2016年1月10日日曜日

Jan 2016 - Monkey Fantastic! 01 


そして、2016年。このブログも公開以来3年目に突入。記事としては、2013年3月分、およびそれに先駆けた星の外伝からとなりますので、もうすぐ36回を数えることとなります。いつのまにか、長編の制作が増えてしまい、すでに記事数は数えていませんが^_^;、記事数500を超えた姉妹ブログともども、引き続きよろしくお願いします。

さて、新春…は、すでに過ぎつつ…とにかく、1月の演目は、恒例になりつつある干支シリーズとスペースオペラ!昨年は、ギリシア神話のアルゴー号探検隊に題材をとった新解釈『スキタイの子羊』からの、続く二月には同じくギリシア神話のスペクタクル、ティタノマキアーとハーデスの神話を上演。そう、かのギリシアの神々を、スペースアルケオロジー風の描写でお届けしました。しかしこのたびは…

そう!サルです!

え?惑星かって?いえいえ、以前からあたためていた企画、そう、あのアジアの大伝奇小説を演じます。題して、『Space Journey to the West』、はじまりはじまり~




第一回 孫行者、旅の始まりを語る の巻 


キーン!

キーーン!

キーーーン!


いよぉっし、停まれ!

サマーソルト号!

ここらでひとやすみしようぜ。




オッス、おら、…

じゃなくって、

オレさまは、

ソン・ゴクウ(孫悟空)!

またの名を、美猴王斉天大聖孫悟空!いまじゃ孫行者とか呼ばれてる。まあ、このあたりの星域じゃあ、ちょっとした顔、いや、オレさまを知らないやつはモグリだって言われるくらいの、オオモノさ。

…だっけどいまは、なんだか妙な旅に、つきあわされちゃってんだなあ、これが。

あーあー。

めんどくせーーーー!

それもこれもみーんな、あの、ニルヴァーナ銀河にいるとかっていうゴータマ・ブッダのヤローと、あのわけのわからねー小娘のせいなんだ!

チクショー!


そう、あれは、思い出すのもハラがたつ、300年前…


ぐー、いてーよー、ハラへったよー、誰か来いよー。あれから何年経ったんだ?5万年くらいか?チクショー、ブッダのヤロー、バカにしやがってー。こんな岩っ!

えい!えい!

ぐー、重てーよー、動かねーよー、いったいどうなってんだー。



おっ!

おい!そこのピンクのハイヒールのねーちゃん、いいところに来たゾ、っていうかここ5万年であんたがはじめての通りすがりだ。さすが辺境惑星ってところだが…

まあ、それはおいといて、おい、この岩をどけてくれないか?

…って言ってもムリか…そのちっこいカラダじゃなあ(T_T) うーん、ザンネンだが、いいぞ、行っていいぞ。なんだってまたこんな小娘が…チクショウ、次こそ…

…オンアボキャベイロシャナウ マカボダラマニ マンドマジンバラ ハラバリタンヤウン!!…

えいっ!


ググーンっ!!

お、おわーっ!


い、岩が、、吹っ飛んだ…

いったい何なんだ…


あたし、小娘じゃあないわっ。ちゃんと、オニキスって名があるのよ。

オ、オニキス?

ええ、黒い(玄い)宝石。それがあたしの名前。

へー。。。

ま、どーでもいいやっ。


うりゃっ!我こそは、

斉天大聖孫悟空!

いまこそ、あのにっくきブッダに仕返しするときっ!待ってろよー、ブッダっ!サマーソルト号、いくぜ!!ブッダをやったら、あとは、あとは、この銀河を、いや宇宙を、この美猴王さまに膝まづかせて、あんなことやこんなことを…


ププっ。あなた、ヒトかと思ったら、コザルなのね?ププっ。かわいいわ❤もしかしてあなたが…



…。

…。

…。



おい…。姉ちゃん…。あんたいま、もしかして、もしかしてとは思うが、サルっつったか?助けてもらった礼に、黙って見逃してやろうとは思ったが、それを聞いてしまったからにはこの乱暴者のオレさま、黙ってはいさようならってわけには、いかないなあ。オレさまは…サルじゃ…ねーーーーっ!!数万年、いや数十万年前に惑星 カ=カ で、鉱物の特徴を取り込んで進化した人類、石の血脈に連なる誇り高きタシュケント族の勇者だぞっ!サ・ル・じゃ・ねーんだよっ!

