2015年6月12日金曜日

Jun 2015 - Chapter 1 


やってきました、雨季!じめっとした季節、そして突然のスコール。さわやかだった5月も去り、いよいよ雨季の到来です。そんな季節にひとつ、「菌」の話でもいかがでしょう。あなたの好きな菌は、キノコ?カビ?それとも酵母?

『PBC 地球伝説 - ちいさなちいさないきもの』 

ようこそ、プレモの語る、菌と発酵の世界へ!




第一部 菌と発酵の世界へ




やあ皆さん、こんにちは!『PBC Pax Broadcasting Company 地球伝説』5か月ぶりですね。ディレクター兼ナレーター兼カメラマンとして奔走する、わたくし、崔観宇です。覚えてますか!?

6月。わたし先日、友人のDJボンジョルノこと舜安南クンの武道館公演を観るために、お隣のニッポンを訪れたんですが、突然のスコールにびっくり。シンガポールかっ!って突っ込みたくなるくらい。そう、あちらももう、梅雨の季節ですね。梅は2月3月なのに、なぜいま梅雨?Why Japanese~?って言いたくなりますが、そう、梅の実のなる季節なんですねえ。あー、梅酒、飲みたい!

ここの季節になるとニッポンで、いや東アジアの多くの地域で、カビたちの活動が活発になりますね。防カビ剤の宣伝をやたら眼にするようになるものです(笑)

おおっと、あれは、カビではなくて、キノコベニテングタケの子実体、いやその妖精ですね!

そう、梅雨の季節におなじみのあのカビも、このキノコも、広くは菌類と称される、仲間。

大まかに言って、子実体がヒトの肉眼で見えるくらい大きいものをキノコ、そうでないものをカビって呼んでいますが、実はキノコカビ同じ「目」に属してたりする例もあり、まあ、便宜上の区分に過ぎません。そう、キノコとカビは系統分類学上の区別ではないんですね。


キノコといえば、毒キノコもあるにはありますが、食用や薬用などで人々に愛される存在。

それに比べてカビというのは、実際にはいろんなところで役立っているにも関わらず、とにかく闘う相手、防ぐ相手、どうにもキラワレモノという印象が強い気がします。

それは創作の世界でも。弐瓶勉さんの作品、『BIOMEGA』における逆相写像重合体と複物主、そして『シドニアの騎士』における奇居子(ガウナ)も、いずれもカビのイメージが色濃く表現されているように思いますが、どちらもやっかいな存在ですね。

しかし、そう、キノコだけでなく、カビも含めて、菌類と細菌は、人類の生活、歴史、そして文明においてかかせない役割を果たしてきました。

きょうはそんな菌のとヒトの長い長い歴史を、みなさんと共に追いかけてみたいと思います!

キーワードは…

…そう、発酵



みなさんは、発酵というと何を思い浮かべますか??

あ、熱い季節なだけに、ビールですかね!


それとも、ワイン

カンパーイ!

by 泪こと宗像タキリ

by ローマ皇帝
 あるい神王ジュピター

by 海寇帝 王直

ワインとチーズ

フランスの、いやヨーロッパの宝ですね。

by 皇帝ボナパルト



それとも、、、

イヌイットの、、、

アレ、、、なんて人も?


※ホントはキビヤックはこういう海鳥でなく、ウミスズメ科の海鳥で作ります。

また、キビヤックを作る文化はグリーンランドイヌイットのものであり、彼らは通称、カラーリットとも呼ばれています。




そう、なんとなく発酵とかカビとかっていうと、温帯あるいは亜熱帯を思い浮かべがちですが、そんなことはなく、極地の方にも著名な発酵文化があります。

おっと、こっちはスカンディナヴィアですね。

スウェーデンの、、、

シュールストレミング

母上、、、

この缶詰

開けていい?

ダメっ!!
ここじゃダメよっ!!
開けるなら、、
 ノルウェーで開けなさい!


