Sep 2015 - Chapter 6
「アルブレヒトとの旅から還ってからというもの、砦の中で僕をバカにする眼が少し和らいだように感じていた。どうでもいいのだけど、少しだけ過ごしやすくなった。そんなある日、砦で召集がかかった。もちろん僕も呼び出された。何だか、イヤな予感がした。何というか、何かが決まる、何かが動く、そんな空気が、空からも、足元からも、いや、人々の毛穴のひとつひとつから、漂っていた。」よし!いざ、決戦の時は来た!きょう、我らテュートン騎士団は、かのリヴォニア帯剣騎士団を殲滅し、同時に、プルーセンとの長きに渡る戦にも終止符を打つっ。皆の者、時は満ちたゾ!この、鉄十字章にかけてっ、必ず勝つっ!さすれば我がドイツの、栄光は、世界一ィィィィ!
ええっ。いったい何があったんだ?突然、そんな決戦が!?
第六章 三つ巴
…その頃、プルーセンの村では…
<長よ、ペコルスよ、ホントウにやるのか?われわれだけで?もう一度「隻眼のネウロ」を説得した方がいいんじゃないか?>
<…いや、もうその猶予は残されてはいまい。彼ほどの男、一度言いだしたら聞かぬだろうし、それに、われらはもう、疲れ果てた。。。彼の言うように、滅びの日は近かろう。ならばいっそ…。>
<そうか。。。じゃあおれも、付き合うよ。>
<おれも。>
<おれも。>
<おまえたち…。>
いったい何があったんだろう。管区長の顔がマジだ。それに、知らない顔もいるぞ?
こりゃいよいよ、ホントの大戦(おおいくさ)なのか?ブルブル…。そして、プルーセンの人たちはホントウに、この世から消されてしまうのか?
ジークフリート!何をふるえている!おまえにも、従軍してもらうぞっ。
ええ!?い、いや、僕は砦の留守番を…
何を言っている。留守番なら不要だ。ホレ、こうして帝国都市のネットワークである「ハンザ」からも応援の衛兵が来ている。防衛はうちの衛兵ウルリッヒと彼と、二人に任せればよい。
どうも。ハンザの一角をなす、リューベック帝国都市の衛兵パウルです。留守番ならお任せあれ。
ディーフェンス!ディーフェンス![by ウルリッヒ]
それよりジークフリート。アルブレヒト君から聞いたぞ。おまえ、プルーセンの言葉を覚えたらしいな。腰抜けかと思ったが、なんの、夜な夜なベンキョウでもしていたのか?それで昼間、昼寝をしていたんだな。とにかく、役に立ちそうだ。ついてこい…。
う、アルブレヒトめ、、余計なことを…。良かれと思ってなんだろうけど、僕は目立ちたくないんだよ…。困るよ…。
(ジーク。おまえはちょっと意気地がないが、智慧も回るし、怒れば力も出せる。おれはそれを知っているぞ。ここらでひとつ手柄を立てて、騎士団の一員としての存在感を示せ。)
(う、う、なんだか無言の期待とプレッシャーが…。)
リューベックの衛兵パウルどのだけではないゾ!このたびは、傭兵も雇った。正式な騎士団員(brother)ではないが、その分、武装はわれわれよりも充実しているぞ。Sariantbrothersと呼んでくれ。
…シェーンコップだ。以後、お見知りおきを。
わしはオフレッサー。戦と聞いてチが騒いでおりまする。なにとぞわしにも活躍の場をくだされよ、騎士どの。ガッハッハ。
…う、ますます汗臭くなってきたぞ(T_T)
ふんっ。傭兵か。管区長もいよいよ勝負に出たって訳か。砦の財産をずいぶんつぎ込んだのだろうな。退路は立たれた、と思ってよいな。それにしても、あのような者を呼ばずともわたしだけで何とでもなるものを。みくびられたものだな。
…にしても、似ているな。色違いか?
アルブレヒト君、ザンネン!よくみると、ガントレットとマントが違うヨ!
いざ、皆の者、準備はよいか!鬨の声をあげよ!
ウラー!ウラー!ウラーーー!!!
