2015年9月27日日曜日

Sep 2015 End roll 

テュートン騎士団をモチーフに語られた、"オオカミ"をめぐる物語の断章。『獣の時代』。ちょっとフクザツになりすぎてしまった感がある9月演目を、軽く解説しておきます。ま、またもや、カルくじゃなくなるかもしれませんが^_^;


End roll


テュートン騎士団

  • ジークフリート・フォン・ローエングラム
    • fi?ures series 8 boys 01 crusader
  • アルブレヒト・フォン・ニュルンベルク
    • 4534 テンプル騎士団のナイト(special) カスタム
      • 鉄帽を4625と交換
      • 背後からのみ撮影し赤十字を隠ぺい^_^;
  • ヘルムート管区長
    • 4625 十字軍の兵士(special) カスタム
      • 鉄帽を4534と交換
      • 帯剣せず
  • 歩哨ウルリッヒ
    • 4583 お城の番兵(special)
  • リューベックの衛兵パウル
    • 4502 塔の番人
  • 傭兵 シェーンコップ
    • 4602 番人 a.k.a. 鎧の戦士(special)
  • 傭兵 オフレッサー
    • 4567 戦う騎士 a.k.a. Sir Porkadot(special)





リヴォニア帯剣騎士団

  • 「鷹の団」の隊長:7536 盗賊騎士団のリーダー(add-on)
  • 「鷹の団」の隊員:7537 3人の盗賊騎士団(add-on)
  • "リガの怪僧"ヘルマン:4872 盗賊騎士団の砲手
  • "リガの悪魔"フォルクィン:3315 黒騎士
  • アルベルト司教:出演なし


プルーセン

  • ペコルス:6383 オオカミ騎士団
  • ペコルス隊の弓兵と兵士:6383 オオカミ騎士団
  • ポトリンポ:6005 牛車と騎士
  • オオカミのネウロ:4644 オオカミ戦士(special)

その他
  • 「隻眼ネウロ」:4644 オオカミ戦士(special)
  • マルティン・ルター:6099 マルティン・ルター 限定品

大道具

  • 城砦(篝火付き):6160 お城の宝物子の番人
  • 盾、剣、鎚鉾のセットA:5355 騎士の戦闘トーナメント
  • 盾、剣、鎚鉾のセットB:5358 騎士の戦闘トーナメント
  • 牛車:6005 牛車と騎士



あとがき


作品背景


時は13世紀、ドイツからやってきたテュートン騎士団がいわゆる北方十字軍を通じてプルーセン人ほかの「異教徒」を「教化」しながら東方への植民を進めていく過程を時代背景に、例の"オオカミの物語"の伏線となるべき、中世のエピソードを、断章として取り上げました。

これ、ふと思いついた際に、昨年の『星霜』に続くクリスマスアドベントカレンダーにしようかな、と少々迷ったのですが、忘れないうちに作ってしまいたかったのと、年末にはそれこそ、オオカミの大長編を持ってこようと考えていたため、季節外れではありますがこの9月にやりました。

ジークフリート君のひとり語りとして語られる、カナシイ歴史と、一民族の黄昏。そして、その中でみられるジークフリート自身の成長と、ナゾのオオカミ戦士。普段とは違った構成に挑戦してみましたが、結果、まあまあの満足度でした。

ジークフリートという人物


まず、主人公となったのは、ジークフリート・フォン・ローエングラム。テュートン騎士団の新入りにして、ヘタレ^_^; かの『銀河英雄伝説』ラインハルト・フォン・ローエングラムジークフリート・キルヒアイスの名を持っているとは思えない、優柔不断なダメ男ぶり。にもかかわらず、自分自身は自身がヘタレであると認めようとせず、「いつかは」「ホントウは」と、他己評価とは著しく異なる自己評価をくだし、空想的な世界へ逃避する。()で書かれた独り言の世界では尊大で小賢しいことを口にするも、いざ実際に喋るとなると自信なさげで何事にも逃げ腰。不遇の原因を先祖に押し付け、自身の力不足や度胸のなさは棚にあげたまま。そのイケてない姿は、同僚であるアルブレヒトの彼をみつめる眼や上司のヘルムートを通じて、冷ややかに語られます。そう、ジークフリート自身も、周囲が自分をヘタレと思っていることには十分気が付いているのですね。でも、あくまでそれは誤解に基づくもので、ホントウは自分は違う、と言い続けている…。こういう人、いると思います。特に中高生に?いや、オトナになってからも?何を隠そう、geneも結構このタイプかなと。。。

