Sep 2015 - Chapter 7
「あれは、僕がみた夢だったのだろうか。それとも、ホントウに起きたことだったのだろうか。いまではもうわからない。でも僕は確かにあの時あそこにいて、彼も、確かにいたんだという感覚だけは残っている。そう、それはあの日、あの戦いのさなかに…」第七章 美しき獣
<…やはり、お帰りになりなさるか?御仁よ。隻眼の、ネウロどのよ。いま、この崖の下で、ペコルスたちが、わが一族の命運を決しようとしておりまするが。>
ぐーぐー
すぴーすぴー
<…はあ。やはり、神ではないのだな。いや、神だとしても、われらの神は厳しい。忘れておったわい。やすやすとわれらの願いをかなえてくれなどせぬか。。。>
<しかし御仁。いったいどこへお届けすればよろしいか?前にあなた様に出遭った、あの洞穴へ?それともほかにどこか、向かわれる先が?そもそも御仁は、いつまで眠りなさるか…。>
ぐーぐー
すぴーすぴー
<…。>
<…このお人、ホントに寝てるのかな?>
ソローリ
ソローリ
ガサゴソ
<…寝てる、か。。。>
ぐーぐー
すぴーすぴー
ぐがーぐがー
グルグル
<…これほど寝ているなら、もしや、わしが何をしても気付かぬのでは??それならいっそ…わしがこのお方を、ここから崖下へ突き落せば…>
そーっと…
そーっと…
ムクッ
ウワっ!起きたっ! |
<あわわ、お、起きたゾっ。マズイっ。叱られる、いや、コロされるかも…>
<おいっ>
<ヒ、ヒィっ!ええい、もうこうなったら、、ヤケだわいっ!どうなっても構うかあ~~>
<おい、何してるんだっ>
<えーい!>
<う、うわっ。あぶねーな、じいさんっ。落ちるだろうが。なんだなんだ?何かあったのかっ?腕を引っ張るなって。おい!>
<うわああああああ!あのボウズと同じ、火事場のバカ力だーーー。>
ブゥーンン!
<おい、じじい、なんなんだヨ!あぶねーって!>
ドタン!
<い、いってーな!おいっ。大人しくしてりゃあ何なんだ?さっきまでヒトのことを神だのなんだの言ってたくせに、急にひでーじゃねーか。>
<やーかーまーしーい!もう神ともなんとも思っておらんわいっ。ただな、お前さんのその伝説の力、ウワサどおりならば、わしらのためにちょっとだけ使わせてもらうゾ!わるく思わんでくれよっ。何せ、一族の命がかかっておるんでな!>
<おい!わ、わ、わかったから、ヤメロって。あぶねーって!!>
<うわーーーーーーー!>
ブゥーン
おわーーーー
落ちるーーー!
ヒューン…………
ドスン!!
ドスン!!
ガラドッシャーン!! うわーーー!なんだなんだ!? 「ふるやのもり」か!? |
<イッテーなっ!何すんだヨ、じいさん!アイタタタ…。
あのなあ!不死身って言ったってイタイもんはイタイんだぞ!>
なんだなんだ!
何が落ちてきたんだ!?
崖の上に誰かいるのか!?
<おい!ペコルス!あ、あれはっ!?>
<ま、まさかっ!>
ムクッ
<あー、痛かった。まったく。眼が醒めちまったじゃねーか、あのじいさんめ。。。ムチャクチャしやがるなあ。おれじゃなかったらシんでるぞ?ブツブツ…>
ん?なんだ?おまえら? |
<あ、あんたは!!> |
やややっ!何やら騒ぎが起きたようだぞ?ジークフリート、早く調べてこんかっ。
い、いや、でも、なんかヤバそうな雰囲気ですよ?
バカモンっ。だから調べるんだろうが。いま物凄い音がしたぞ?なんだか鎧武者と何かが激突したような…。
いったい、何が…。
おいおいおい、騎士サンよぉ。なんでもいいからとっとと崖下に降りて、参戦しようぜ。でないと戦いが終わっちまうぜ?あんたら、あいつらどっちも倒したいんだろ?
おう、そうとも。ここでじっとしていたら、勝った方がすべてを持って逃げてしまうぞ?それでは遅い。それにわしは、チがみたい。野蛮人どものチを流したい。さあ、突撃しようではないか。
(うるせーよ、おまえが野蛮人だヨ。傭兵は黙ってろっての。)
ジークフリートどのとやら、何か?
