2015年9月21日月曜日

Sep 2015 - Chapter 6 

「アルブレヒトとの旅から還ってからというもの、砦の中で僕をバカにする眼が少し和らいだように感じていた。どうでもいいのだけど、少しだけ過ごしやすくなった。そんなある日、砦で召集がかかった。もちろん僕も呼び出された。何だか、イヤな予感がした。何というか、何かが決まる、何かが動く、そんな空気が、空からも、足元からも、いや、人々の毛穴のひとつひとつから、漂っていた。」


よし!いざ、決戦の時は来た!きょう、我らテュートン騎士団は、かのリヴォニア帯剣騎士団を殲滅し、同時に、プルーセンとの長きに渡る戦にも終止符を打つっ。皆の者、時は満ちたゾ!この、鉄十字章にかけてっ、必ず勝つっ!さすれば我がドイツの、栄光は、世界一ィィィィ!

ええっ。いったい何があったんだ?突然、そんな決戦が!?

第六章 三つ巴 


…その頃、プルーセンの村では…


<長よ、ペコルスよ、ホントウにやるのか?われわれだけで?もう一度「隻眼のネウロ」を説得した方がいいんじゃないか?>

<…いや、もうその猶予は残されてはいまい。彼ほどの男、一度言いだしたら聞かぬだろうし、それに、われらはもう、疲れ果てた。。。彼の言うように、滅びの日は近かろう。ならばいっそ…。>

<そうか。。。じゃあおれも、付き合うよ。>

<おれも。>
<おれも。>

<おまえたち…。>




いったい何があったんだろう。管区長の顔がマジだ。それに、知らない顔もいるぞ?

こりゃいよいよ、ホントの大戦(おおいくさ)なのか?ブルブル…。そして、プルーセンの人たちはホントウに、この世から消されてしまうのか?

ジークフリート!何をふるえている!おまえにも、従軍してもらうぞっ。

ええ!?い、いや、僕は砦の留守番を…


何を言っている。留守番なら不要だ。ホレ、こうして帝国都市のネットワークである「ハンザ」からも応援の衛兵が来ている。防衛はうちの衛兵ウルリッヒと彼と、二人に任せればよい。

どうも。ハンザの一角をなす、リューベック帝国都市の衛兵パウルです。留守番ならお任せあれ。

ディーフェンス!ディーフェンス![by ウルリッヒ]



それよりジークフリート。アルブレヒト君から聞いたぞ。おまえ、プルーセンの言葉を覚えたらしいな。腰抜けかと思ったが、なんの、夜な夜なベンキョウでもしていたのか?それで昼間、昼寝をしていたんだな。とにかく、役に立ちそうだ。ついてこい…。



う、アルブレヒトめ、、余計なことを…。良かれと思ってなんだろうけど、僕は目立ちたくないんだよ…。困るよ…。

(ジーク。おまえはちょっと意気地がないが、智慧も回るし、怒れば力も出せる。おれはそれを知っているぞ。ここらでひとつ手柄を立てて、騎士団の一員としての存在感を示せ。)

(う、う、なんだか無言の期待とプレッシャーが…。)

リューベックの衛兵パウルどのだけではないゾ!このたびは、傭兵も雇った。正式な騎士団員(brother)ではないが、その分、武装はわれわれよりも充実しているぞ。Sariantbrothersと呼んでくれ。

シェーンコップだ。以後、お見知りおきを。


わしはオフレッサー。戦と聞いてチが騒いでおりまする。なにとぞわしにも活躍の場をくだされよ、騎士どの。ガッハッハ。


…う、ますます汗臭くなってきたぞ(T_T)




ふんっ。傭兵か。管区長もいよいよ勝負に出たって訳か。砦の財産をずいぶんつぎ込んだのだろうな。退路は立たれた、と思ってよいな。それにしても、あのような者を呼ばずともわたしだけで何とでもなるものを。みくびられたものだな。

…にしても、似ているな。色違いか?

アルブレヒト君、ザンネン!よくみると、ガントレットとマントが違うヨ!



いざ、皆の者、準備はよいか!鬨の声をあげよ!

ウラー!ウラー!ウラーーー!!!