完成度が十分でないので、ジークのキャラが一貫してないぞ?とか、ホントウはっていったい何なんだ?何かの血をひくのか?特別な力があるのか?まさかこいつが狼男とか?などなど勘繰った方もいるのではと思いますが、あくまで、わざと、独白と音声言語では違う性格を描いたつもりです。


ただ、単なるヘタレではなかったのは、この時代の騎士団員にあっては珍しく、「異教徒」で「蛮族」と見做されていたプルーセン人に比較的公正な視線を向け、彼らの文化や言語にも関心を示したという一面もありました。これは、騎士団のことを調べていた際に、騎士団は多神教徒であるプルーセンを悪と見做してその文化に関心を払わずゆえに記録もほとんど残さなかった、言語も意思疎通の必要性以上には研究しなかった、という記述を発見し、その例外的人物に描いてみようと考えたわけです。もともと、キタイ(チウゴク北部。当時としてはチンギス=ハンのモンゴル帝国か、それに先立つ契丹の遼や女真の金。)へのい旅を夢見る妄想の冒険家であり、空想の博物学者であった彼が、プルーセンやネウロとの出逢いをきっかけに、少しだけ大人に成長し、騎士団をやめて、人類学者のはしりとなる、というような設定です。

アルブレヒト・フォン・ニュルンベルク


それに対して、同僚のアルブレヒトは、典型的な騎士団員であり、当時の神聖ローマ帝国の有力諸侯であったニュルンベルク城伯の一族という設定。そしてこの一族とは、当時はツォレルン家と名乗っていた、シュヴァーベン地方の名家、ツォレルン城を拠点とする、後のホーエンツォレルン家です。後日談で述べたとおり、この一族は後に、ドイツ騎士団最後の総長(Hochmeister/Grand Master)アルブレヒト・フォン・ブランデンブルク=アンスバッハ・ホーエンツォレルンを輩出し、その宗家として、後のプロイセン公国ブランデンブルク=プロイセン同君連合プロイセン王国ドイツ帝国の王家・皇帝家として台頭するのですが、この13世紀当時はまだそんなことは誰も知らず、このアルブレヒトも、次男坊だか三男坊だか、歴史に名は残さなかった一騎士として登場させています。アルブレヒトという名は、ツォレルン家/ホーエンツォレルン家にはしばしば登場しますね。

geneは、この"最後の総長アルブレヒト"には非常に魅力を感じています。当時騎士団が抗争していたポーランドの王家に叔父を持つことから、縁故を期待されて推挙された彼が、やがて、ルターとの出逢い、カトリックとの決別、改宗、そしてポーランド王への臣従、半独立の領地安堵を経て、北東ドイツの歴史に大いなる転換点をもたらす。


そのエピソードは、著名な道化師(jester)であるポーランドの賢者スカンチクの逸話でも知られ、、、と、プレモの中でも十字軍と道化師を愛するgeneには、まさにツボな人物!!


で、この物語でのアルブレヒト君は、まじめで、有能で、ちょっと皮肉屋、毒舌家で、でも、同僚のジークの良さはそれはそれで認められるだけの度量のある、まあそれなりの人物です。イメージ的には、こちらが櫻井君で、ジークがニノ、的な。MJほどには熱くもなく思い込みが激しくもなく、むしろ、よくわかっているやつ、という感じ。ゆえに、教会が言う「異教徒」とか「教化」にもある程度冷めた眼を持っていて、歴史の長い名家に伝わる伝説や口伝からなのか、プルーセン人たちバルトの諸民族が、旧くはゲルマンやケルトやスラヴの(いまやキリスト教化した)諸族とも近い関係にあったこと、いや、ほんの800年前までは自分たち自身がプルーセンと似たような民であったことを、知っており、よく理解し、冷静に受け止めています。

二つの視線


『星霜』にせよ、この『獣の時代』にせよ、ある意味、キリスト教とドイツの歴史の暗部、恥部、傲然としていて暴力的な一面を描いていると言えます。キリスト教モチーフ大好きなドイツのおもちゃplaymobilからすると、かなりアンチテーゼというか、避けて通りたいところ^_^; しかし、それではおもしろくないので、正面から向き合おうぜ!というのがgeneなのですが、、、