(…なんだよソレ、東の、キプチャクのやつらじゃないんだから…)
ジークフリート!ハラに力を入れろ!
は、はーい。う、うら~。うら~。ウララ~。ウララ~。
コラ!キサマ、リンダかっ!!
???
---その頃---
<しかしペコルス、いったいどのようにしてやつらを攻める?>
<うむ。では話そう。おれは計略をめぐらしたのだ。>
<計略?>
<この前、ポトリンポのじいさんから聞いた話に着想を得てな。>
<??>
<騎士団は二つある。だからやつらを争わせる。>
<??>
<おれは帯剣騎士団、ドイツ騎士団、それぞれの砦に噂を流しておいた。相手方の騎士団が、われわれに最後の戦いを仕掛ける様子だ、と。うまくいけば、漁夫の利を狙おうとする指揮官が両団にいてくれてば…>
<な、なるほど…。>
ガチャガチャ
<来たかっ!どっちだっ!>
<どっちでも構わんっ。みんな、覚悟はいいか?>
<おうっ。>
<リヴォニアだっ!やはり、貪欲なリヴォニアの「鷹の団」が最初に動いたぞっ!われらの村と財産をテュートン騎士団に奪われまいと、先にやってきたんだっ。くそっ。>
やあやあ、田舎者諸君。きょうでサヨウナラのようだね?
<だまれっ、この侵略者めっ!いざ、この『ペルキューナスの斧』の錆にしてくれるわっ。神々よ、われらが神々よっ。侵略者を追い払う斧に雷神の力を与え給えっ>
<ワーワー> ワーワー
ワーワー <ワーワー>
<…お、おい。ペコルス、あれ、あれをみろ?>
<なんだ?何を?>
<おれは眼がいいから、見えるんだが、あの向こうから来るのは…まさか…>
<?? ! な、なんだあれはっ!>
<…なんだあれは…>
<…禍々しい…>
<まっ黒だ…>
おおっ!お出でかっ!
あのお方が、おいでかっ!
"リガの怪僧 ヘルマン"、
それに、、、
"リガの悪魔 フォルクィン、
遂にお出でかっ!
…待たせたな。
いえ、こんな田舎までよく。
長旅、痛み入ります。
…鷹の長よ。
はっ。
…ヘルマンどの。よろしいかな?
…ああ、フォルクィンどの。一人残らず、な。
<ああっ。あれは、あれは、リガの、、、リヴォニア帯剣騎士団の総長と、リガ大司教の兄ではないのか!?>
<ま、まさか?あんな破戒僧みたいな男が?それに総長も、噂に聞く剣の印の白装束じゃないじゃないか?ニセモノじゃないのか?幾らなんでもあんな禍々しいやつらが…>
<わからん。が、いずれにしても、あの男たち、尋常な強さではなさそうだぞ。。>
<ああ、われらも、ここまでか…。>
<もう、尻尾を巻いて逃げるか…。>
<いや、怖気づくなっ。むしろどうせここで終わりなら、コワいものはないっ!最期の一瞬まで、やつらをひとりでも多く倒し、シんでいった仲間たち、消えて行った我らの誇りに、弔いの歌を奏でさせてやろうではないかっ。>
<ペ、ペコルス…>
<どうした!まだわれらは誰も、傷ついてはいない。まだまだやれるぞっ>
<お、おうっ>
…どうやら、この崖下のようだな。
ええ、鎧の音、剣戟の音が聴こえます。管区長、この下で、プルーセンと帯剣騎士団が会いまみえているようです。
腕が鳴るなあ。
いっちょやるか。
稼ぎどころだなあ。
歩合だからな。
戦況はどうだ?
いえ、そこまでは見えません。茂みがジャマです。が、何やら新手が到着したような様子ですね。
よしっ。ジークフリート!お前は帯剣騎士団のドイツ語とプルーセン語と、両方わかるだろう。ちょっとそこを降りて、様子をみてこい。
ええっ!?ボ、僕が!?いやいやいやいや
うるさい!いけ!!
ええええええ?(い、イヤだーーーーー(T_T))
…
……
………モーウ