(…なんだよソレ、東の、キプチャクのやつらじゃないんだから…)

ジークフリート!ハラに力を入れろ!

は、はーい。う、うら~。うら~。ウララ~。ウララ~。

コラ!キサマ、リンダかっ!!

???



---その頃---


<しかしペコルス、いったいどのようにしてやつらを攻める?>

<うむ。では話そう。おれは計略をめぐらしたのだ。>

<計略?>



<この前、ポトリンポのじいさんから聞いた話に着想を得てな。>

<??>

<騎士団は二つある。だからやつらを争わせる。>

<??>

<おれは帯剣騎士団、ドイツ騎士団、それぞれの砦に噂を流しておいた。相手方の騎士団が、われわれに最後の戦いを仕掛ける様子だ、と。うまくいけば、漁夫の利を狙おうとする指揮官が両団にいてくれてば…>

<な、なるほど…。>

ガチャガチャ

<来たかっ!どっちだっ!>

<どっちでも構わんっ。みんな、覚悟はいいか?>

<おうっ。>



<リヴォニアだっ!やはり、貪欲なリヴォニアの「鷹の団」が最初に動いたぞっ!われらの村と財産をテュートン騎士団に奪われまいと、先にやってきたんだっ。くそっ。>

やあやあ、田舎者諸君。きょうでサヨウナラのようだね?

<だまれっ、この侵略者めっ!いざ、この『ペルキューナスの斧』の錆にしてくれるわっ。神々よ、われらが神々よっ。侵略者を追い払う斧に雷神の力を与え給えっ>






<ワーワー>  ワーワー
  ワーワー  <ワーワー>

<…お、おい。ペコルス、あれ、あれをみろ?>


<なんだ?何を?>

<おれは眼がいいから、見えるんだが、あの向こうから来るのは…まさか…>


<?? ! な、なんだあれはっ!>


<…なんだあれは…>

<…禍々しい…>

<まっ黒だ…>



おおっ!お出でかっ!

あのお方が、おいでかっ!



"リガの怪僧 ヘルマン"、

それに、、、

"リガの悪魔 フォルクィン


遂にお出でかっ!



…待たせたな。

いえ、こんな田舎までよく。
長旅、痛み入ります。

…鷹の長よ。

はっ。


アルベルトが、シんだぞ。

ええっ!

…これは、弔いだ。異教徒どもの血で、弟を天国に送ろうではないか。

はっ!



…ヘルマンどの。よろしいかな?

…ああ、フォルクィンどの。一人残らず、な。

<ああっ。あれは、あれは、リガの、、、リヴォニア帯剣騎士団の総長と、リガ大司教の兄ではないのか!?>

<ま、まさか?あんな破戒僧みたいな男が?それに総長も、噂に聞く剣の印の白装束じゃないじゃないか?ニセモノじゃないのか?幾らなんでもあんな禍々しいやつらが…>

<わからん。が、いずれにしても、あの男たち、尋常な強さではなさそうだぞ。。>

<ああ、われらも、ここまでか…。>


<もう、尻尾を巻いて逃げるか…。>

<いや、怖気づくなっ。むしろどうせここで終わりなら、コワいものはないっ!最期の一瞬まで、やつらをひとりでも多く倒し、シんでいった仲間たち、消えて行った我らの誇りに、弔いの歌を奏でさせてやろうではないかっ。>

<ペ、ペコルス…>

<どうした!まだわれらは誰も、傷ついてはいない。まだまだやれるぞっ>

<お、おうっ>









…どうやら、この崖下のようだな。

ええ、鎧の音、剣戟の音が聴こえます。管区長、この下で、プルーセンと帯剣騎士団が会いまみえているようです。

腕が鳴るなあ。
いっちょやるか。

稼ぎどころだなあ。
歩合だからな。

戦況はどうだ?

いえ、そこまでは見えません。茂みがジャマです。が、何やら新手が到着したような様子ですね。

よしっ。ジークフリート!お前は帯剣騎士団のドイツ語とプルーセン語と、両方わかるだろう。ちょっとそこを降りて、様子をみてこい。

ええっ!?ボ、僕が!?いやいやいやいや

うるさい!いけ!!

ええええええ?(い、イヤだーーーーー(T_T))



……

………モーウ