い、いや、、、ハハハー^_^;
(ジゴクミミだな、あのオフレッサーってやつ)
ううむ…。
よし、ジークフリート。もう偵察はいい。突撃だ!いますぐ崖下に降りろ!
ええっ!?
か、管区長はいかないんっすか??
ええい、やかましい。わしはこの、ザルツァさまから預かった団旗を汚すわけにはだなあ…。向こうに道があったはず。あそこから回り道をするから、お前は先に行け!
(…まじかよー。じゃあ道のところに陣取っとけよー。ブツブツ。。。)
傭兵どもも、行けっ!
(ええい、もうこうなったら、この前みたいに、無手勝流槍術!!って感じで、突っ込むしかないか!?ええい、コワくない怖くない、逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ…)
ジークフリード!いけーーー!
ははは、はーーーい!!(>_<)
ウワーーーー
ウワーーーー
ウワーーーー
ズザザザザザザァ
(崖を滑り降りる音です^_^;)
ドンッ!
(な、な、な、なんだありゃーー!なんか、ムチャクチャ強そうで、ムチャクチャヤバそうなやつらがいるぞ!?(>_<) あんなやつら、プルーセンにいたか?『鷹の団』にいたか?マ、マズイ、コロされるヨ~(T_T))
おおっ!あれはまさか、リガの?こんなところまで出張ってきたというのか?
しかし、ならば好機。このシェーンコップの名を高める、絶好の好機っ!
はっはっは。遅いぞ、シェーンコップ、キザ野郎っ。おまえはそこで観てなっ。こやつらはわしの獲物よ。モーニングスターでアタマをかち〇ってやるさ。はーはっは!
お兄さん、また遭ったね。
うぬっ。お、お前はこの前のじじいのときの?どこから来た!?い、いつのまに背後に?
<ヨシっ!とにかく、、 イチオウ計略通りだ! いや、それ以上だっ!> <なぜ『隻眼のネウロ』がいるのかわからんが、、> <だがこれならイケるぞっ!助かったぞっ!> |
<ペコルス、おれ、臆病なこと言って、わるかったよ。ネウロも来てくれたし、おまえの作戦通り、両騎士団がぶつかり始めた。おれ、おまえにどこまでもついていくよ。。>
ヤアアア!
<ワンワンワン!> |
なんだ?このケガワの男は…異教徒中の異教徒の姿だな。ケモノ臭い…。
おいっ!ヘルマンっ!わしを、このオフレッサーをムシするな!おい!(T_T)
シュンっ
サクッ
…ぐわっ
<ふんっ。しばらく寝てろ。うるせーボウズめ。
しかし、なんだなんだ?なんでこんなことになってんだ?誰が敵で誰が味方なんだ?ポトリンポのじいさんはおれさまをここに突き落としやがるし、この金属くせー鎧ヤローはおれさまにぶつかりやがるし、白マントどもまで出てきやがるし、黒坊主はいるし。何がどうなってんだ!説明しろっ!>
<こらー!ペコルスとか言うガキ!何がどうなってんのか、説明しろーーー!>
<そ、そっちこそ説明してくれ!あんた、帰ったんじゃなかったのか?なんでこんなところにいるんだ?>
う、うわ、、、これ、、、なんだ…乱戦だ…メチャクチャな乱戦だよ…。
あの被り物の男、いまいったい何をしたんだ?当身か?
突然あのヘルマンらしきやつが倒れたが…まったく見えなかったぞ?
やつは相当の手練れか?ならばおれは、やつを仕留めるべきか?
おい、シェーンコップ。引っ込んでろ。あのオオカミ野郎はおれがヤるぜ。
…失せろ、野蛮人め。ムシされてたくせに。
なに!?
(うわーーー、しかも傭兵の仲間割れまで始まった(T_T)
もうイヤだーーー(>_<)
ハッ!いや、それどころじゃない!この乱戦じゃプルーセンは…)
そう、それは、その時だった。
あの瞬間を、僕は忘れない。
いや、生涯忘れられないだろう。
電光石火!!
それはまさに
電光石火!!!
何の前触れもなく
跳びかかった
その隻眼の男は
まるで
一頭の黄金の狼だった
獣だった
………
……
…
僕は、
僕は、
戦いがキライな
はずの
僕は、
その時、
確かに、
眼を奪われた。
この世のものとは思えぬ、
強く、美しい獣に。
光り輝く、そのオオカミに。