ここでは、さらに別の視座からの論点も追加しておきました。それは、拡大する文明、一神教、強国は悪で、圧迫されている少数民族は守るべき存在だ、という考えは善なのか、という点です。ご存じ、geneはここでも、ネイティブアメリカンや、サーミなどの少数民族を多数登場させており、世界のあちこちの歴史や神話や伝説を採りいれたいがために、プレモが提供する以上の民族をテーマとしています。でも、時々自省するのですが、それはやはり、エキゾチシズムでしかない、珍しいものや未知のもの、レアであるものに対する好奇の眼でしかないな、という点です。ほんとのほんとに彼らの立場に立って理解しているわけでも、彼らと語り合えているわけでもない。

それだけではなく、実際のところgene自身、文明化と中央化によって滅びゆく文化と、都市型巨大機械産業文明とでは、後者を選んだ一人です。産まれたところは1,500年以上に渡って、中央にはなっていないところ、そのまた田舎。旧弊と因習と迷信が渦巻くどろりとした前近代的なムラ社会と封建主義的家族制。そういうものがイヤでイヤで、都会に出て、新しい言葉と新しい文化を覚えて、現代のマムルークとして生きている。ある意味、産まれ持った共同体を捨てて、歴史とカネの大きな流れに乗ることで、物質的にも、そして精神的にも、豊かになったと信じたい。つまりもし自分が、チベットやアリゾナの居留地や極地やシベリアやウルルの傍らに産まれていたとしても、こんな部族、イヤだ!おれは都会でベンキョウしてテクノロジーに適応して、クラブに行って、うまいもの食って、もっともっと世界を知るんだ!カネ持ちになるんだ!とか言って、飛び出した側かもしれない。伝統的な文化を、言葉を、祭りを護ってよ、見せてよ、という観光客や世界遺産信奉者にNOって言ってたかもしれない。

そういうことを時々思うのですが、この視点を、アルブレヒト君がジークに語る彼の考え方として、盛り込んでおきました。民俗学的、博物学的な興味関心からプルーセンに愛着を感じるジークも、文明化の流れを割り切り、努力と才覚で出世して何がわるい、生き残って何が悪い、と現実的な考えを持つアルブレヒト君はどちらもgeneです。結局、部族的な伝統的文化も、集権的な文明化も、どちらも、押し付けられたり、他者から強制されれば、同じなのです。ペコルスやポトリンポたちが選んだように、結局は、自分自身の意思で決めることで、納得が得られる。それが栄えに繋がるか、滅びに繋がるか、どちらが真の生き残りの道、どちらがホントウの誇りある生き方か、それは、時代時代、土地土地、そして人それぞれによって、異なると思うのです。


テュートン騎士団


さて。話戻って。二人が所属するテュートン騎士団。またの名をドイツ騎士団。正式名称は、ドイツ語でOrden der Brüder vom Deutschen Haus der Heiligen Maria in Jerusalem、ラテン語でOrdo domus Sanctæ Mariæ Theutonicorum Hierosolymitanorum、英語でOrder of Brothers of the German House of Saint Mary in Jerusalem。以前にもこのブログでは"Teutonic Knight"と略しており、もちろんそんな風にも呼ぶのですが、より正確には、"Teutonic Order"と呼ぶべきなのでしょう。

冒頭で管区長のヘルムート(初版ではコンラートでしたが途中で書き換えました^_^;)が解説している通りの歴史です。はじめは東方十字軍の一翼として、聖地奪還戦の中で病院として、やがて騎士修道会として発展。エルサレムの、とか、ドイツ、とかついていますが、むしろその存在は現在の多国籍企業のようなものでしょうか?領地もヨーロッパからアジアまでのあちこちにあり、本部も、途中、東地中海への足がかりともなり得るイタリアのヴェニスにおいた時期もあったそうです。


やがて、ハンガリー王アンドラーシュ一世に招かれてのトランシルヴァニア防衛(対クマン人戦)、ついでポーランド諸侯マゾフシェ公コンラト一世に招かれてのプルーセン平定(対プルーセン人戦)と、転戦。このあたりからは、多国籍企業の中でも、PMC(Private Military Company/民間軍事会社)のようなイメージも沸き起こります。

