2016年1月31日日曜日

Jan 2016 MONKEY FANTASTIC! end roll -


というわけで六回に渡ってお届けしました、『Space Journey to the West』(副題 Monkey Fantastic!)。最後に、キャラクター紹介、作品の背景世界の解説、そして原作(?)である『西遊記』の世界の旅にしばしお付き合いください。


End-roll




オニキス一行
  • オニキス 
    • featuring 玄奘三蔵
    • fi?ures series 7 girls 06 Hippy Flower Girl
    • a.k.a. fg 7-06 平和を愛する少女
  • ソン・ゴクウ a.k.a. キング・メイホウ 
    • featuring 斉天大聖 孫悟空
    • 5540 Boat with Water Hoseより
    • アズ・ユー・ウィッシュ featuring 如意棒
    • サマーソルト号 featuring 觔斗雲
    • ボンデージヘッドバンド featuring 緊箍冠
  • サ・ゴジョウ 
    • featuring 捲簾大将 沙悟浄
    • 4786 ダイバーと海底の宝(special plus)
    • デモンスレイヤー featuring 降妖宝杖
  • チョ・ハッカイ a.k.a. チョ・ゴノウ 
    • featuring 天蓬元帥 猪悟能
    • 4479 深海ダイバー
    • ナインティースホー featuring 釘鈀
  • ジェイドラゴン 
    • featuring 玉龍
    • 5144 銀色のペガサスとお姫様


タウラス王国
  • ベルゼバブ
    • fi?uresカスタム(魔法使い×2ベース)
  • プロポリリス
    • fi?uresカスタム(アマゾネスベース)
  • ギュウ・マオウ a.k.a. キャプテン・バイソン a.k.a. キング・バッファロー
    • featuring 牛魔王
    • fi?uresカスタム(b8-10氷の魔法使い、)
    • バナナ・ファン featuring 芭蕉扇
      • fb 8-11 のナゾの武器
  • プリンセス・アイアン
    • featuring 鉄扇公主
    • fi?uresカスタム(クレオパトラベース)
  • カッパー&ブロンズ
    • fi?ures series 8 girls 04 ベリーダンサー
  • プリンセス・ジェイド
    • featuring 玉面公主
    • fi?uresカスタム
  • プリンス・クリムゾン=カーフ
    • featuring 紅孩児
    • fi?uresカスタム(b8-11スペースエージェントベース)
    • ストラトファイアーキャスター 
      • fb 8-9 宇宙の戦士のナゾの武器

  • サイ=カーチス a.k.a. モノホーン
    • featuring 獨角兕大王
    • fi?ures series 2 boys 02 スペースエイリアン
    • 3282 スペースエイリアンクルーザー
    • 4784 ロックミュージシャン(special plus)



ホクト自治領
  • グランド・オールド・マスター
    • featuring 太上老君
    • fi?ures series 5 boys 06 宇宙飛行士
  • ジロー
    • featuring 顕聖二郎真君
    • fi?guresカスタム(fb 8-9 宇宙の戦士ベース)
    • インターセプター 
      • featuring 吠天犬
      • 5101 マンモスハンターとテントの狼犬
  • ナタ a.k.a. ナタクン 
    • featuring 哪吒太子
    • 3095 ダークフライヤー
      • 乾坤圏&火尖槍(左右の銃)、混天綾、風火輪
  • ゴールデンサックス 
    • featuring 金角大王
    • 4604 ロボットスケーター(special)
  • シルバーフルート
    • featuring 銀角大王
    • 4528 ロボットスケーター(special)



オニキス一行 完全版!?
  • ソン・ゴクウ完全体(斉天大聖モード)
    • 5296 トップエージェントとバランスレーサー(special plus)
  • サ・ゴジョウ完全体(捲簾大将モード)
    • 4881 特別捜査官
  • チョ・ハッカイ完全体(天蓬元帥モード)
    • 4478 海底探検ポッド
  • ジェイドラゴン完全体(玉龍太子モード)
    • fi?ures series 4 boys 12 ブルーエイリアン
  • オニキス保護状態(スーツアーマーバージョン)
    • 5367 特殊消防隊