キャーーーー!何、なんなのー?コザルが怒ったーー!キャー(>_<)

たすけてーーーー

えいっ!


シュルシュルシュルシュル…

ピタッ!



…あ?なんだ、この輪っかは?

頭に輪っかが?まあどうでもいいや。それ、小娘、覚悟はいいかっ!


キャー!サル!サル!サルのくせにーーー!あたしはこれでもまだ…

キャー!


観自在菩薩…
観自在菩薩…

ギャギャッ!!

イッテー!!

(>_<)

(T_T)

な、なんだこりゃー!

そ、それは、ブッダ・ガジェットのひとつ、"ボンデージ・ヘッドバンド"よっ。旅に出る前、夢に出てきたあの方がくれたの。あたしの唱える、緊箍呪の音波に反応して小さくなるから、あなたの頭をキツくしめつけるわ。さあ、小猿よ。せっかくこうして助けてあげたんだから、暴れるのはやめて、おとなしくあたしの言うことを聞きなさいっ!

あ、あんた、そんなナリして、ドS女王サマかよ…

ふふふ。あたしはアヴァロキテーシュヴァラさまの夢のお告げを聞いて、この辺境の流刑星にやってたの。そして、お告げのとおり、小猿、あなたをみつけた。あなたはこれからあたしの供をして、銀河の旅に出るのよ。そういう運命なの。

な、なんだってー??


んなムチャな話あるかっ!

オレさまはようやく、5万年ぶりにこの岩の下から出られたんだぞ。この上また、わけのわからん姉ちゃんのお供だと?オレさまはそんなフコウな星の元に生まれついた覚えはねーんだよっ。

でも、もうダメなのよ。ほら、そのヘッドバンドもあるし、、それにね、こうしている場合ではないの。宇宙は、宇宙は、いま、滅びに瀕しているのよ…。

何っ?なんだそりゃ?


あなた、ここしばらく、宇宙がとても寒くなっていることに、気が付かない?

うーん、そういえば、2万年ほど前からかなあ、ちょっとな。ときどき、ぶるっと来ることがあるけど、てっきりそれはオレさまが喰ってねえからだと思ってたぜ。

ううん、チガウの。あの方によるとね、いま宇宙の熱量が、おかしなことになっているというの。特定の場所にはとてつもない熱量が集まり、それ以外の地はだんだんと冷えて行っている。このままではそう、宇宙はその時を止め、やがて、シに至るの。

はあ?なんだそりゃ?

とにかく、あたしはそれを停めるために、ずっと東の果てから旅をしてきたの。そう、スピカ星系にある惑星シモキタからね。そしてこれから、ずっと西にある、BD +20°307と呼ばれる恒星の、ヘイト・アシュベリーっていうところに赴かなければならないの。ブッダさまに、宇宙を救うための教えを請うために。

な、なにっ!ブッダだって?あいつ、いまそんな西にいるのかっ!

ええ、このベテルギウス星系からずっと西に向かったところにある、遠い昔に惑星が衝突して粉々になった星域。そこで喪われた多くの幼い幼い、命、ううん、まだ命と呼べるほどには進化していなかったちいさなちいさないきものたちの魂を導くために、ブッダさまはそちらにいらっしゃるって、あの方が言っていたわ。

なんでもいいやっ!ブッダの居場所がわかったのは好都合。姉ちゃん、あんたやっぱりオレさまの運命の女かもしれねーなっ!よし、供をしてやるぜっ!

ホント!?コザルっ!オニキス、うれしーーっ!ありがとーーーー!じゃあこのジェイドラゴンと一緒に、いきましょう!

はあ?ドラゴン!?こりゃ馬じゃねーっか!

???

この子の名前は、ジェイドラゴン(玉龍)。あの方のお導きであたしの旅をする、そうね、言うなればコザル、あなたの先輩よっ。仲良くしてねっ。

あのなー!お・れ・は・コザルじゃねーー!!オレさまの名は…

斉天大聖、孫悟空さまだ!!

ソン・ゴクウ!忘れるなっ!