演目の中では、さまざまな部分がデフォルメ化されているので、考証的にはかなりいい加減なところもあります。正確には英語版Wikipediaを適宜ご覧ください。たとえば、ヘルムートの役職名としている「管区長」ですが、これは騎士団の中の何を指しているのか、曖昧にしています。この騎士団には、トップであるHochmeister(総長)の下、Deutschmeister、Landmeister of Prussia、後には第三のLandmeisterとしてLandmeister in Livlandの役職が設けられ、三つの分団によって統治されていました。さらにその下は、地域ごとに細かく分けられ、たとえばチューリンゲン、マールブルク、ザクセン、ヴェストパーレン、シュヴァーベン=アルザス=ブルグンドなどのいわゆるドイツ領域内や、ブランデンブルクやユトレヒトなどの辺境、果てはロレーヌ地方、オーストリア、ボヘミア、シチリアなどにも地域指導者がいました。これは、彼らの領地が地理的に一体ではなく、あちこちに飛び地的に存在していたからとも言えます。演目で使った「管区」「管区長」という言葉をあてはめるなら、この単位が適切そうです。しかし、ヘルムートはもっと小さ部隊と砦を預かる、辺境の小隊長でした。このイメージはむしろ、さらに低位の役職であり、Kommendeの長であるKomturのものです。12人の騎士を率いて、地域ごとに行政を行ったり徴税を行ったり。まあ、これも管区と言えなくはないですが…。

イチオウ、気を使ったのはテュートン騎士団の象徴である鉄十字章です。※某逆万字ではないのでご注意を!

以前より、ドイツ騎士団の騎士として存在していたspecialの騎士、このブログでは最後の総長アルブレヒトや、管区長ヘルムートを演じているキャラ。それからジークフリート君を演じたのは、新たに登場したfi?uresの十字軍兵士。これはどちらも、黒い鉄十字章を着けた、れっきとしたテュートン騎士団員、Teutonic Knightです。なので二人ともバッチリと、これでもかというくらい、この記号を撮影しました。しかし困ったのは、、、それ以上はいないこと。さすがに騎士団が二人では格好がつかない。

というわけで、もうひとりの団員、アルブレヒト・フォン・ニュルンベルク君は、本来はテンプル騎士団の騎士であるプレモに演じてもらいました。テンプル騎士団は赤い十字。そこで、これを写さないようにと心がけ、結果、アルブレヒト君は背後から、あるいは見返り姿ばかりの写真となっています^_^; ほか、騎士団員の人数不足は、衛兵や傭兵として、修道士(騎士)ではない一般兵士を混ぜたり、経済的な支援者でもあった、ハンザ同盟の前身ともいえる帝国自由都市からの援軍を登場させたりして補いました。

ちなみに管区長とアルブレヒト君は本来の姿から鉄帽を交換しています。本来の姿とは違う役だという意味で捉えてもらえれば。

最終話で解説したように、テュートン騎士団はプルーセンの平定を終えたのち、本来は彼らをバルトに招いた勢力であったポーランドや、その隣のリトアニア(これももともとは"異教徒"でしたが)と争い、勢力を拡大し、14世紀にその絶頂を迎えたと言われています。つまりテュートン騎士団の開拓の時代はちょうど極東のいわゆる"鎌倉時代"にあたり、全盛期が"室町時代"にあたるといえます。しかし、ポーランド=リトアニア同君連合、つまりヤギェヴォ朝との争いは次第に騎士団に不利となり、近世がやってくる16世紀には、もはや以前のままの騎士団としては存続できない政治外交軍事情勢下にありました。

そこで登場するのが、アルブレヒト・フォン・ニュルンベルク君と同名で、同族である(という設定の)、ホーエンツォレルン家のアルブレヒト・フォン・ブランデンブルク=アンスバッハ。母方の伯父がポーランド王であったために、ポーランドとの融和、あるいは、外交上の有利さを期待されて騎士団総長に推挙されます。そう、ドイツ騎士団の総長(Hochmeister)とは、絶対的な君主でも、もちろん(妻帯が禁じられ子孫はいなかったので)世襲でもなく、団員相互の選挙(?)で選ばれる存在、かつ、"first among equal"、すなわち同輩中の筆頭者、というべき存在だったそうです。

ともかく、ケーニヒスベルクにて総長となった彼は、団員の当初の期待とは大きく異なる外交政策に出ます。それは、カトリックとの決別、ルター派プロテスタントへの改宗、そしてポーランド王への臣従、世俗諸侯領化、世襲化。けれどもこの決断と果断な行動が、中世的な騎士団国家であったドイツ騎士団領を、旧い神聖ローマ帝国とは距離を置いた近世のプロイセン公国、近代のプロイセン王国、そしてドイツ帝国へと導き、ハプスブルク家主導による"大きなドイツ"ではなく、ホーエンツォレルン家を盟主とした"小さなドイツ"の成立をいざない、ひとつのヨーロッパではない、国民国家群としてのヨーロッパ、という歴史の一幕、いや二幕も三幕も、産み出すこととなったのです。もっとも、現代にいたってはふたたび、大きなヨーロッパ、という思想と、国民国家、という思想が、せめぎあっていますけれど。