おひつじ座寺院の聖人たち
  • アヴァロキテーシュヴァラ
    • featuring 観世音菩薩
    • Robiフィギュア
  • マイトレーヤ
    • featuring 弥勒菩薩
    • fi?ures series 9 boys 11 テニスプレーヤー
  • アカシャガルヴァ
    • featuring 虚空蔵菩薩
    • 出演なし
  • マンジュシュリー
    • featuring 文殊菩薩
    • 出演なし
  • ゴータマ・ブッダ(回想シーン)
    • featuring お釈迦さま
    • Robi


あとがき

西遊記。言わずと知れた、大陸の古典にして、世界最古の空想伝奇小説のひとつ。仏教、道教の入り混じった神仙、菩薩、妖怪たちの大活劇は、時代を変え、カタチを変え、さまざまな形でアジアのわたしたちに楽しまれてきました。ドラマ、人形劇、そしてマンガ。

誰もが知る『ドラゴンボール』は、その旅のはじまりはまさに西遊記をイメージされたものでしたし、主人公孫悟空のサイヤ人としての本名カカロットは、キャロットであると同時に、西遊記の孫悟空が誕生した花果山の名前から来ている…ということに恥ずかしながらgeneはこの演目を書いていてようやく気が付きました^_^; 演目中、ゴクウの産まれた惑星の名前をこの花果山から採ろうと、惑星カ=カって書いてはじめて、おお!!と^_^;

西遊記の背景


いきなり話が逸れてしまいましたが、西遊記の成立や、その背景世界については、たとえばWikipediaではズバリ、"西遊記の成立史"という秀逸な記事が書かれており、また、昨年、年初の演目を創りながらポチっとした『中国のテナガザル』の著者でもあり、西遊記の和訳で知られる、中野美代子さんの『孫悟空の誕生 - サルの民話学と「西遊記」』ほか幾つかの評論で楽しむことができます。

西遊記の背景に関してgeneが好きな話題は、なぜ三蔵にサルのお供が?というくだり。旧い壁画に描かれた三蔵がサルを連れていたり、それが「猿」ではなくて「猴」だということから大陸において猿と猴が区別されていたことを知ったり、悟空が天界でもらった役職である匹馬温(ひっぱおん)から、南方熊楠『河童駒引考』と話がつながったり。そう、古今、サルといえば馬。馬と言えばサルなのです。そしていまだにひっかかってならない、ヒッパオンという音-もちろん大陸ではいまはこの発音ではありませんが-と、ラテン語における馬、つまり、ヒッポ/ヒッパとの関係は…。そして、ヒッパオンとグッパオンの関係は!?(…それはあるわけない…(-_-メ))

西遊記は、大陸の神秘思想や宗教思想のみならず、さまざまな民俗学、歴史学、人類学的な知識や発見への入り口になる、壮大な虚構世界です。

西域冒険譚として(1)

実は最初に、申年になったら西遊記を演ろう!と思い立った時には、その演目はスペースオペラではなくて西域の歴史物になる予定でした。というのも。。。

唐の時代、玄奘が西へと旅立ったころには、西域は突厥と呼ばれた遊牧騎馬民族、すなわち、Göktürks、つまりテュルクが支配する地でした。唐はその末期、突厥をはじめ、吐蕃、回紇、契丹などさまざまな西方や北方の異民族の侵入に悩まされますが、その中でも強大な力を誇ったのがこの突厥。西は唐から、東はペルシアや東ヨーロッパに至るまでのユーラシア全域にその名を知られた民族でした。やがて唐は滅び、五代十国と呼ばれる乱世を経て、宋が中原を統一しますが、この宋は、突厥の一派、沙陀部と呼ばれる一派の軍閥によって建てられたとされています。雅楽で沙陀調という韻律がありますが、関係あるのでしょうか?ともあれ、玄奘はその旅の仔細を『大唐西域記』という書に書き残すわけですが、この中には歴訪110か国、伝聞42か国の情報が書き連ねられています。まさにシルクロード地誌!どこで読んだのか忘れてしまいましたが、玄奘は旅の途中、突厥の首領、達頭可汗(タルドゥ・カガン)の幕屋を訪れていたそうです。