…そんなわけで、このゴクウさまは、不本意ながらに、こんな小娘の供をして、翼のあるこの馬と一緒に、星の大海に漕ぎ出した、というわけだ。


第二回 沙和尚、砂の中より現る の巻 


あー、ノドが乾いたな。オニキス、このあたりでオアシスを探さないか?

そうね…でも、ここは流刑星。そう簡単に水場がみつかるかしら…あら?あれは?





おっ!ラクダだな!ってことは…採掘場が近いぞっ!オニキス、喜べっ。水場だ。ヒトがいるぞっ。

???

ゴクウ、どういうこと?

あんた、ホントに何にも知らないでここに来たってのか?あきれたな。。ここは惑星デューン、通称、「砂の惑星」。宇宙にその名をとどろかせる、ベテルギウス星系の「シ」の星。全宇宙から、キョウアクな政治犯やテロリストが送り込まれてくる、辺境の流刑星さ。

ええ、それなら知ってるわよ。

だがな、その真相は、ちょっと違うんだな。ここは、遥かな昔、まだ皇帝シャッダム四世の治世、ハルコーネン家とアトレイデス家が勢力争いを繰り広げていた頃から知られる、恒星間飛行に欠かせない資源、つまり「メランジ」を産み出す惑星として、宇宙の支配者たちから常に注目されてきた、貴重な星、、、だったんだ。

ええっ?ここが、あの、デューンなの!?

そうだ。だがな、クイザッツ・ハデラッハの降臨以降、皇帝やギルドはこの星からの採掘を断念し、星は打ち捨てられた。やがてその皇帝家も滅亡し、この星のことを覚えている者はほとんどいなくなったわけだが、ある時、このあたりの司法貴族どもが、旧い歴史書からこの星こそがデューンではないかって考えて、あわよくばもう一度メランジを採りだせないかと、囚人どもを送り込んで、流刑星兼強制労働地にした、ってこういうわけよ。もっとも、わずかばかりのメランジが取れたところで、失われた恒星間飛行の技術が復活するとも思えねーけどな。

コザ…、いえゴクウ、あなた、こどものくせに物知りなのね。

なっにーー!オレさまはこどもじゃねー!!何歳だと思ってんだ、この小娘めっ!


あら、ゴクウ、あれはっ?ヒトじゃない?

ヒトの話を、聞けーーー!
…って、ああ?ああ、あれはそれ、その囚人のひとりさ。

あのナリからするに、どこぞの水の惑星のやつだろうな。このあたりの砂漠は、深い深い流砂に覆われていて、もはやそれは大地っていうより海のような状態になってる。水の惑星の潜水が得意な囚人どもが、装備を改造されてああして、砂に潜らされているって聞いたことがあるぜ。もっともあいつはかなりうまいこと砂に潜っているから、もともと砂に適性があるんだろーけど。




水の惑星?

ああ、地表の半分以上が水に覆われているような惑星のことさ。けっこう棲みやすいって聞くぜ。オレさまはゴメンだけどな。

ゴクウ、あなたはどこから来たの?

おれか?オレさまは石の惑星だ。そう、この身体には、石の力があふれてるんだぜ!!

???


ややっ。やつめ、こっちに来るぜ。オニキス、気を付けな。荒くれ者の囚人だからな。

(あ、あなたほどじゃないと思うけど…)

やいやいやい、このカッパ野郎!オレさまに何のようだいっ!この、オットセイだかペンギンだかの子孫めっ!

???


…。おまえ、ベテルギウス星系の者じゃあないな。なぜこんなところにいる…。

そういうテメーこそ、この星系に水の惑星はねーだろーが。よその星系から送り込まれてくるたぁ、相当なワルだろっ。そのワルが、このオレさまに何のようだっ。

ふふふ。その通り、わたしはミルキーウェイ銀河から来た。おまえのようなコゾウは知る由もない、あの由緒正しき水の惑星からな。

なんだとっ!バカにするかっ。

え?ミルキーウェイ銀河?旧い水の惑星?もしかしてそれって…


おい、コゾウ、それよりその女、何やら聖なる匂いがするな…。さてはどこぞのハイ・プリエステスか?なぜこんな流刑星に僧侶がいる?さてはきさま、囚人じゃあないな?察するに、人買いか何かか?

チッガーウ!オレさまは…斉天大聖!ソン・ゴクウさまだっ!