リヴォニア帯剣騎士団


一方、もうひとつの騎士団として、演目中徹底した悪役^_^;となったリヴォニア帯剣騎士団。なぜ悪役としたのかといえば、演目でもふれた、戦闘におけるあまりの残虐さと苛烈な収奪(というWikipediaでの記載)から、ボウギャクな騎士団、という印象が強かったからです。もっとも、テュートン騎士団とプルーセンの争いも、かなりの激しさ(brutal)なものだったといいますし、これらは、外交戦、情報戦において、相手を悪く言うことなど常套手段なわけで、ホントウにリヴォニア帯剣騎士団がワルだったのかどうかは定かではありません。実際、騎士団創設者であるアルベルト司教によって建設されたリガを持つラトヴィアと隣のリトアニアでは、アルベルトやその兄ヘルマンを、ラトヴィアとリトアニアをひとつにした存在、という評価も存在しているようです。

この騎士団。ドイツ騎士団とちょっと違うな、と感じるのは、騎士団員の名前。といっても、二代に渡る総長の名前しかわかりませんでしたが、どうも、いわゆるドイツ貴族という気がしません。アルベルトとヘルマンは、その出身もわかっている、貴族の坊ちゃんなんですが、たとえば二代総長のフォルクィンは、どうも、folkとkin、つまり、「民」と「族」という言葉から来ているような気がします。これって本名なのか?もしかして名前はなかった、あるいは、名乗るべき名前ではなかった、のではないか?そういう想像から、総長フォルクィンをナゾの黒騎士として登場させました。

ただし、先に述べたようにホントウにアルベルト、ヘルマン、フォルクィンなどがヤバい人物だったのかどうかは何ともいえないため、あくまで、ヘルマンらしき人物、フォルクィンらしき人物、とするにとどめておきました。もしかすると、辺境の部隊が騙りをしていたのかもしれません。そもそも、この時期にリヴォニア帯剣騎士団がプルーセンの土地に来て、テュートン騎士団と競い合っていたということじたい、ここでのgeneの創作です^_^; そのため、この兵団は、リヴォニア帯剣騎士団の中でも半端者、あぶれ者のならず者集団、「鷹の団」としました。衣装も、帯剣騎士団の名の由来ともなった剣をあしらった修道士服がなかったので。。。最終的には、そもそも騎士ですらない、傭兵にすぎない、ということにして、騎士団の名誉^_^;に配慮しておきました。

なお、1236年に異教徒との戦闘に敗れ、総長が落命、騎士団は壊滅状態になり、結果、テュートン騎士団に組み込まれて分団として自治的な組織を維持した、というのは史実です。なんとなく、新撰組と水戸の芹沢鴨一党(の後半)を想いおこさせます。分団の長は、リーヴランドを管轄するLandmeisterとなったというのですから、それなりに権限も財力も維持していたのでしょう。


プルーセン


演目の中、翻弄される存在であったプルーセン。この民族は、古プルーセン人とか、古プロイセン人、古プロシア人、Old Prussianなどと称される民族で、公式には、ドイツ人の北方十字軍の中で消滅した民族とされています。もっとも、消滅と言っても、東方地域で人口的には圧倒的に多かったプルーセン人。すべてがシに絶えたはずもなく、ドイツ語、ドイツ文化、カトリックを受け入れ、つまり"ドイツ化"していった、というわけです。後に騎士団と争うことになるプロイセン地域の都市連合などは、プルーセン人の末裔の人々が多くいたでしょうし、現在に至っても、プルーセン人の裔を自称する人々もいるそうです。もっとも、言語としてのプルーセン語は完全に消滅言語となっています。バルト語派の中で残っているのはリトアニア語とラトヴィア語くらい。それも語彙の面ではドイツ語、ポーランド語、ロシア語などの影響を多大に受けて変化しています。

プロイセンという言葉がその後の近世、近代のドイツ史の中で何度も連呼されるため、われわれはプロイセン、プロシアと聞くと根っからのドイツのように感じるわけですが、もともとはその土地も名称も、ドイツとは別のものだった。これがgeneがこのあたりの歴史に興味をもったきっかけでした。