荒野の中、星空の下、遊牧民のテントを訪れ、おそらくはクミスだのヒツジの内臓だのをふるまわれ、いやわたしは僧籍に在る者ですから飲めません食べられません、何、おぬしは聖人か、なんてやりとりをしながら、おそらくこの突厥の首領は、各地の情勢を知るためにも、唐の内情を知るためにも、玄奘からいろいろな話を聞き出したことでしょう。やがて、可汗は玄奘を護衛するための兵を付けてやり、玄奘は再び西への旅を開始したとか。記憶が正しければ、、、ですが。

そんな世界に思いを馳せるとき、いつもgeneが考えるのは、この突厥によってつけられた護衛が、悟空たち一行のモデルではないかということです。一般的には、サルの民話や、深沙神がモデルとされていますが、なにやらこの一行、みな西域の香りがしっかりと漂っているのです。

たとえば沙悟浄。深沙神。砂漠の世界を支配する強大な首領を連想させてなりません。首には髑髏、象の革で作った袴。武器を携え、沙の河に住まう。そしてその名は、深い砂の神。いつしかgeneの中では、達頭可汗こそが深沙神、深沙大将になっていました。ま、実際には突厥は砂漠地帯ではなくて草原地帯にいるわけですから、仮に沙悟浄がどこぞの武将あるいは兵士だとしても、突厥ではなくて、タリム盆地、タクラマカン砂漠のどこかのオアシス都市国家かもしれませんし、象の革の袴というのはそれこそ、インドの印象です。オアシス都市の中でも有名なクチャ。そこの王族として育ち仏典の漢訳を行ったことで知られる(すなわち初代三蔵たる)鳩摩羅什/クマラジーヴァは、クチャの王妹とインドはカシミールの貴族とのあいだに産まれた子でした。

そして孫悟空。石から産まれた孫悟空。当時、西域の諸族はその産まれた都市国家の名を姓に関していました。たとえば有名なところでは安禄山や史思明。安禄山は母は突厥の巫女、父はソグド人であった男で、安とはブハラ国を指します。(ただしこれは安禄山の母の再婚相手の姓ですが。)史はキシュ国。同様に、西域オアシス都市国家の中で有力だったものに、タシュケントと呼ばれる国がありました。漢字では、石国と表記します。石から産まれたとはこのことではないのか?孫悟空は石氏と名乗る兵士だったのではないか?

…などなど、"大食"と呼ばれた人々(これ、gene的には、通説の言う例の巡礼者の尊称ではなくてタージークが語源になっているのではないかと思うのですが…)を彷彿とさせる猪八戒も含め、一行はみな、西域の諸民族の思い出が、長い年月を経てこうした物語に昇華されていったのではないかと思う訳です。

西域冒険譚として(2)


ところで石という姓と言えば、古くは羯族の石勒、石虎の親子を思い出します。そう、以前ここで『P - ポリスストーリー - 最後の警官』の悪役として登場した石虎(シーフー)と同姓同名の古代人です。この羯族は、シベリアの少数民族であるKet族の旧い姿ではないかとする説がありますが、Ketといえば、デネ=イェニセイ語族の話題で何度も紹介している、あの民族です。言語学者によって、イェニセイ語族のKet語とナ=デネ語族のNavajo語のわずかな語彙が比較されていますが、そこで、「石」という語が対象となっているのは非常に興味深いところです。どちらも「t」の音ではじまり、「s」の音を持ちます。一方、イェニセイ語族の幾つかの言語の語彙の研究では、「石」について、t/sからなる語のほかに、たとえば比較的南で話されていた絶滅言語のPumpokol語ではkit、同じくArin語ではkesとされていたそうです。geneは、羯族の首領の石氏というのは、ここから来ていると考えています。現在のKet族に近い関係にある部族だった羯族。おそらくKetというのは彼らの言葉でヒトと石と両方を表す意味だったのでしょう。やがて時代は下り、オアシス都市として件のタシュケントという街が建設されます。タシュケントはテュルク語で「石の街」という意味だそうです。この名が、イェニセイ語では「タシュ」と「ケト」つまり、「石」と「石」という意味なのははたして偶然なのでしょうか?

