Nov 2015 - 1892年12月
路上で商売を営む兄弟。どうやらこの日記の書き手は、その弟のほうであるらしい。かつてのゴロツキが更生して商売をはじめても、世間の風当たりは強いようだ。そんな男が出会ったフシギな娘。男の名は、アーサー、娘の名はジョセフィンと言った。- 1892年12月 -
12月23日
なんてこった。おれとしたことがいったい何をやってるんだ。
つい、あの娘のうちに行ってしまったなんて。。しかも、、ハラがヘってたからだなんて、誰にも言えねえ。
それにしても、あのうちは…
なんてデカいんだ!!
あれは、この界隈じゃ知らないモノのいない、変人だが大金持ちの、ジョースター卿とかいう貴族の館じゃあないか。どうりであのガキ、はぶりがいいわけだ。聞いたことがある。ジョセフィン・ジョースター。親父に似たのか、虫やらキノコやらが好きな変わったお嬢がいると、酒場で誰かがウワサしていた。あのガキがそうだったんだ。
あの屋敷なら、ブタやヤギやヒツジくらい、いくらでも飼えるだろう。馬だって何頭もいそうだ。そうか、おれたちが売ってるニクどもは、やつらにとってはこどものオモチャってわけか。やれやれ。
それにしてもデカかった…。あまりにデカいんで怖気づいて帰ってきたなんてことも、誰にも、もちろんアニキにも言えやしねえ。館に行ったことも黙っておこう。
12月24日
…ついに、館に入ってしまった。
メシは、なぜだか野菜ばかりだったが、うまかった。
いや、それよりも…
…。
…カミラ、と言った。
あのガキのガヴァネスなんだろうか。
はじめ、てっきり姉かと思ったが、あの口調は、使用人の口調だし、そういえば服も地味な色合いだった。屋敷の娘ではないということか。
それにしても、、、
美しかった。
ガヴァネスなんかしてるからには、チュウトハンパにカネ持ちの商家か、あるいは落ちぶれた貴族の娘なんだろうが、ジョースターのガキに劣らない、いや、それを凌ぐあの気品と賢そうな眼。
そうか、だからおれは、姉だと思い込んだんだろう。
カミラ。
また会えるだろうか。
…いや、何を言ってるんだ、おれは。バカバカしい。