それどころか、このたび調べていて知ったのですが、いわゆるゲルマン人と呼ばれるような集団、つまり、ローマ帝国末期に中央、東、北ヨーロッパから地中海地域へ南下し、現在のドイツの半分以上を形成する基盤となった人々は、われわれがいわゆるドイツ人の風貌として思い込まされている金髪碧眼長身、長い手足、(前後に)長い頭という姿ではなかったというのですから驚きです。むしろもっと黒い髪だったり、背も低かったり。どちらかというとアルプス地方の人々の特徴と言われている姿に近いそうです。じゃあなぜドイツに、長身で金髪で碧眼の人が増えたかというと、スカンディナヴィアやバルトなど、更に北方の人々と長い長い歴史の中で混ざり合っていったから。これ知ってたら、かの悪名高きチョビヒゲのおっさんの言ってたことがホントにバカらしく感じます。民族なんて、人種なんて、そんな程度のもの。政治や戦争の都合で勝手にイメージが形作られ、しかしそのイメージが長らく定着して、人々に誤解を植え付けるもの。幻想の共同体に過ぎないもの、というよい証拠でしょう。("縄文人"、"縄文系"、"弥生人"、"弥生系"、"南方系"とかいうのと同じで。意味なし。)

プルーセン語を含むバルト語は、インド=ヨーロッパ語族の言語の中でも研究が比較的遅れている分野と言えます。それもそのはず。残っている言語が少ない。消滅言語についても史料が少ない。プルーセン語などは、ドイツ騎士団が地元の文化にあまり興味を示さなかったこともあり、記録が少ない。わずかに残る部族名や地名から、水に関係の深い文化、水の語彙の多い言語だったそうですが、これはバルト地域について、湖沼地帯や潟に住んだからでしょう。さらにその昔は、というと、もっともっと東、恐らくは黒海北岸や、さらには中央アジアあたりから(?)移ってきたはずですから。現在ではバルト語は、ゲルマン語、スラヴ語などとかなり近縁の言葉だったのではないかと言われているそうです。

言語だけでなく、その習俗や神話についてもわかっていることは多くありません。それゆえに演目では、空想に基づいてさまざまな脚色を加えました。その中で、若干史料に基づいているのが、ペコルス、ポトリンポ、ペルキューナスという固有名詞(発音は正しくないかも…)。これ、後の時代にドイツ人によって記録され、ローマ教会に報告されたプルーセンの古来の多神教(=異教)についての記録から採っています。プルーセン神話における、3人の重要な神の名だというのです。ただ、この記録じたい、信ぴょう性を疑う声も多く、リトアニアなどバルト系の地域では信じる研究者が多く、ドイツほかの地域では疑う声の方が主流だとか。そこでここでは、神の名なのか、実際にいた人物の名を神の名と誤認したのか、わからない、という設定にしておきました。

ペコルスは、白いターバン状の布(?)を頭に巻いた老人で、シの神、冥府の神とされています。そこで、帯剣騎士団の襲撃を受けてアタマにケガをして包帯を巻いていた男がそのペコルスだということにしました。老人ではないんですが^_^;長だったので。戦闘を担っていたことから、シにまつわる神とされた、と。ポトリンポは、頭から麦の穂(?)のような穀物をはやした農業の神のようです。そこで藁を運んでいるおっさんをポトリンポとしました。じいさんと呼ばれていますが実際には若者でした^_^; 

ペルキューナスは、北欧神話におけるトール、ギリシア神話のゼウス、果てはヴェーダの神話のインドラなどとの関連も期待される、雷の神です。金太郎の例を引くまでもなく、古今東西雷と言えば斧、鉞。雷は樹に落ちて樹を裂くから。ということで、これだけは実際に信仰されていた神としたうえで、部族に伝わる伝説の斧の名としました。ちなみにこの斧、刃の部分がクリアパーツでできている比較的新しいプレモパーツで、geneは、fi?uresのドラゴンの騎士で赤、ドワーフのセットで黒、そしてここで緑を入手。三本の斧ができる!?(笑)

実際のところ、プルーセンの神話はどのようなものだったのでしょうか?geneは、ドイツ人の記録に残された神話は少々アヤシイと感じています。なぜならそこにあるべきものがないからです。

