2015年2月7日土曜日

Feb 2015 - p3/p5 - 

新しきオリンポスの神々は、旧きティターンズに代わってこの世界を統べることとなった。それぞれに魅力あふれる十二の神々。彼らはまた、とてもニンゲンくさい愛憎劇を繰り広げた、愉快な神々でもあった。


第三章 オリンポス12神




主神ゼウス。天空を司り、キュクロープスの鍛えた雷霆を使い力で世界を統べる神々の王。

…と同時に、あれこれと姿を変えては女神、美女、獣たちとのあいだにこどもをつくりまくる浮気者。ゆえに多数の神々のほか、英雄ペルセウスヘラクレスなどの父。恐らくその姿は、毎年星座のあいだを駆け巡る輝ける太陽系第五惑星を表したものなのでしょう。



女王神ヘラ。貞淑と礼節の女神たるヘラ。しかし、浮気性のダンナに対しては厳しく、その浮気相手にも容赦しない激烈な女でもあったヘラ。

クマに変えられたカリストほか、ヘラの怒りに触れて悲劇の主人公となった美女は数知れず。

あーた!また新しい女のところに行ってるの!許せない!!


ゼウスの秘蔵っ子、アテナ。ヘラの力を借りずゼウスひとりで産み出したということでまたもやヘラの怒りを買ってしまったといういわくつきの優等生。戦いの女神。知略と武勇の女神。

※一説には、オーケアニデス姉妹のひとりたるメティスとのあいだの娘とも言われます。ゼウスにからし入りのワインをくれたあの女性です。あの後、ゼウスの最初の妻となったとか。うーん、たぶんそっちがホントだな。なんてったって、ゼウスだから^_^;

つまりゼウスは、メティス、テミス、ムネーモシュネーと、ティターン神族の三人の女を妻にしているんですねー。





太陽神アポロンと月神アルテミスは兄妹。

ティターンズの一柱たるコイオスポイベーの成した娘レートーが、ゼウスとのあいだに産んだ子。

※あ、ということは前回、ティタノマキアーではおじいさんのコイオス、おばあさんのポイベーとは敵味方だったんですね(T_T)


当然、この二人の誕生にもヘラは大反対。あれやこれやの手を使ってその出生をジャマしますが、レートーは様々な神々に護られ(ここ諸説あり)、なんとか無事に兄妹を産みます。実際には産まれた順で言えば、姉弟というのが正しいのかも?



太陽神と月の女神として共に天空を守護した二人。しかし悲劇もまた。アルテミスが愛したギリシア随一の狩人オリオンは、アポロンのイジワルによって、あろうことかアルテミス自身によって射コロされてしまったといいます。

懐かしのオリオン☆彡


オリンポスでも一、二を争う美女は、美と愛の女神アフロディーテ。つまりヴィーナスです。両親はなく、原初の神であるウラノスの切り落とされたアレが海に捨てられたときに出来た泡から産まれました。うーん、、、ビミョウ~ つまり最初のホムンクルスか!? いや、それとも古代のセクサロイドか!?いやいやいや…。


美と愛の女神の名は伊達ではなく、数々の男神と浮名を流します。


元祖モテキャラ。

ピュアゆえに男を狂わすヤバい女。



ゼウスの取り持ちによりアフロディーテの夫となったのは鍛冶師の神ヘパイストス


炎と火山を司る火の神です。


この方、ゼウスとヘラとのあいだの子なのですが、イマイチパッとしなかったのか、ヘラはこのヘパイストスがアテナに見劣りするということでアテナを嫌ったそうです。うーん、フクザツな家庭(笑)


そして、パッとしないヘパイストスには次なる悲劇も。なんと、妻であるはずのアフロディーテは、神々の中でもイケメンで知られた戦の神アレスと恋をしてしまうのです!ちなみにアレスもまたゼウスとヘラの子、つまりダンナの同母弟。。。

う、浮気妻!!いえいえそうではなく女たちが自由を謳歌していた時代と言うべきでしょう。


アレスは、後にローマの軍神マルスと同一視される戦神。


同じ軍神のアテナが戦に勝つための知略と武勇を司るのに対し、戦神アレスは戦場における狂乱や暴力を象徴する存在で、その乱暴さゆえにオリンポスの神々からもギリシアの人々からもイマイチ好かれなかったとか。



彼の友達は、(戦場におけるシ者の増加が冥府の住人を殖やすからという理由で)冥王ハーデスだけだったとも。




そんな彼も、みための美しさゆえに、女にはモテまくりました。特に、美と愛の女神アフロディーテには!