石の街たるタシュケントで産まれた少年。その姓は石。しかし彼は単にタシュケントの産まれだっただけではなく、旧い一族である羯族の血をひいていた。街で高い地位にいたわけではなく、馬番をしたり、乱暴狼藉者として官憲に追い回される立場だった、いわばストリートキッズ同然の彼。おそらくは両親に育てられたわけではないでしょう。やがて彼は、旅の曲芸師や呪術師の一団について各地を放浪するようになり、さまざまな技を身に着けます。そう、司馬遼太郎『ペルシアの幻術師』よろしく、ペルシアからソグド人を経て伝えられた、ゾロアスター教/祆教すなわち拝火教の呪術は、さまざまな秘薬や炎をもちいて、旅人の眼を愉しませり、同時に、戦闘の技術としてももちいられた。いわば、砂漠の忍者、石氏の少年。

これが、geneの考える孫悟空像でした。

geneの所蔵するプレモは、モンゴル兵士やそのカスタムなど、中世ユーラシア大陸の民族を表現するのにはぴったりなのが何体かあります。最近はfi?ures series 9の通称チンギス=ハンを入手(gene的にはすでにテムジンはいましたので、この方はアグダと名付けて契丹族の首領としています。ちゃんと皮嚢壺を持たせてあるヨ)。これらを使って、西域の歴史物をやったらおもしろいだろうな…というのが当初の構想でした。

スペースオペラとして


しかし、昨年、未年の演目をギリシア神話とし、その流れからギリシア神話のスペースオペラ的解釈を創ったころから、少しずつ構想は変化。そして2015年には、fi?uresシリーズで同じ個体が何体も集まってしまったり^_^;、狙いの組み換えをした結果あまったパーツでなんだかビザールなキャラを何体も組み上げてしまったり^_^;、ということが続き、これらが次々と、スペース西遊記のキャラクターとしてイメージ付けされていきました。

演目で敵役として登場したキャラは、ラスボスであるモノホーンを除きすべてがfi?uresベースです。カッパーとブロンズの姉妹はカスタムしておらず、ヘソピのありなしで区別しているだけですが、ほかはカスタム。

端役のベルゼバブ、プロポリリスはもともとは妖精界の悪役とする予定で作った、キラワレモノな昆虫ベースの妖魔で、本来なら昨年のハロウィンに登場する予定でしたが出せなかったので、ここで半ばムリヤリに出演^_^;もともとの西遊記に出てきていないキャラです。西遊記では、有名な牛魔王一家のほかに多数の妖怪が登場して旅の邪魔をするのですが、その代表役として、オリジナルモンスターに登場させました。

fi?ures カスタムファミリー


キング・バッファロー、プリンセス・アイアン、プリンセス・ジェイド、そしてプリンス・クリムゾン=カーフは宇宙海賊、しかも悪役、という設定であれこれと組み替えながら作ったあまりものfi?uresです。fb 8-10 がベースとなっているバッファローですが、顔をグラサンキャラに変え、髪を金髪にし、コアラの飼育員から持ってきたヒョウ柄テンガロンハットをかぶせたことによってもはや別人。牛魔王であるという設定とこの帽子から、”テキサスカウボーイズ”なんていうボウソウ賊の存在をひねり出しましたが、これ、ゴクウと共に牧童をやっていた、という話から匹馬温に繋げています。

