2015年9月21日月曜日

Sep 2015 - Chapter 7 

「あれは、僕がみた夢だったのだろうか。それとも、ホントウに起きたことだったのだろうか。いまではもうわからない。でも僕は確かにあの時あそこにいて、彼も、確かにいたんだという感覚だけは残っている。そう、それはあの日、あの戦いのさなかに…」


第七章 美しき獣 


<…やはり、お帰りになりなさるか?御仁よ。隻眼の、ネウロどのよ。いま、この崖の下で、ペコルスたちが、わが一族の命運を決しようとしておりまするが。>

ぐーぐー
すぴーすぴー

<…はあ。やはり、神ではないのだな。いや、神だとしても、われらの神は厳しい。忘れておったわい。やすやすとわれらの願いをかなえてくれなどせぬか。。。>





<しかし御仁。いったいどこへお届けすればよろしいか?前にあなた様に出遭った、あの洞穴へ?それともほかにどこか、向かわれる先が?そもそも御仁は、いつまで眠りなさるか…。>

ぐーぐー
すぴーすぴー

<…。>

<…このお人、ホントに寝てるのかな?>

ソローリ
ソローリ

ガサゴソ



<…寝てる、か。。。>

ぐーぐー
すぴーすぴー

ぐがーぐがー

グルグル


<…これほど寝ているなら、もしや、わしが何をしても気付かぬのでは??それならいっそ…わしがこのお方を、ここから崖下へ突き落せば…>


そーっと…

そーっと…

そーっと…



ムクッ


ウワっ!起きたっ!

<あわわ、お、起きたゾっ。マズイっ。叱られる、いや、コロされるかも…>

<おいっ>

<ヒ、ヒィっ!ええい、もうこうなったら、、ヤケだわいっ!どうなっても構うかあ~~>

<おい、何してるんだっ>




<えーい!>

<う、うわっ。あぶねーな、じいさんっ。落ちるだろうが。なんだなんだ?何かあったのかっ?腕を引っ張るなって。おい!>

<うわああああああ!あのボウズと同じ、火事場のバカ力だーーー。>


ブゥーンン!


<おい、じじい、なんなんだヨ!あぶねーって!>


ドタン!

<い、いってーな!おいっ。大人しくしてりゃあ何なんだ?さっきまでヒトのことを神だのなんだの言ってたくせに、急にひでーじゃねーか。>

<やーかーまーしーい!もう神ともなんとも思っておらんわいっ。ただな、お前さんのその伝説の力、ウワサどおりならば、わしらのためにちょっとだけ使わせてもらうゾ!わるく思わんでくれよっ。何せ、一族の命がかかっておるんでな!>



<おい!わ、わ、わかったから、ヤメロって。あぶねーって!!>

<うわーーーーーーー!>

ブゥーン

おわーーーー
 落ちるーーー!


ヒューン…………
ドスン!!


ガラドッシャーン!!
うわーーー!なんだなんだ!?
「ふるやのもり」か!?

<イッテーなっ!何すんだヨ、じいさん!アイタタタ…。

あのなあ!不死身って言ったってイタイもんはイタイんだぞ!>

なんだなんだ!

何が落ちてきたんだ!?

崖の上に誰かいるのか!?


<おい!ペコルス!あ、あれはっ!?>

<ま、まさかっ!>


ムクッ

<あー、痛かった。まったく。眼が醒めちまったじゃねーか、あのじいさんめ。。。ムチャクチャしやがるなあ。おれじゃなかったらシんでるぞ?ブツブツ…>



ん?なんだ?おまえら?


<あ、あんたは!!>


やややっ!何やら騒ぎが起きたようだぞ?ジークフリート、早く調べてこんかっ。


い、いや、でも、なんかヤバそうな雰囲気ですよ?

バカモンっ。だから調べるんだろうが。いま物凄い音がしたぞ?なんだか鎧武者と何かが激突したような…。

いったい、何が…。

おいおいおい、騎士サンよぉ。なんでもいいからとっとと崖下に降りて、参戦しようぜ。でないと戦いが終わっちまうぜ?あんたら、あいつらどっちも倒したいんだろ?

おう、そうとも。ここでじっとしていたら、勝った方がすべてを持って逃げてしまうぞ?それでは遅い。それにわしは、チがみたい。野蛮人どものチを流したい。さあ、突撃しようではないか。


(うるせーよ、おまえが野蛮人だヨ。傭兵は黙ってろっての。)

ジークフリートどのとやら、何か?

