2015年4月11日土曜日

Apr 2015 - p1/p5 - 


この夏公開!映画『S -最後の警官-』!犯人の生け捕り("確保")を目的として警察に組織された特殊部隊、NPS。向井理さん演じる神御蔵一號、大森南朋さんの香椎秀樹隊長、綾野剛さん演じる出向中の蘇我伊織らが織り成す、正義とは、平和とは何かを問いかける(?)ポリスドラマ。pax fantasicaでもこちらをフィーチャーし、演ってみました、『P - 最後の警官 -』!ご覧ください!(映画も観てね)



第一章 召集


香取隊長「よし、みんな揃ったな。じゃ、ブリーフィングをはじめる。郷、頼む。」

副官・郷「はい。」




郷「かねてより噂されていた、超大物国際テロリストたちの入国が確実なものとなった。ついては…」

藁実(わらのみ)神威(かむい)「マ、マジっスか!国テロ、やっぱ来るんスか!?」

香取「おい、イチゴ、まだ話は始まったばかりだ。ちゃんと聞け。」

藁実「隊長、その"イチゴ"ってのやめてくださいよー。調子くるうなあ。」

郷(藁の実だから、ストロベリー、ゆえにイチゴ。隊長、うまいです。このコーヒー並みに、うまいですよ。)


テルマ(ダッサっ!こいつ、バッカじゃないの?国テロとか、略すなっつの。だからイチゴちゃんって言われるんだよっ。)



香取「まあ、いいだろう。そうだ、やつらは来る。しかも、この東京にだ。」

藁実「え!と、東京に?そんな、ウワサでは、どこかの離島に上陸するって…。」


イチゴ君、東京にも離島はあるんですヨ。浜松町、竹芝から船で行けるんです。調布からも飛行機でね。

でもまあ、ここではそういう意味じゃないんだけど。


郷「ああ。当初やつらは、福岡県新潟県、あるいは北海道の無人島への上陸をもくろんでいた。しかし、情勢が変わったんだ。」

藁実「情勢?」

ポインター4号「クゥーン、クゥーン」

鷲尾「あ、こら、ポインター。まだメシの時間じゃないだろ。隊長たちの話を聞くんだよ。」


郷「そうだ、しかも、高度に外交的な、情勢の変化だ。」

藁実「外交?」

新橋(にいはし)「おっと、ってことはおれの領分だな。外交ってのは世界でも最高峰の、交渉術の晴れ舞台だからな。交渉なら任せとけ。」


郷「新橋、相手がロシア欧州連合、新中華、それにアメリカさんだとしても、お前の交渉術は役立つのかな。」

新橋「な、なに!?」


藁実「どういうことですか?郷さん、もっとわかりやすく説明してくださいよー。」

郷「…。」

香取「そうだな、郷、藁実でもわかるように説明してやれ。」

藁実「ちょ、ちょっと隊長、そりゃないっすよ。」

物部伊織(こいつ、ホントのバカだな。。)

郷「つまり、こういうことだ。」


藁実「な、なんすか、これ?」

テルマ「キャー!イケメンじゃない!?あんたらとは大違い!」

鷲尾(ポインター、おまえのほうがあの犬よりイケメンだぞ。)

新橋「これ、もしかして、EURUPOLじゃ…。」

物部「新橋さん、EUROPOL[ユーロポール]のマツガイでは…。」

香取「いや、新橋の言うとおり、こいつらはEURUPOL[ユーラポール]だ。」

物部(??EURAPOL[ユーラポール]?ユーラシアの?)

香取「いや、物部の言うEUROPOLは、つまり欧州連合警察。EU諸国の合意の上に成立した、国家の枠組みを超えた警察捜査のための機関だ。ただし、彼らは捜査権や逮捕権を持たない。各国の警察組織の情報交換や分析、訓練に従事する、いわば欧州の警察官僚組織だ。各国語での問い合わせに応えたり、結構すごいけどな。」

郷「対してこのEURUPOLは、半ば非合法の超国家的な特殊部隊。もちろん、各国の政府は暗黙裡に承認していると言われるが、市民はその存在を知らされていない。なぜなら彼らは、各国軍の特殊部隊民間警備会社出身の荒くれ者から成る、テロリストや反政府組織の実効的な制圧を目的とした、攻勢のチームだからだ。わかるだろう、欧州の市民たちはそうした強権的な組織を好みはしない。国家の暴走にはことのほか敏感だからな。しかも、だ。EURUPOLの名の意味するように、彼らはEUだけの組織ではない。EUとRussiaの密約の元に産まれた部隊なんだ。」

藁実「制圧って、コロすってことっスか?ダメですよ!犯罪者とはいえ、有無を言わさずコロすなんて、ダメっスよ!ちゃんと、やつらがなぜそんなことをしたのか、問いただすんだ!」

テルマ「ちょっとイチゴちゃん、うるっさいんだよね、あんた。」

香取「まあ、聞け。イチゴ。あちらにはあちらの事情ってもんがある。欧州各国が、市民感情を逆なですることを覚悟の上で通常の対テロ部隊以上に強力な権限、いや、むしろ法の枠を超えた権能を彼らに与えたのには訳があるんだ。」

郷「イチゴ、おまえ、Brother's Squareって聞いたことあるか?」

藁実「え?」

香取「Brother's Square、またの名をゴロツキー彼らは世界でも有数の犯罪者集団。東ヨーロッパを根拠地とし、中東、アフリカ、南北アメリカ、それにアジアの各地で非合法活動により富を得ている、巨大組織だ。その起源は、Vorovskoy Mir、つまりThieves in lawと呼ばれた賊にまで遡れると言われる、世界の闇に属するやつらだ。」