またバッファローとカーフはともに帽子が二重になっていて、背が高く見えるのが特徴。ただし、カーフの帽子は両面テープで停めており^_^;武装は、バッファローが持つバナナ・ファン(芭蕉扇)が、本来、カーフのベースであるfb 8-11 スペースエージェントのもので、カーフが持っているグレネードランチャー的なパーツのあるビームライフル銃はfb 8-9 宇宙の戦士のもの。

ちなみにその宇宙の戦士のボディは、fg 8-05 老婦人のクリノリンの下の脚や、fb 8-10 の半袖ぽい腕と組み合わせて、顕聖二郎真君に。これ、もともとは、るろうに剣心の緋村剣心にしようと思っていたため、髪が赤っぽい色にしてあり、日本刀を装備。しかし、胸のカラーパーツのおかげでなんとか宇宙キャラになりました。というかもともとそのパーツが宇宙の戦士のものなので^_^;

あ、そうそう、顕聖二郎真君とその相棒(?)の哪吒太子ですが、これホントに、「封神演義」だけでなく「西遊記」にも登場するキャラなんです。というか、チウゴクではほかにもいろんな小説や演劇に登場する、超人気者。旧い時代からスターシステムを採用しているなんて、中華文明、なかなかやります。すごい!ちなみに二郎真君は、河総益巳さんの「火輪」にも登場しますね。いつもイケメンなジローでした(笑)

アイアンとジェイドは、原作においても牛魔王の第一夫人、第二夫人としてそれぞれ登場する、鉄扇公主、玉面公主なわけですが、たまたま、カスタムした結果、アイアンは鉄=くろがね=黒い日焼顔、ジェイドは色白で化粧の濃い顔になっていたため、見た目からキャラが創り出されていきました。

そして、アイアンとジェイドという金属と宝玉という名がついたため、お供の女たちも、カッパーとブロンズという金属名に。西遊記には、有名な金角と銀角の兄弟がいますので、金、銀、青銅、赤銅、鉄とさまざまな金属が登場することになり、ちょっとだけ宇宙っぽくできたかな?と。。。

ところで金角・銀角は、ゴールデンサックス、シルバーフルートという、木管楽器の名前になっています。金属名なのに木管楽器…。うーん、この矛盾がまたいいかなと^_^;ここで楽器を出した関係と、演目全般で黄色の色味をふやしたかったので、ラスボスにエレキギター型の電流系の武装(?)を持たせたり、ジェイドラゴンの戦闘形態のときに持っている如意宝珠をウェスタン・ドラゴリネットという、ドラゴンのクラリネットを縮めた名前にしたり、と、いうこといなっています。

ちなみにラスボスは、その名のために、ユニコーン扱いされていますが、民生さんとは関係なく、あのギターはどちらかというとジミヘンのものです。4784、風貌といい、Flying V愛用時代のジミヘンですよね!


完全体


実は、もともとはゴクウとゴジョウは初めからあの完全体の姿、つまりトップエージェントと特別捜査官にする予定でした。昨年、『大地の神』でティタノマキアーを演ったとき、それぞれメノイティオスとアトラスをやっていますが、アルテミスの弓で射落とされたり、地球を背負わされたり(まあこれはおいしい役と言えなくはないですが)、といいとこなしだったので、一度活躍させてみようというわけです。ただ、この二体に釣り合うもう一体を考えたのですがなかなかなく、ゆえにハッカイができないではないか!ということと、『フェンリルの宝箱』のジョナ役をやった彼の色味や身体のバランスがたいへんに、いろんな意味で、ゴクウっぽかった^_^;ので、主人公を彼にゆずって話を創り始めていきました。

結局、ハッカイの完全体を何にするかは、作品の後半まで決まりませんでした。ゆえに途中のシーンでは太上老君はゴクウとゴジョウの二人のボディしか持っていません。ハッカイは、原作において、月の女神である嫦娥との関係が描かれているため、以前に舞台裏でやった女海賊レディー・ジョウガの話に若干絡めて描いています。