ふんっ。知らんな。それよりその女をおいていけ。メランジは採れなかったが、それほどの聖なる女を届ければ、恩赦も期待できるというもの…。そもそもこの、捲簾大将として尊崇を受けた、元ミルキーウェイ銀河近衛兵団司令長官のこのわたしが、こんな辺境の流刑星でスパイス採掘など、、、しかも、手が滑って当時の銀河皇帝のお気に入りの器を割ってしまったからだなんて、そんなフザけた話…これ以上続けられるかっ。

何をごちゃごちゃ言ってるんだ、このカッパめっ!

わ、わたしは、、、カッパでは、ないっ!!(T_T) 沙悟浄だっ!

やかましー!おまえなんか、オレさまの武具、"アズ・ユー・ウィッシュ(如意棒)"でぶちのめしてやるっ!

なにをっ。宮城にそれありと知られた神器、"デモン・スレイヤー(降妖宝杖)"で受けてたとうぞっ!



こら、ゴクウっ、乱暴はダメよっ。まず話し合って!LOVE & PEACEよっ!

なにっ?んなこと言ったってこいつもヤバそうな業物持ってんだし、そういうわけにも…いかないんだよーーーっ!

ゴクウっ!

トリャー!!

う、うわーっ!




ぐ、ぐっ、、、ミルキーウェイ銀河きっての使い手と呼ばれ、銀河皇帝の警護役まで仰せつかっていたこのわたしを、い、一撃で…き、きさま、ただのサルじゃないな…

だーかーらっ!オレさまは、サルじゃねーー!!

美猴王
斉天大聖
孫悟空
 さまだーー!

おぼえとけ、このカッパめ。

わ、わたしも、、、カ、カッパでは、ない…。わたしの名は、、、捲簾大将、サ・ゴジョウ(沙悟浄)。よかったら、沙和尚と呼んでくれ…。

ふんっ。知るかっ。

カッパの沙和尚さん。よかったらあなたも、このジェイドラゴンとゴクウと共に、あたしの共にならない?長旅、このコザルと一緒じゃなかなか話も盛り上がらなくって…。

な、なんだと!この小娘!!ヒデーじゃねーか!

何よっ!ランボウゴクウっ。問答無用でボウリョクなんて、よくないわ。わるい子にはこうしてやるっ。観自在菩薩観自在菩薩…

イ、イテテテテテテ!や、やめてくれーーー!


ププっ。



第三回 猪八戒、策を弄する の巻


(おいおいおい、悟浄のやつ、一撃で打ち倒されるなんて、情けないなあ。いや、それともあのサルがすごいのか?いったい何者だ?

そういえば、5万年ほど前に、ブッダに刃向って岩の中に閉じ込められたとてつもない力を持ったサルのバケモノがいるって、噂に聞いたことがあるぞ。まさか、やつが閉じ込められてたのがこの流刑星だったのか?宇宙も狭いなあ…。

とにかく、こうしてはいられない。沙悟浄のやつを助けないと…。

よし、あの小娘、あいつをさらってしまおうっ。)




フワッ


え?え?キャ、キャーー!ゴクウ、ちょっと何これっ!?身体が持ち上げられるーー。助けてー。


お!小娘!オニキス、どうしたっ?

ん?あれは誰だっ?カッパの仲間か?


ふっふっふ。ぼくは…

ぼくは…



キャー!助けてえ!ブ、ブタよ!!


(おおっ!やつが来ていたとはまったく気が付かなかった。さては深海、いや、深砂の中を潜って来たな。(しかし深沙といえばわたしの二つ名、ややこしい…)

いや、そんなことより、、これはチャンス。ハッカイとゴクウが戦ってるところを狙えば、いま一度…)



ぼ、ぼくは、ブタじゃないぞっ!!

だって、だって、なんだかデップリしてるじゃないのヨー!


こ、これは潜水服だよっ、この小娘め!なんてシツレイな女なんだ。ぼくは、ぼくは、おこったぞーーーー。


よしっ、いまだっ!復活!

おわっ、カ、カッパが息を吹き返したぞっ。てめー、なかまになるって、だましたな!


カッパじゃないと言ってるだろーがっ、このサルめ。それもそもそも、わたしは、なかまになるなど承知した覚えはないっ。なんどでも、九度でも十度でも、おまえたちを襲ってやるっ。



何をーー!
とりゃー!