おお、オーロフ

大きくなったな。

父は、エイリークは、

嬉しいぞ(T_T)


by オールド・スウェディッシュ・ロイヤルファミリー エイリーク・ザ・ビクトリアス、シグリ(シグリッド)、そしてオーロフ・シェートコヌング


みなさん、マニアックですね~。ニオイには強いほうですか?

この話題ですと、ボクの国、韓国では、全羅南道木浦ホンオフェが有名ですし、お隣のニッポンには、納豆くさや、そして鮒寿司、なんかもありますね~。

特に鮒寿司なんかは、ニッポンの歴史を変えた食べ物だ!ってボクは思うんです。

これ、現在の滋賀県、近江国の名産品なんですが、この地域を領していた戦国武将明智光秀が、主君の織田信長から盟友徳川家康の接待役を仰せつかった際、饗応の席に出した魚が腐っていると因縁をつけられたことが、後の光秀による謀叛に繋がった、って話を聞いたことがありませんか?これ、実は、魚が腐っていたのではなくて、光秀自慢の地元料理、鮒寿司だったのではないか、と考える人もいるのです。

坂本を領して以来、献上された鮒寿司を食べてこれウメー!!ってハマってしまった明智光秀。ぜひとも家康公にも親方さまにも食べていただこうと宴の席に出したところ、尾張・三河の出身だった信長や家康ははじめて出遭ったこの強烈な発酵食品を食えず、くせー!これ腐ってるヨ!!(>_<) おい、キンカ頭、腐った魚を出すとは何事か!と光秀は大目玉。。。ああ、せっかく!貴重な高級品、しかも、これ、食べてみてよ!!クセになるよ!的な思いでウキウキしながら出したのに、かえってきたのは、クセーよ!の言葉…(T_T) 僕は先斗町のお店でいただいたことがあるのですが、確かに最初は頼んでシッパイした!って思ったものの、ひときれ食べ終える頃にははまってしまい、ついにおかわりを頼むことになるほど、おいしかったのですが…。

ともあれ、この仕打ちに意気消沈した光秀は鬱的な状態になり、最終的には主君信長を討つという暴挙に出た、という解釈ができるわけです。長らく京で活躍し、宮廷セレブたちとも付き合いがあったと言われる光秀君だけに、きっとその心の中には、鮒寿司の旨さも理解できないようなあんな田舎者たちに都を任せてなるものか!ってな想いもあったのでは、と想像します。

鮒寿司がなかったら、信長は天下を統一していたか!?秀吉(キライっ!)も、家康も、頂点に登ることはなかったか!?いえいえ、歴史にもしもは禁物ですね。

え?なんでそんなにニッポンの歴史に詳しいかって?ボク、『朱蒙』『太王四神記』『大祚榮だけじゃなく、ニッポンの大河ドラマも大好きなんですよ!戦国~、幕末~、源平~♪

…だから、正確な歴史ってよりも、巷に流布した俗説、通説。。。この鮒寿司うんぬんの話も、鮒寿司を産していたのは光秀の領地の坂本じゃなくって米原だろ、ほか、異なる解釈もたくさんありますし、そもそもほんとうにあった話かどうかはアヤシイですけどね。。。ま、それはさておき。

(あ、ところでボクは、ニッポンに来てからまずこの米原へ到着し、そこからこの劇団プレモ座に加わりました\(^o^)/)


さて、話戻って。発酵ですよね。

発酵食品は数あれど、われらがこよなく愛するのはこちら、アルコール!世界各地に、発酵によるお酒造り(醸造)の文化が存在します。

韓国ではお米から作る濁り酒のマッコリがありますが、こちらは、米麹、そして水で作るニッポンのお酒、いわゆる日本酒(酒税法上は清酒)ですね。

奈良県吉野市の酒蔵、美吉野醸造の「花巴」

酵母添加を行わず、蔵つきの酵母だけで育てた、"酵母無添加"、そして"山廃仕込み"火入れを略した"無濾過生原酒"、などなど調べていくだけで日本酒作りのさまざまな知識が学べそうな逸品。最近みつけた、味と香りの共に優れた、隠れ名品です。


…って、おや?