い、いや、、、ハハハー^_^;

(ジゴクミミだな、あのオフレッサーってやつ)



ううむ…。

よし、ジークフリート。もう偵察はいい。突撃だ!いますぐ崖下に降りろ!

ええっ!?




か、管区長はいかないんっすか??

ええい、やかましい。わしはこの、ザルツァさまから預かった団旗を汚すわけにはだなあ…。向こうに道があったはず。あそこから回り道をするから、お前は先に行け!



(…まじかよー。じゃあ道のところに陣取っとけよー。ブツブツ。。。)

傭兵どもも、行けっ!

(ええい、もうこうなったら、この前みたいに、無手勝流槍術!!って感じで、突っ込むしかないか!?ええい、コワくない怖くない、逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ…)


ジークフリード!いけーーー!

ははは、はーーーい!!(>_<)
ウワーーーー
ウワーーーー
ウワーーーー


ズザザザザザザァ
(崖を滑り降りる音です^_^;)


ドンッ!


(な、な、な、なんだありゃーー!なんか、ムチャクチャ強そうで、ムチャクチャヤバそうなやつらがいるぞ!?(>_<) あんなやつら、プルーセンにいたか?『鷹の団』にいたか?マ、マズイ、コロされるヨ~(T_T))

おおっ!あれはまさか、リガの?こんなところまで出張ってきたというのか?

しかし、ならば好機。このシェーンコップの名を高める、絶好の好機っ!

はっはっは。遅いぞ、シェーンコップ、キザ野郎っ。おまえはそこで観てなっ。こやつらはわしの獲物よ。モーニングスターでアタマをかち〇ってやるさ。はーはっは!

お兄さん、また遭ったね。

うぬっ。お、お前はこの前のじじいのときの?どこから来た!?い、いつのまに背後に?

<ヨシっ!とにかく、、
イチオウ計略通りだ!

いや、それ以上だっ!>
<なぜ『隻眼のネウロ』がいるのかわからんが、、>
<だがこれならイケるぞっ!助かったぞっ!>

<ペコルス、おれ、臆病なこと言って、わるかったよ。ネウロも来てくれたし、おまえの作戦通り、両騎士団がぶつかり始めた。おれ、おまえにどこまでもついていくよ。。>

ヤアアア!

<ワンワンワン!>

なんだ?このケガワの男は…異教徒中の異教徒の姿だな。ケモノ臭い…。

おいっ!ヘルマンっ!わしを、このオフレッサーをムシするな!おい!(T_T)



<なんだと、このボウズめっ。おまえこそ、棍棒まで金属とは、バカか?金属くせーんだよ!>

シュンっ
サクッ

…ぐわっ


<ふんっ。しばらく寝てろ。うるせーボウズめ。

しかし、なんだなんだ?なんでこんなことになってんだ?誰が敵で誰が味方なんだ?ポトリンポのじいさんはおれさまをここに突き落としやがるし、この金属くせー鎧ヤローはおれさまにぶつかりやがるし、白マントどもまで出てきやがるし、黒坊主はいるし。何がどうなってんだ!説明しろっ!>


<こらー!ペコルスとか言うガキ!何がどうなってんのか、説明しろーーー!>

<そ、そっちこそ説明してくれ!あんた、帰ったんじゃなかったのか?なんでこんなところにいるんだ?>


う、うわ、、、これ、、、なんだ…乱戦だ…メチャクチャな乱戦だよ…。

あの被り物の男、いまいったい何をしたんだ?当身か?

突然あのヘルマンらしきやつが倒れたが…まったく見えなかったぞ?

やつは相当の手練れか?ならばおれは、やつを仕留めるべきか?


おい、シェーンコップ。引っ込んでろ。あのオオカミ野郎はおれがヤるぜ。


…失せろ、野蛮人め。ムシされてたくせに。

なに!?

(うわーーー、しかも傭兵の仲間割れまで始まった(T_T) 

 もうイヤだーーー(>_<)



  ハッ!いや、それどころじゃない!この乱戦じゃプルーセンは…)




そう、それは、その時だった。

あの瞬間を、僕は忘れない。

いや、生涯忘れられないだろう。









電光石火!!

それはまさに

電光石火!!!




何の前触れもなく
跳びかかった
その隻眼の男は

まるで

一頭の黄金の狼だった

獣だった




………

……





僕は、

僕は、

戦いがキライな
はずの

僕は、


その時、
確かに、

眼を奪われた。


この世のものとは思えぬ、

強く、美しい獣に。


光り輝く、そのオオカミに。