うおー!


キャー!


ブヒブヒぶふふ\(^o^)/いいぞー、やれやれー!


(ぶひひ。

どうやら互角の戦いをしてるみたいだね。

正直最近、あいつナマイキでちょっとムカついてたんだよね。そうだ、ちょうどいい。あいつら二人が弱ったところで、どっちもとっちめて、ぼ、ぼくがこの星の牢名主になってみるのも、ワルくないなあ。

ぶひひ。)

(やれやれ…。

ゴクウのやつ、まわりがみえてないからこんなことになるんだ。

オニキスの供をするというからには、何をおいても彼女を護らねばならんというのに。

さて、ここはひとつ、このわたしが一肌脱ぐか…。もうしばらく、ただの馬のフリをしていたかったんだがな…)


バサッバサッバサッ

乗りなさい、オニキス。


!?ジェ、ジェイドラゴン!?あなた、助けに来てくれたの!?いえ、それよりあなた、喋れたの!?

わたしは…、いやそれよりいまは逃げよう。

う、うんっ。




うわっ、なんだこの鳥は、いや、馬はっ!?ペ、ペガサス!?

こらっ、このバカブタめっ。せっかくの人質をちゃんと見張ってないと意味ないだろうがっ。

う、うるさいぞ、カッパっ!助けたやろうとしたのに…。

だからわたしは、、、カッパでは、、、ないっ!


ハイハイハイ、あー、そうですか。でもどっちだっていいさ。おまえ、こんどこそおしまいだからなっ。ホラ、さ・よ・う・な・ら!

如意棒!

テヤッ!!


う、うわーーーー!

ほーら、おつぎはコブタちゃん、お前だぜ。このプクプク着ぶくれヤローめ。

う、う、着、着ぶくれだって気付いてるんなら、何もブタって言わなくてもいいじゃないかー!!そうだよっ!この星に堕とされて、こんなの着せられて、それで太って見えてるだけなんだよー!ウワーーン(T_T)



なんだなんだ?激昂タイプか?(笑) ま、それもどっちだっていいんだけどなっ。そーりゃっ!

来いっ、如意棒!!

アーズ!
ユー!
ウィーーーーッシュ!



う、う、うわーーー(T_T)


ぐ、、やられたか…


ソン・ゴクウ、恐るべし…。


ふんっ。めんどくせーんだよ、このザコどもめ。(いやでも正直、ちょっと焦ったけどな…。こいつら、ケッコウつえーよ。)



第四回 悟浄、八戒、旅に加わる の巻 


ううう。はい、もうしません。いやこんどはホントに。はい、わたしがわるかったです。

ぼ、ぼくももうしないよ。すみませんでした(T_T)

わかればよいのです。何事も、LOVE & PEACE。あたしは、争い事はキライなのよ。

は、はあ。

それよりブタさん、名前は?このサ・ゴジョウ、いえ沙和尚とはともだちなの?

ぼ、ぼくは天蓬元帥、チョ・ゴノウ(猪悟能)。みんなからは、猪八戒って呼ばれてるんだ。ニクやサカナなんかのナマグサを食べないからね。ホントは好きなんだけど、ずっとガマンしてきたんだ。夢に現れたフシギな人が、そうして待っていれば、ぼくの運命の女の子が顕れてぼくを導いてくれるって言ったから。

ふふふ。それってあたしのことじゃない?

ええっ!?

で、ブタヤロー。いったいぜんたいおまえはなんでこの星でオツトメしてんだ?え?おまえもキョウアク犯なのか?

ぼ、ぼくは、、、

いや、ゴクウ。こいつはな、おれと同じミルキーウェイ銀河の、それは高名な艦隊司令長官だったのさ。



へー、それがまたなんでこんなところに?

そ、それは…

こいつは仕事は優秀だったが、めっぽう女好きでな。酒に酔った勢いで、主星の衛星にあった宮殿の女王、レディ・ジョウガって女に言い寄ったのさ。そいつがバレて、軍の規律を乱したって罪で恒星系からどころか、そこの銀河から追放されちまったってわけよ。そうだったよな、ハッカイ。

う、う、う、言わなくてもいいのに。。。


おいおいおい、そのくせまたここでもオニキスをさらおうだなんて、ぜんっぜん凝りてねーじゃねーか、このブタちゃんはよお。

ブ、ブタって言うな!このサル!