キミタチはもしかして…



も、もしかして、オリゼーこと、アスペルギルス・オリゼー、つまりコウジカビと、酵母菌、つまりサッカロミケス、いや、サッカロミケス・セレビシエ!?も、もしかして瓶から出てきちゃったの!?


おい、おまえ、さっきから聞いてたらどれもこれも、カンゼンに『もやしもん』のパクリだな。石川雅之の受け売りだな。キビヤックだとかホンオフェだとか。日本酒の薀蓄とかも、ぜーんぶ。ジャーナリストとして、学者として、恥ずかしくないのか?え?

おい、なんとか言ってみろ。でないとこの酒はおまえには飲ませねえ。

うー。。。いいじゃないですか~。石川雅之さんの『もやしもん』は、ボクにとっての発酵の教科書みたいなもんですし、それに、『純潔のマリア』といい新作『惑わない星』といい、魔女とか、星空とか、この「劇団プレモ座」とは重なるテーマが多いんですよ~。あ、でも、鮒寿司のところはじぶんで考えてみたんですよ?…でも調べてたら既にいろんな人が言ってましたが。。。いえ、でもいいんです!この番組は、あくまでそうした先人たちの研究や知見をまとめて、わかりやすく、皆さんに伝えるので!

あー!こいつ、ひらきなおりやがったぞ!コラ!

まあまあ、そういわず、ちょっと最後まで観て行ってくださいな。

おう、じゃあお手並み拝見と行こうか、崔准教授。ヨロシクな!

は、はい…。

えー、では気を取り直して、、、

そもそも、酒という漢字はとても興味深い文字です。つくりになっている「酉」は、干支の酉を表す文字でもありますがこれ、発酵そのものを示す文字なんですね。つまり酒とは、発酵(「酉」)させた「水」、というわけ。いえ、厳密にはH2Oそのものが発酵しているわけではないのですが…

ほかにもこのアイコンは、たとえば発酵や酵母の「酵」や、醸造の「醸」、酪農の「酪」、などなど、いや「醤」とか「酢」とか「酸」なども含め、菌や酵母たちの働きを示す言葉にたくさん使われています。発酵の「発」も、本来は「醗」と書かれるものでした。

そもそもこれ、お酒を作るための壺を表しているんですね。でも、単なる壺じゃなくって、上から何か押えてる感じが、なんだか発酵っぽさを強調しています。お酒、肉、魚、野菜、乳製品、酢、醤など、さまざまな発酵食品や発酵作用の効果をいずれもこの「酉」の文字を使って表現しているということは、旧い時代のチウゴクの人々は、眼に見えないこのちいさなちいさないきものたちの仕業を、ある程度は理解していたのでしょうか?


おや?あ、噂をすれば、「酪農」、やってきましたね~。

こちらはブルガリアの方たちでしょうか?牛を連れているようですが、、

そう、ブルガリアといえば、ヨーグルトですね。


牛乳などの乳に、乳酸菌と酵母をもちいて作られる、いわゆる発酵乳、それがヨーグルト

正確には「ヨーグルトとは乳及び乳酸菌を原料とし、ブルガリア菌とサーモフィルス菌が大量に存在し、その発酵作用で作られた物」とされるそうです。

ブルガリア菌。つまり、いわゆるラクトバチルス・ブルガリクス、正確にはLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus と名付けられた乳酸菌の一種。1905年にブルガリア人の外科医にして微生物学者であったスタメン・グリゴロフさんによって発見されました。

※『もやしもん』ではL.ブルガリクスとして登場していたと思いますが、それもそのはず、2014年まではLactobacillus bulgaricusというのが正式な名称だったそうです。