うーん、ヘパイストス、かわいそうに(T_T)


※トンテンカンテン、金属工作大好きな技術系文化人アキバ君ことヘパイストス。スポーツ万能、ワルな魅力、乱暴だけど女にモテる裏番長的なアレス。そして、そのあいだで揺れる、いやしたたかに生きる、アフロディーテ。ここ、NerdJock、そしてQueen Beeをみているかのようです。アメリカンハイスクール、その源流は古代ギリシアにあったのか?アメリカの民主主義の空想的源流がアテナイであるように!?フシギだ!!(あ、でもどっちかというとJockなのはアポロンで、アレスは不良だからちょっと違うのか?)



神々の伝令を務める俊足君の名はヘルメス。翼の生えた靴を履いていた?

俊足なだけでなく計略にも長けた、つまり脚も頭も回転の速いヤツ。牧畜、盗人、賭博、商人、交易、交通、道路、市場、競技、体育などの守護神としても知られる、Wizardry!でいえばThief的な存在?後にマーキュリーの名で知られ、太陽系第一惑星にあてられました。トラック一周、一番速いぞ!

(ちなみにDQTことDrone In Quicksilverも、水銀すなわちMercury!)



そしてもちろん、クロノスとレアーから産まれた六人の神々からはゼウスとヘラだけでなく、ポセイドン、デメテル、ヘスティアーもオリンポスの12神に数えられました。



もっとも、竈の女神ヘスティアーは、甥である酒の神ディオニュソスが12神に加わりたいのを知ってみずから引退したとも言われます。

「わしの役目はここまでじゃ。」

ご飯のあとはお酒です♪


ポセイドン。海の神。

オーケアノステティス テーテュースに代わって大海原を治めることとなったのは、ゼウスと並ぶ大神で、元はクレタ島の神だったとも言われる海神ポセイドン。


※ティタノマキアーでは、旧き海の神オーケアノステティス テーテュース、及びその娘たちオーケアニデスメティスほか)が早くからオリンポス側についていたこともあり、海戦がなかったのであまり活躍しませんでした。。ま、海から三叉戟"Tridents"を投げて戦ったってことで。。。


海と馬の神。


そして大地の女神、デメテル


パッとみは地味ですが実はアフロディーテにも負けず劣らぬモテキャラ。弟であるゼウスとポセイドンの両方から求婚されます。デメテルはこれを断るものの、なんだかんだで結局、ゼウスとポセイドンそれぞれの子を産むこととなりました。


ゼウスとのあいだにはペルセポネ





後の冥王ハーデスの妻として冥界の女王となる女の子。


ポセイドンとのあいだには、、、

…馬。



うーむ。なんともフクザツな、オリンポス一族です(笑)


始祖神ウラノスの妻であったガイア、巨神クロノスの妻であったレアー、そして主神ゼウスと海神ポセイドンに愛されたデメテル。祖母、母、娘と続く大地の女神たち。世界最初のミトコンドリア。そう、デメテルは大地母神の系譜を継ぐ、神々の女王、大女神の三代目だったのでしょう。


キー!正妻はわたしなのに!(by ヘラ)



追記:

なお、ポセイドンの妻、アムピトリーテーは12神ではありませんが、半神半魚の息子トリトンを産んだことや、カシオペア、アンドロメダ、そしてペルセウスの神話でもよく知られた女神です。

※カシオペアをこらしめようとした海の女神たちネーレーイス(ネレイデス)の一人がアムピトリーテー。つまり"からしワイン"のメティス姉妹姪ですね。あ、カシオペアの神話ではアムピトリーテーの個人名は出てこないか…失礼…


あ、ここにも馬…海馬


13の神々
※ヘスティアーかディオニッソスか
どちらかをお選びください(笑)





さて。ここでひとり、行方不明の神に気が付きます。


ハーデスは?