藁実「な、なんか怖そうっスね。。」

物部(Thieves in lawだと?フザケた名前だ。『悪・即・斬』!いや、『悪・即・射』!!悪党どもはあの世へ送るのみ。)


ポインター4号「クゥーン。」

鷲尾「待て待て、もうちょっとな。しっかし、隊長も副官も、どっちも話長いからなあ。警官になるより学者にでもなりゃあよかったんだよな。」

香取&郷「鷲尾、なんか言ったか?」

鷲尾「い、いえ、ポインターと喋ってただけですよ^_^;」

郷「まあ、とにかく、このゴロツキーどもは、90年代の旧ソ連壊の崩壊後に急速にその勢力を伸ばしてきた。彼らの活動を制限することは、欧州各国とロシアの数少ない共通の利益だった。ここに、EURUPOLの誕生の背景がある。」

香取「ま、真相はわからんがな。一説には、彼らはゴロツキーを監視しコントロールすることは狙っていても、殲滅することは考えていないんじゃないかって勘繰りもある。某国では、ゴロツキーと政府高官や政府系企業役員の癒着も多いわけだしな。」

藁実「ワルモノなんすね!」


郷「…。まあ、そうだな。」

物部「それで、そのEURUPOLがどうこの件に関係してるんですか?」

テルマ「それに、さっき欧州、ロシアだけじゃなくって、新中華とかアメリカとか…。」

香取「それは当然、東京に上陸するという超大物の国際テロリストが、ゴロツキーの歴史を変えた、あの男、ヴラジミールだからだ。

通称"チーグル"、あるいは"アムールの虎"。ゴロツキーの極東方面幹部に過ぎなかった彼は、東アジアの混乱を背景にまたたくまに勢力を拡大。組織内での序列を駆け上り、いまやゴロツキーの中興の祖とまで呼ばれる存在だ。

やつの特技は巧みな弁舌と政敵を懐柔する交渉術。ゆるやかな組織連合に過ぎなかったゴロツキーをやつの意のままに動く巨大組織へと変貌させた、その掌握力だ。やつは敵を滅ぼさない。いや、むしろ敵を飲み込みさらに巨大に膨れ上がる。まるでジャンプキャラのようなやつだな。」

新橋「また交渉術ヤローっスか!やっぱおれが…。」

物部「その男はなぜ東京に?」

香取「ああ。ある男と会談を設けるらしい。」

物部「もったいぶらずに説明してくれませんか、隊長?」

香取「あ、ああ。そうだな。

(物部、ナマイキだな(>_<))

やつが会おうとしているのは、シーフー(石虎)。こいつもまた"遼東(リャオトン)の虎"の異名で知られる、北東アジア随一の大物犯罪者だ。かの石勒の甥、あるいは弟だと言ったらわかるかな。」

新橋「石勒っていやあ、かの国の混乱期に軍閥となった旧共産党指導者に従って転戦し、やがて雇い主であった司馬なんとかっつーおっさんを倒して河北、山西、山東の最高実力者になったっていう、あの男でしょう!?欧州では"Capricorn"て通称されてる。いや、でもやつは、犯罪者というより、混乱期の武装勢力で、しかもそれなりに筋の通った人物だっただけに、国際社会からも、かの地の安定のためには必要な人物だって言われたはずじゃあ…。たしか、座右の銘が『磊磊落落(らいらいらくらく)』っつうくらい、男気あふれる、学識にも通じ、仏教を深く信仰する男で、そりゃあ確かに戦争はしたけれど、かの地に治安と秩序をもたらした男ってことで、それなりに評価されてるやつでしょう?なんなんすか、そのシーフーだかシーズーだかいうやつは?」

郷「新橋、さすが詳しいな。そう、やつの叔父、いや兄同然に育ったとも言われる石勒は、地方政府の腐敗と離反を経て空中分解したかの国の華北地方を襲った「八委員の乱」の中を生き延び、北京の南に拠点をおいて、華北の東半分の統一を果たした男だ。反対派や敵対国家には犯罪者と呼ばれはしても、いわゆるワルだったとは言えない。しかし、甥の石虎は違った。ボウギャク、アクギャク、ザンギャクヒドウという言葉はやつのためにあると言っても差し支えない。叔父が少数民族の出身ながらに漢族を含む諸民族の融和を図ったのに対して、石虎は漢族を眼の仇にして、財産没収、過酷な徴税、それにいわゆる"民族浄化"まがいの行為を働いた戦争犯罪者だ。そもそも若い頃からアジア各地で強盗や襲撃を繰り返していた、正真正銘の犯罪者だ。色と財を好み、側近や一族すらも信じず、不信があるとすぐに粛清。悪党だな。」


香取「"アムールの虎"と"遼東の虎"。二頭のトラが、いまこの東京に来るっ!」



藁実「で、いったい、やつらは何をしようと?」

香取「やつらは…


ジリリッ!ジリリッ! ジリリッ!ジリリッ!


藁実(し、指令かっ!?
       出番か!?)

テルマ(…ジリリって…
  あれ、黒電話なの?)




香取「…おい、郷、おまえピザ頼んだか?」

郷(はっ、マ、マズイ!ピザ頼むときはケータイで頼めって、この前も叱られたばっかりだった!忘れてた!)



香取「渋滞してるから、30分くらい遅れるって…。」

郷(ホッ、きょうは怒ってないか。。。)


香取「っていうか、郷!ピザは携帯でな!!」

郷「す、すいません!隊長!」

香取「みんなもいいかー。

デリバリー頼むときは、各人の携帯で電話するように!

隊長に代表電話、取らせないように!!

(つかいまどき代表、使うか?)


…で、何の話だったかな…。」


(つづく)