何をーー!

ゴクウ、ハッカイ!やめなさいっ!

まあまあまあ、お二人さん、それにオニキスって言ったか?お嬢ちゃん。仲良くやろうじゃないか。

そうね。LOVE & PEACEよ。ハッカイにゴジョウ、あたしはこのゴクウとジェイドラゴンと一緒に、西にある、BD +20°307まで行くの。あなたたちも一緒にこない?こんな星に居るよりずっと楽しいわよ。

な、何っ!?、BD +20°307だって?

あ、あそこへ行くには、ちょうどアレを通り抜けなければいけないんじゃ…


???


ブブブーン…

おわっ、なんだ?誰か湧き出てきたぞっ!


そうだ。その二人の言うとおりだ。

なんだなんだ?誰だっ!あ!!!お、お前は…


ブッダかっ!!






第五回 悟空、更に昔を語る の巻 


おまえは…

忘れもしない…

5万年前…




まだオレさまが秒速6万キロ、つまり光速の20%でカッ飛ぶこのサマーソルト号を駆って自由自在に宇宙を駆け巡っていた頃、

クイーン・マザー・ウェストの治める星のピーチ・ネクターが満たされてるあの湖を飲み干したり、好き放題やってた頃、

おまえはオレさまの前に現れたんだよなあ、でかい図体してよお!

そんでオレさまをそのデッカい掌に捕えて、あのにくったらしい岩山の牢獄に繋いだ…。





そのツラ、忘れねーぜ!!

いきなりでちょっと驚いたが、なーに。西へ行くてまが省けたってもんだ!ブッダ、覚悟!とりゃーーー!!


…ふう。やれやれだな。


ゴ、ゴクウっ、やめなさいっ!この方は、この方はブッダさまではありませんよ!


トリャ……え?な、なに?…ハッ!


サルよ、隙だらけじゃな。ホイホイホイッと。

う、うわーーーあああ。



ふん、その程度じゃあ、ブッダさまどころかワシにも触れることすらできんわい。まだまだ修行が足らんぞ、このコザルめ。


ぐぐぐ、、、おまえ、いったい誰なんだ…




わしは、アヴァロキテーシュバラ。ボーディサットヴァのアヴァロキティーシュバラ。ちょっと長い名だから皆には観音と呼ばれておる。

う、よく見たら、ちっちゃいな。。。ブッダの小型版か?

うむ、ワシはまだ修行中の身ゆえな。それよりおぬしたち、まだこんなところにいたとは…。早く西へ迎え。事は急を要するのだぞ。

アヴァロキテーシュヴァラさま、おひさしぶり❤元気でしたか?

う、うむ。オニキス、あいかわらずじゃな。それより、西への道が閉ざされようとしておる。急ぐのだ。いや、そもそも、すべての元凶はあやつらかもしれん。ブッダさまの元への道にやつらが巣食ってしまえば、もはや手遅れとなる。やつらを倒し、あれを奪い返すのが先決か…。

やつらって?道?いったいどこの話をしてるんだ?

ゴクウよ。西だ。西へ向かい、アルデバラン星系へ行くのじゃ。いま、宇宙が冷え、プレアデスやヒヤデスの幼き星たちが成長を止めつつある。新たな星も生まれてこない。それもこれも、おうし座のアルデバラン星系に陣取った、あの、キャプテン・バイソンこと、宇宙海賊一味の仕業なのじゃ。

…おい、おうし座ってなんだ?

おっと、これは失敬。ついな、旧い者は昔の名残でそういう呼び方をしてしまうのじゃ。昔々、まだヒトが、その故郷の星を離れていなかった頃、ミルキーウェイ銀河の恒星系に留まっていた頃、そこからみえる宇宙の星々の並びをケモノやヒトの姿にみたてて名を付けた。それはみかけの姿に過ぎぬわけじゃから、外宇宙に出てみればそのようなカタチには何の意味もないのじゃが、ヒトはその名残で星々を呼ぶ。それどころか実際、遠く離れた星と星を、恒星間連絡船で結び、いくつもの恒星間同盟や銀河の帝国を築いていった時代にも、その航路やネットワークは、彼らが「星座」と呼んでいた旧き連なりを尊重していったという。

そうそう。ヒトってそういうものなのよ。



ふむ。オニキス、さすがにお主は古風じゃな。そんなナリをしていても。

おいおいおい、ちょっと待てっ。さすがにって、その言いっぷり、まさかとは思っていたがこいつ、もしかして古代種、いや、純粋種だってのか!?長命化だけしてほかは超古代のまんまだっていう!?