オオカミの伝説とネウロ


それが、オオカミ。

狼男ワーウルフ、ヴェアヴォルフ。人狼伝説はヨーロッパに広く存在しますが、単純化していえば東がその源流とされています。ドイツの民話にも多いようで、プレモでもオオカミの頭巾のモチーフは長らく定番となっていますが、これ、ゲオブラ社本拠地のバイエルンよりもむしろ、ベルリンなどの北東部の伝説のはずなのでです。であればこれ、バルト起源ではないのか。少なくとも、いわゆる南部のゲルマン系やケルト系よりも、北部のゲルマン系かスラヴかバルトで強く流行していた神話であるはず。近年、ペイガニズムを見直そうという動きの中、喪われた民俗の風習として、獣人の姿で祝う祭りが、(創作といわざるを得ないものも含めて)中央から東部のヨーロッパでしばしばみられますが、geneはこのような風習がバルト地域にも存在したと思っています。

いや、古ゲルマン、古スラヴ、古バルトの共通の伝説、まだ3つの部族が明確に分かれるより以前からあった伝承、というほうが正確かもしれません。北欧のヴェアヴォルフはもちろん、ヴァイキングの伝説にあらわれるベルセルクのように熊の名を冠する半人半獣の存在もまた、同じ系譜にあると言っていいでしょう。つまり、こうした獣人伝承、狼男伝説の源流は、バルトよりもさらにさかのぼれると考えています。ではいったいどこまで?それは少なくとも、ネウロイあるいはネウリ/Neuriと呼ばれた、紀元前の民族まで。

ネウロイについての記録は多くありませんが、著名なヘロドトスの『歴史』において、スキタイの近隣に棲んでいたこと、対アケメネス朝ペルシア戦においてスキタイから持ちかけられた同盟話を断ったこと、一年に数日、狼に変身する、という風習があったこと、などが記録されています。

geneはこれを、ヨーロッパに存在する狼男伝承の源流と考えています。いや、もっともっとさかのぼれば、テュルク系の民族やモンゴル系の部族、チベットなどにある犬祖伝説、狼祖伝説とも関係がある、中央アジアからシベリアの狩猟時代の宗教がベースとなっているかもしれません。いずれにせよ、半狩猟半遊牧の生活を行っていた黒海北岸の民は、恐らくは勇猛で狡猾なオオカミの力をみずからに採りいれ、狩猟での成功を得られるよう、狼を崇拝し、それに変身していたのではないでしょうか。年に数日、ということはあるいは一定の年齢の子が行う通過儀礼だったかもしれません。遊牧生活が中心になれば、狼は家畜を襲う脅威にもなります。ゆえにこの風習はもともとはもっと古く、狩猟が生活の中心であった頃に始まったものではないかと推察します。

そこでここでは、ネウロイ/ネウリと古代のイラン系言語やギリシア語で複数形で呼ばれた民族があり、みずからをニンゲン=ネウロと呼んでいた、その中の長にあたる人物が、後に「ネウロ」という名の獣人として神格化され、長らく北東ヨーロッパの自然崇拝の中央にあった、という創作を産み出しました。

さらにこのネウロ、なんとあの"オオカミ"の力を持っており、かのビョルンと同じく、フシ。よって、この時代(13世紀)以前から存在しており、なんとローマ帝国末期の民族大移動時代にバルト諸民族を率いていた!その後、彼はある目的からシベリアの森林へ赴き、そのままチウゴク北部を通り、ベーリング海峡を渡って北米大陸に上陸。そこで白いオオカミの頭巾を被った砂漠の男に出遭い、やがてヴァイキング時代の末期にアイスランドまたはイングランドからやってきたビョルンとも出遭い、その話を聞いてビョルンの出発地に向かったところ、もといたバルトに戻ってきた!という、人類(?)初の世界一周者!!であると^_^;

さてさて、いったい何歳なのでしょうか。。。最低でも800歳。もし、その名が示すようにNeuriが記録されたヘロドトスの時代からいるのであれば1,700歳以上!?7月演目『海洋冒険譚~フェンリルの宝箱~』にて「少なくとも800年は生きていた」と言われたビョルンよりもさらにさらに長命!フシにして不死身!獣の敏捷さとナゾの睡眠時間!うーん、どんどん荒唐無稽になっていく。。。