もうひとつが、サーモフィルス菌。正確には、Streptococcus thermophilus。種名のサーモフィルスとは、サーモをフィルする、つまり、ギリシャ語で熱を愛するという意味で、比較的高温でも活動可能なことからこのように呼ばれます。このサーモフィルスは、レンサ球菌とも呼ばれるStreptococcus属に属する真正細菌で、こちらもまたLactobacillalesに属していますので、ブルガリクスとサーモフィルスは目のレベルではお仲間、すなわちどちらも広い意味の乳酸菌だ、ということになります。二人はとっても仲良しで、共生しながら、その両者の発酵作用によって、ヨーグルトを作りだしているんだそうです。

乳酸菌は、乳酸、つまりlactic acidを作り出すタイプの発酵、すなわち乳酸発酵を担ってきた微生物で、Lactic Acid Bacterium、略してLABなんて呼ばれたりもします。"乳酸"、"lactic acid"という文字からはズバリ乳製品が思い浮かびますが、それだけではなく、たとえばボクの国の発酵食品、キムチや、チウゴクや台湾を発祥としてニッポンで親しまれるメンマ筍乾)、キャベツを発酵させたドイツのザワークラウト、イタリアのサラミ(イベリアのチョリソーハモンイベリコは乳酸じゃなくて肉本来の酵素とか別の細菌とか?)などなど、保存のために乳酸発酵を活用している食品は実に多岐にわたります。ニンゲンの食べ物だけでなく、乳を出す牛など家畜の食べ物を作るサイレージという過程でも、この乳酸発酵は大活躍。


それでもやっぱり、乳酸と言えば思い出すのは、ヨーグルトやヤクルトなどの乳製品ですよね。

酪農の「酪」という文字ですが、古代のニッポンではこの文字がズバリ、基礎的な酪農発酵食品を指していたと言われています。

by ブルガール族
ビアゴタさまとともだち

さて、ここで。

ボクの発酵に関する知識も、そろそろ限界になってきたので、応援をお願いしています!

それは、石川さん!…いやいや、ではなく、Wikipediaさん!…いやいや、でもなく…


こちらのお二人です!


えー、ご紹介するのは、双子の姉妹。

まず、妹さんである、発酵学者にして、ウォルフェン・ラクティック・プロダクツ社のCOO兼VP, Research and Developmentを務める、Dr.マルヴァ・カニンガム=ウォルフさん!



はじめまして!マルヴァです。マルヴァってのは、ハイビスカスなどを含むアオイ科の植物のことです。

(って、ちょっとあなた、ここまでが長いわよっ!わたしが話すパートがなくなるじゃないのー!)

(ス、スミマセン^_^;)

あ、ハイビスカスは好きですけど、オクラはキライです。



続いてはお姉さまである…

ウォルフェン・ホールディングスのChairperson, CEO、ファラウェイ・カニンガム=ウォルフさん!

経営学の天才にして、ウォルフェン・フーズをここまで巨大なコングロマリットに育てた立役者として、経済界では知らぬ者のいない、食品産業の女王っ。


こんにちは。ファラウェイです。え?変わった名前ですって?この世界の遥か彼方まで行きつけるようにと、お母さま…じゃなかったおばあさまがつけてくれました。

おばあさまというと、あの、ウォルフェン・フーズを設立され、長年、Founder, CEOとしてご活躍された、オーガスタ・カニンガム=ウォルフさんですね。

ええ。いまは経営者としては引退しましたが、本来の専門であった趣味の細菌学にのめり込んでます。


(お姉ちゃん、ママのこと、なんでおばあちゃんって言うの?)

(バカ、あんた、忘れたの?ママは118歳。そしてわたしたちはほんとは64歳。でもみんなのみため、若すぎるでしょ?だから、ママじゃなくておばあ様、そしてわたしたち、公式には29歳ってことになってるのよ。忘れないでっ。)

(は、はーい…)

あ、あの、、
続けてよろしいでしょうか…


ちょっと待ってて!!

は、はい…