ゴ、ゴクウ、おまえ知らずに一緒に居たのか。。。だからわたしが、聖なる匂いがすると言ったであろう。

うん、ぼくも最初にみたときにわかったよ。いい匂いがしたし。

ゴジョウ、ハッカイっ、やかましいっ。まさかこんな辺境に、そんな種族がいるなんて思わないだろーがっ。オレさまはハナはきかねーんだよ。ふんっ。それに、古代種だかなんだかしらねーが、そんな太古の時代の星図にいまだにこだわってるなんて、ばかばかしいっ。なにが聖なる匂いだ。単なる原始人じゃねーかよっ。ブツブツ…

まあよい。それより、話を元に戻すぞ。

おうし座に一大王国タウラスを築いたキャプテン・バイソンは、いまやキング・バッファローと名乗ってネットワークを支配している。やっかいなのは、最近明らかになったのじゃが、やつがかつてある銀河にて失われた、とあるデバイスを所持しているらしいことじゃ。

それは?

もったいぶらずに言えよ、カンノンっ!

こらゴクウ!

それは、ひとあおぎすれば宇宙のうねりを引き起こし、ひとあおぎすればそれを止めることのできる、つまり、全宇宙の拡大と熱量の生成を操ることのできる、「バナナ・ファン(芭蕉扇)」だ。

熱量ですって!?それじゃあ、この宇宙冷却危機の原因は、、、

うむ、その可能性はある。ニルヴァーナ銀河ではその見解に立つものが多く、すでに何度かキャプテン・バイソンの討伐隊が送られた。しかしそのすべてが、アルデバランの近くで運航を停止、それどころかその波動すらも感じられない虚無に堕ちたのだ。


おいおいおいおい、そんなあぶねーところに行くわけねーだろが。やめたやめたっ!オレさまは西へ行くのはやめたぞっ!ブッダに仕返しする方法は、そうだな、このサマーソルト号で宇宙の外側をぐるっと回ってだな、そうすりゃやつがいるっていうBDなんたら星系にも…

いやゴクウ、それは許さぬ。おぬしにはこのオニキスと共に、アルデバランへ向かってもらうぞ。

そうよ!ゴクウ、イヤならまたそのヘッドバンドを…

うわっ!またソレかよ、このドS女めっ。わかったわかった!いきゃあいいんだろ、いきゃあ!(…それに、キャプテン・バイソン…なんか聞いたことがあるんだよな…。ひっかかるな…。)


よっし、ブッダさまに教えを請う前にってのはちょっと気になるけど、そいつが諸悪の根源なら、とっとととっちめて、そのバナナマンを取り戻して…

…おいおい、オニキス、ちゃんと聞いてたのかよ。"バナナマン"じゃなくって"バナナ・ファン"だよ…。

どっちでもいいじゃんっ!さあ、コザル、カッパ君、ブタ君、行くよっ!


サルじゃねー!
カッパでは、、ない…
ブタって言うなーーーー!



いいからっ!とにかく…

出発進行!!






あ、あれっ?

(やれやれ…いったいこの子はどうしようとしていたんだろうねえ。このわたしが亜空間飛行ができるからいいものを、、、でなきゃスピカから来たときみたいに、いったい何年かかることか。。さて。ではひとっ跳び、ひさびさに超光速で飛んでみるかな。元の姿に戻らなければよいが…)

ブブーン…
ブブーン…

な、何っ!?

く、空間が、歪む!?

ブブーン…









こうして、一行は、西の宇宙へ向かって、飛び立ったのだった。


その頃…



ふう。

キャプテン・バイソンとバナナ・ファンか。ちょーっとばかし、彼らには荷が重いかなあ。なにせゴクウもゴジョウもハッカイも、あの状態だし。ここはひとつ、手を貸してやることにするかな。。。


(つづく)