その女海賊レディー・ジョウガを追いかけまわしていたダンクル・オステウス。彼と、ジェイドラゴンの完全体であるブルーエイリアンとはよく似ていますが別の個体です。ダンクル・オステウスは背中にバックパックを背負ってコードをつけていますが、ジェイドラゴン完全体はfg 4-12 のオリジナルの姿です。ここ、まあ別の物語なのでいいのですが、ダンクル・オステウスはあくまで魚類から進化した部族で、ジェイドラゴンなど海の竜族は-いわゆる海竜、首長竜、魚竜などではなく-恐竜、恐らくはドロマエオサウルス類から進化しています。緑色のエイリアンたちと同じ設定。ただしここでは、宇宙時代、遺伝子組み換え時代に入ってからダンクル・オステウス族と遺伝子交換を行ったようで、姿は青い肌のダンクル・オステウスになっているというわけです。そうそう、玉龍はホントに、馬ではなくて竜なんです。有名な東海竜王傲広と対を成す西海竜王傲閨の第三太子。これ、原作のとおりなはずです。

え?オニキスの防護服は何かと?あれは、エヴァのアスカが乗る二号機ネタです(笑)

獨角兕大王とは


ところで、青い肌のブルーエイリアンをジェイドラゴン完全体とするにはひとつ悩みがありました。それは、ラスボスにぴったりだと考えていた原作のキャラクター、獨角兕大王が、その正体が青牛であるという点です。ああ、こっちにブルーエイリアンを使うべきか。ジェイドラゴンは普通のエイリアンでいいんじゃないか?いやいやでも海中に棲む竜っぽさは青で表現したい。などなど悩んでいたところ、意外な解決が見つかりました。

そう、獨角兕大王は、そもそも青い牛ではないのではないか?ということです。

この「兕」という文字をWiktionaryで調べると、

  1. 水牛に似ている一角獣。角を盃に用いる。
  2. メスの犀。

とあります。そう、ツノのある妖怪、独角兕大王は、カブトムシ(チウゴク語で独角仙)でもなく、ユニコーンでもなく、なんと、サイなのです!

インドシナ半島に棲息していたものでしょうか。確かに、青灰色の肌、正面から見ると一本角にみえるところなど、サイの特徴をよくとらえています。もっとも、この文字が象形文字だとすると、ブロントテリウムアルシノイテリウムのようでもありますが、、、どちらもホモサピの登場よりさらにずっと前に絶滅していますので、さすがのチウゴクの人々もこれを覚えていたわけではなさそうですが。

いずれにせよ、原作の『西遊記』ではそれなりに活躍をしつつも牛魔王ほどに有名な悪役ではない独角兕ですが、ここでgeneの中で、ラスボス案、確定。ウシのキャプテン・バイソンを上回る実力者として、そして、最後のオチとして…。

この演目でもそうでしたし原作でも、彼の正体は太上老君の乗騎。実際、西遊記にはこのほかにも、観世音菩薩の乗るコウ(けもの偏に孔)、文殊菩薩の獅子、普賢菩薩の象など、聖人や仙人の乗騎が妖怪と化して敵役で登場します。独角兕はその一角を占め、かつ、道教の重要人物の乗騎であるということで、フォーカスをあてることにしました。

配役は、ブルーじゃなくってもいいやということで、宇宙のラスボス的な姿、すなわちあの方の姿にそっくりな^_^;プレモをベースに、一本角のある宇宙船(?)に載せ、カブトムシなんじゃないのか!?とあえて誤解をさそうようFlying Vを持たせました。そしてその正体が明かされるところではサイの親子が順に登場しています。これ、こどもはツノが一本なのです!そう、独角兕とは、独角児だった!?(笑)

