸話もおそらくあるのでしょうし、法学行政学を志す者にとっても医薬行政、立法を考えるうえでサンプルとなり、判例となる品物であるわけです。

    そうそう、そもそも麻黄という草に、後にエフェドリンと呼ばれるアルカロイド成分が含まれており交感神経系に働きかけるからだということを発見したのは、日本薬学会初代会頭、日本近代薬学の開祖と呼ばれる長井長義氏たち。そしてその後、陳克恢とカール・F・シュミットという二人の研究を経て、かねてより東洋医学で言われていた気管支喘息治療薬としての効能が証明されたのだとか。東京、チウゴク、ドイツをまたいだエフェドリン研究の歴史というわけです。


    ああ、ヒトの欲と智慧、努力のうずまくハオマワールド!

    ゾロアスター教、『アヴェスター』、ヴェーダの時代、ヘロドトス、サカ、中央アジア、モンゴル高原、麻黄、葛根湯、漢方、J.P.モルガン、サイケデリック、ユタ、モルモン教、アルカロイド、FDA、アメリカ合衆国憲法、BMCA、アンドロノヴォ文化、オクサス文明、ダイエット、学歴社会、オリンピック、裸子植物…。

    約4,000年に及ぶ時間と北半球のすべて、そしてあらゆる学問分野を巻き込むこの壮大な知の旅。

    シグマフォースシリーズの著者であるジェームズ・ロリンズ氏は、同じような魅力を持ったマナ量子論ロマの文化や病原菌についての逸話を創作し、事実と空想を巧みに織り交ぜて絶妙なエンターテインメントを提供してくれるわけですが、ハオマ/ソーマはといえば、ただそこにあるだけで、自然とそのおもしろさを携えているのです。

    さああなたも、ハオマと共に、時空を巡る知の冒険に繰り出してみませんか?そうすれば頭は冴え冴え、気力は溌剌。まるで古代ペルシア人や古代インド人がハオマ/ソーマを口にした時のように、シャッキーン!と晴れわたる活力と生命力を、その心身に宿すことができるでしょう。そう、ハオマ/ソーマの神々の酒としての力は、この現代において、それを摂取することなどまったく必要としないほど、魅力的で力強いパワーとして、すぐそこにあるのです(^_^)

    それでも足りなきゃ、コーヒーでもいかが?
    ("production 75"にて、コーヒー物語、やってまーす)

    ホントにホントにおしまい