そう。クロノスの六人の子のうち、ハーデスはオリンポス12神に数えられることはありませんでした。

ティタノマキアーが終結したのち、クロノスの三人の息子たちは世界の支配権を三つにわけます。ゼウスは天空を、ポセイドンは海原を、そしてハーデスはシ者の国である冥府を。

異形の世界であると考えられた、地の底の冥界を統べる王ハーデス。

やがて、ゼウスとデメテルの娘であるペルセポネとともに冥府に君臨するわけですが、地下世界の王と女王の二人は、オリンポス12神に数えられることはありませんでした。






…さみしい…。







さみしいですよね。

そこでここでは、このハーデスとペルセポネの物語について、上演してみます。しかも、通常のギリシア神話において語り継がれる二人のなれそめの話と、それとは異なる解釈、異伝ギリシア神話としての解釈と、二つの物語をお届けします。



…っと、その前に。忘れてはならない二人を。

ティターンズのうち、後の世まで名を遺すことになった二人は、共にイーアペトスの創造物。


まずアトラス


ティタノマキアーでティターンズの軍勢の先頭に立って奮戦したアトラスは、その罪を問われ、ゼウスから、世界をその双肩に背負うという過酷な罰を与えられます。


この惑星を両肩に背負った巨神アトラス。

地図のことをatlasと呼ぶのはここから来ています。


ちなみにここはアトラス山脈/Atlas Mountains。






次いでプロメテウス

弟のエピメテウスと違って先見の明のあるプロメテウスは、ティタノマキアーでは早々にオリンポス側へと寝返り、ゼウスたちに歓迎されました。

しかし結局、プロメテウスはゼウスに敵対します。

それは、有名な「プロメテウスの火」をめぐって。


彼は、原初の人類に火と智慧とをもたらします。しかし、そのことはゼウスのお気に召しません。

ゼウスに敵対するものと認定されたプロメテウスは、いきたままハゲワシに臓物をつつかれるというなんともヒドい刑罰を受けます。



しかも、わるいことにプロメテウスは不シでした。こうして、永劫の苦しみを受けることになったプロメテウス。人類の文明は、彼の苦難の上に成り立っているのです。


※この神話、ペルシア方面、ゾロアスター教の世界との接点を感じます。火を崇拝する拝火教。そこでの葬送儀礼は、鳥葬そして風葬。高いやぐらの上に放置され、鳥につつかれている遺体を見たギリシアの人々は、風習の違いに驚き、きっとあれは刑罰なんじゃないかと思ったのでは?生きたまま、鳥につつかれる刑罰。その罪状は、人々に炎をもたらしたこと。なーんて神話はそこから出たのでは?とすると、実はこの逸話は結構後になってからの付け加えかもしれませんね。





ちなみに弟のエピメテウスは、何事もやってしまった後に後悔するタイプのヘタレ。。彼にもまた、有名な神話が付いて回ります。

プロメテウスによって火と文明をもたらされた人類を警戒したゼウス。ゼウスは、人類に苦難をもたらすため、ひとつの災厄を贈ります。彼は、息子である鍛冶師の神ヘパイストスに命じてひとりの美女を創造すると、ひとつの箱を持たせてエピメテウスの元に贈りました。

そうです、かの有名な「パンドラの箱」です。

プロメテウスはこれを罠だと看破し、弟に警告を発しましたがエピメテウスは聞き入れず、美女パンドラを妻に迎えます。

やがて、知られる通り、パンドラはこの箱を開け、人類の世界に災厄が解き放たれたのでした。




では、ティターンズの末路はこのあたりにして次回は、ハーデスとペルセポネの神話、二つ、ゆっくりとお楽しみください。