サイは、絶滅しつつあります。獲らないように。ツノを欲しがらないように。


最後に-演目の世界観-


さて、あとがきもそろそろおしまいです。最後にこの演目の背景世界、その荒唐無稽、白髪三千丈的な設定をご紹介しておしまいにします。

宇宙。それも太陽系どころか銀河系も超えた、超大宇宙が舞台となっているこの演目。いったいぜんたい、まだ太陽系内の惑星探査を行っている段階のホモサピがそんな遠くまで進出するなんてどのくらい未来なんだ!?とgene自身よくわかりません^_^;

月へ、太陽系の惑星へ、そして新たに発見された(?)新・第九惑星を超えて外宇宙へ。そして銀河系すなわち、The Galaxy/The Milky Wayを越え、局部銀河群をも越え、おとめ座超銀河団をも越え…

って、そんな先まで行くことがホントウにあるのかどうかわかりません。その前に地球や太陽系が滅ぶかもしれないし、一説には宇宙は銀河同士が引き合う速度よりも速い速度で膨張をはじめたそうでそうなると遠くの銀河には行くどころか観測すらもできなくなってしまうのですから。

ともあれ、ここでは行ってます。そしてホモサピは、正確な意味ではもう、いない。そう、人類はさまざまな種族-動物、植物、そして鉱物まで-と遺伝子レベルで融合し、金属生命体として、あるいは両棲生命体としてなど、さまざまな進化を遂げ、そして、異常に長命化しています。その寿命は種族によって異なりますが、ゴクウたちはなんと、数万年から数十万年生きるようです!

平和を愛するお師匠さんことオニキスは、その名は鉱物ですが、純粋種と呼ばれる、初期人類の形質をほぼそのまま保った珍しい種族。長命化だけはしているようですが、悟空たちほどではありません。恐らく道教の仙丹の力とか?

そんな長命な亜人類が進出した宇宙では、すでに初期人類のゆりかごであった地球のこと、太陽のこと、銀河のことは忘れられ、ほんとうにあったのかどうか誰も知らないほどの伝説として語られています。

ただ、その痕跡は、現在の宇宙の勢力図の中にある。そう、宇宙の国家(のような何か)は、地球からみえていた星座になぞらえてネットワークを組み、広大な宇宙に網の目のように拡がっているのです。そしてそこには、タオと呼ばれる一派と、西の聖人たちの寺院とが並立しており、一部、それ以外にも地球時代に由来すると思われる宗教的な何かが存在しています。


…と、まあ、西遊記ですから道教仏教の話はともかく、実際に外宇宙に出た時代になったらもはや星座なんて意味をなさなくなりますし、地球からみえる星座の中には途方もなく遠い星や銀河が混じっていてとてもじゃないが到達できないんでしょうが…。でもじゃあ地名をどうあらわすんだい!ってことでわかりやすく、星座ベースでいきました。昨年の星の演目が惑星たちだったので、ことしは星座たちってことで(笑)

登場する星座はオリオン座、おうし座、おおいぬ座、こいぬ座、おおぐま座と北斗七星、おひつじ座など、主に北半球の冬の星座です。一部オニキスの出身地おとめ座や、ナタクンの修行の地さそり座(ナタクンに使ったプレモにサソリの紋章が付いてることと、地球を挟んでオリオン座と反対側だから遠くであることを表現)など、冬にはみえない星座も話題に出しました。



さて、冬はもうあとひと月ほど。この1月は、日月火水木金土が同時に観測できる朝があったり、木星と月の父子ランデブーが観えたり、金星が満ちたり欠けたりがはっきり肉眼でも見えたり、満月の週が好天だったり、惑星観測に最適な一ヶ月でしたが、オリオン座やおうし座などはそろそろ、早く昇って早く沈む、ということで夜更かし型の人には観測しづらくなってきました。でもその分、夜道を歩いている時間に、頭上や東の空に浮かぶ姿を気軽に観えることでしょう。

宇宙の西方浄土はどこにあるのか。

弥勒の修業は完結するのか。

ではみなさん、ごキゲンよう\(^o^)/