"オオカミ"をめぐる冒険。

ヴェンド(現ポーランド)出身、クヌートに仕え、アメリカに渡ったビョルン。灰色の狼。現アリゾナ出身、まだまだナゾの残る、アメリカの男。白き狼。そして黒海北岸出身(?)、1,700年以上生きる男。黄金の狼。すでに三体が確認されていますが、ウワサでは、ツグマ・フォースが確認したように、石虎(シーフー)もオオカミとのこと。また、ロッソ家が、そして財団が追うオオカミとは?狼頭巾はまだあるのか?赤頭巾がある、とかいうオチでないことを祈りつつ…

…続きはまた。


銀河英雄伝説へのオマージュ


最後に。定番のキャラクター名解説をしておきます。

主人公ジークフリート・フォン・ローエングラム君の名前からわかるように、登場人物名の多くは田中芳樹さんの『銀河英雄伝説』から。geneの10代のバイブルと言ってもいい小説。政治も、戦略も、人間関係も、大事なことはすべて銀英伝から学んだ、という人は多いと思いますがgeneもそのひとり。未来の話、架空の戦記なのに、歴史のメカニズムについてこれほど学べる書物は無い。そして、ドイツ語の語彙も増える(笑)

ジークの姓は、銀英伝の主人公 銀河帝国ローエングラム朝創始者、皇帝ラインハルト・フォン・ローエングラムから。まあこの姓はラインハルトが後に賜ったもので本名はミューゼルなんですが。そして名は、ラインハルトの親友にして盟友、悲劇の準主人公、贈元帥ジークフリート・キルヒアイスから。うーん、いま思えば、ジークフリート・ミューゼルという名の方が下級貴族っぽくてよかったかな^_^;

ほか、騎士団の衛兵ウルリッヒは、帝国首都防衛の任を受けたウルリッヒ・ケスラー提督。リューベックから来た応援団パウルはパウル・フォン・オーベルシュタイン

傭兵のシェーンコップとオフレッサーは同盟に亡命した帝国貴族でローゼンリッター(薔薇の騎士)の隊長であるワルター・フォン・シェーンコップと、帝国門閥貴族の手先で戦闘狂の野蛮なおっさんオフレッサー。この二人、写真撮影時には双子の設定で、どっちも気のいいやつって感じで考えてたのですが、オフレッサーの名を着けたことによって、Sir. Porkadotが演ずる方がキラワレ者役となりました。ただ実際にはオフレッサーは単純な悪役ではなく、考えさせられる一面も持っているキャラクターなのです。

管区長ですが、最初、コンラートとしていたのを、途中からヘルムートに書き換えました。これはマゾフシェ公との区別をしやすくするためもありますが、主な理由は、同盟占領後の初代高等弁務官を務めたヘルムート・レンネンカンプにちなんで。ラインハルトの元上官であり、公正な人物で、戦闘ではそれなりの成果を上げたものの、政治家として、統治者としては二流、三流だったというところから、下級の管理職である^_^;管区長の名前にしました。

銀英伝の割には、肝心のロイエンタール&ミッターマイヤーの双璧コンビが出てこないぞ!と思われるかもしれませんが、実は隠しキャラ(?)として、両提督の旗艦が登場しています。そして併せて、皇帝ラインハルトの旗艦も。それが、アルブレヒトが語るゲルマン文化の源流として挙げられる3つの書物。『ベーオウルフ』『トリスタンとイゾルデ』、そして『ニーベルンゲンの歌』。これ、ヴォルフガング・ミッターマイヤーの旗艦が「ベーオウルフ(ベイオ・ウルフ)」、オスカー・フォン・ロイエンタールの旗艦が「トリスタン」、そしてラインハルトの旗艦は『ニーベルンゲンの歌』に登場する勇猛な姫「ブリュンヒルト」なんですねー。ゲルマン神話をベースに造られた旧帝国の世界観ゆえに、建造された戦艦の名前がこのようになっています。

"オオカミ"の話であるわりにはほとんどJOJO絡みはなかったこの演目。唯一の例外は、ヘルムート管区長。この方、きっと姓は、レンネンカンプではなく、シュトロハイムなんでしょう。だって、世界イチィィィ!って何度も叫んでますからね\(^o^)/

藁の家の管区長と、藁の神ポトリンポ(笑) これは偶然ですが、ヒニクです^_^;



以上、演目解説から語る、ドイツ騎士団、リヴォニア帯剣騎士団、古プルーセン人、狼男伝承。そして銀河英雄伝説でした。。。う、やっぱり長くなった^_^;

『獣の時代』---。果たして、獣だったのは、誰なんでしょうか。

それはいつも、歴史が決めること。おしまい。