2015年11月29日日曜日

Nov 2015 - ビョルン博士の考察 


アーサー・カニンガム。いや、アーサー・スピッツワゴンを襲った悲劇の一部始終。そして、スピードワンコの名の誕生。ビョルン博士は発見した手記を、いったいどう読んだのか?あとがきに代え、ブックマン・ビョルンによる論考をご覧いただきたい。


『「Personal Diary written by Arthur Cunningham」に関する考察』Dr. ビョルン・マグヌースソン


「わたしがスピードワンコ財団の書庫より発見したこの古ぼけた日誌には、財団の起源をほのめかす重大な事件が描かれていた。

この日誌の著者であるアーサー・カニンガム卿、いや、本来の名はアーサー・スピッツワゴン氏。パッケージ5344の写真で確認できる彼こそが、この財団の創始者、スピードワンコ氏その人であることを、いまやわたしは確信している。

わたしは当時の街頭写真の中から、恐らくは彼ではないかと思われる人物を発見した。写真の右に写っている緑の外套を着た人物が、それだ。左はおそらく、彼の兄であろう。

ヴィクトリア朝のロンドンの裏街の風景を写し取ったこの写真は、ペットショップという説とニク屋という説が以前からあったのだが、これこそがつまり「スピッツワゴン兄弟のアニマルワゴン」。

市民たちにとっては風体のわるい男たちが営むあやしげなニク屋であり、しかし、ジョースター家の一人娘ジョセフィンにとっては、優しいお兄さんたちのペットショップだった、というわけだ。




アーサーは、この事件のあと、日誌の最後に記されたように、追手、恐らくはカミラを畏れてその名をビミョウに変え、スピードワンコ氏と名乗ってアメリカへ移住した。

スーザンの故郷というのは、別な証拠から、恐らく、当時のアリゾナ準州。現在のアリゾナ州ナヴァホ族居留地近辺であろうと思われる。

そしてその後は、アリゾナ、コロラド、ニューメキシコなどを渡り歩き、なにかに憑かれたように各地を掘りまくった。やがて、中生代の巨大生物、すなわちダイノソアの化石を発見したことから財をなし、それを元に財団を設立。

以後は、アメリカのみならず、世界各地の土地を買い漁っては掘りまくる、というナゾの行動を行っている。

スーザンという名の娘については、すぐにわかった。何も隠されていたわけではないからだ。

それは財団の歴史を記した公式文書の中にあった。

スーザン・カニンガム。

氏の秘書として財団の運営に尽力した人物。そして、ロンドンのカニンガム家の女総帥として、初期の財団の経済面を支えた、後にアフリカの自然保護運動家として活躍する息子ネイサン・カニンガム氏を産んだ女。

巷では、スピードワンコ氏の愛人というウワサもあったようだが、それもそのはずだ。スピードワンコ氏自身が、カニンガム家の法律上正統なる後継者、ネイサンの父、カニンガム卿その人なのだから。

恐らくは、スピードワンコ氏とスーザンは、アメリカにおける逃避行の中で愛をはぐくみ、やがて、スピードワンコ氏のキズを癒すかのように連れ添った。氏は産まれた子にカニンガムの家名を継がせ、スーザンを女当主としてカニンガム家を何とか存続させたのだ。それはおそらく、裏街のやさぐれた兄弟にチャンスをくれたジョースター卿への敬意の現れ、カニンガム家への恩返しだったのだろう。

一方、その調査の途上、偶然にもロンドンからの逃避行の中に登場する人物たちを発見できた。

初期の財団メンバーたちの名が記された名簿をみつけたのだ。

マダガスカル出身の商人アブド・アル・スモーキーは恐竜化石をカーネギーメロン大学をはじめとする学術機関に高く売りさばいている。財団の海洋部門を率いていたジャンとピエールというフランス系の兄弟もいた。そして、スピードワンコ氏の身辺警護を司った、エリトリア出身のナイフの使い手、アル・ハザード。コードネーム、シティ・オブ・フラワー。

アル・ハザードについては詳細が不明だが、他の三名の名は日誌に登場する人物と一致する。おそらくアル・ハザードも、アフリカからの帰還の際にアーサーに従った人物であろう。

ジョースター家の遺児ジョセフィンについては、言うまでもない。1900年。20世紀もはじまらんとするその頃、18歳になった彼女はニューヨークでスコットランド移民の青年と結婚。二年後、息子のジェームズ=ジェイコブ・ジョースター、通称"JaJa"を産んだ。1933年に産まれたJaJaの子ジョンは、カナダへと移り住み、1955年にはフランス系女性とのあいだにジョルジュをもうけたが、直後に妻が他界。のち再婚し、1960年にはドイツ系女性とのあいだにハンナを得た。

ジョルジュ・ジョースターは、ジョー・ジョースターの父、すなわちジョシュア・ジョースターの祖父にあたる。この三人と財団の関係は言うまでもないだろう。一方ハンナは、夫が誰かは明かしていないもののJulie、JodyJackyという三人の娘に恵まれている。

新大陸で財団とも深い縁を持って活躍するジョースター一族は、アブドゥルとスーザン、そしてアーサーによってその命を救われたジョセフィンの子孫たちだった。

若きアーサーのやさぐれていた心を癒し、ジョースター家とカニンガム家、そしてカミラを結びつけた、運命の天使。そのスタンドは、What you gonna tell you .. like a Wheel of Fortune?



いやいや…


ところでわたしはこの日誌を読んだ後、当時のロンドンの新聞をかき集め、調査を行った。

当時、ジョースター卿とカニンガム卿の殺害はアーサーとスーザン、およびナゾの外国人海賊集団の共謀によるものだとして片づけられたようだ。行方不明のジョセフィンについてはしばらく捜索が続けられたが、身寄りのない身ゆえか、やがて誰からも忘れられていった。

カミラの消息については、どの新聞も触れていない。ただひとつ、タブロイド紙のゴシップ記者が事件を取材して、アーサーとカミラによる不貞、それを知ったカニンガム卿とスーザンによる複雑な愛憎劇を面白おかしく書き記していたが、特に誰の眼にとまった様子もなかった。


しかしわたしはそのタブロイド紙に幾つか、気になる記事をみつけた。


それがこれだ。

記事の日付は1901年8月。すなわち、アーサーたち一行がロンドンを脱出した三年後のことだ。

ロンドンの最貧民街で、奇妙な少女が保護されたという。発見当時、彼女は人語を解さず、ただ唸り声をあげるばかりだったという。それもそのはず、彼女を育てていたのは、界隈で恐れられていた巨大な野犬、恐らくはハイブリッドであったのだろう、輝く銀毛をした巨大な犬だったのだ。

8月に発見された彼女は、救済施設の人たちによってオーガスタと名付けられた。

彼女は犬やオオカミの乳を発酵させた食物しか口にしなかったため、救済施設がそのことに気付くまでにずいぶんと衰弱したらしい。しかし、彼女は衰えても衰えても、回復した。

いや、それだけではなくさらに不思議な力を持っていたという。何でも、どんなケガをしても、またたくまに傷が治ってしまうのだ。当時のロンドン市民は、奇跡だ、いや、悪魔の技だ、犬の仔の魔法だ、魔女だ、いや新手の伝染病だと騒いだようだが、これもすぐに忘れられている。

なぜなら彼女は救済施設から行方をくらましたのだ。

彼女の保護者であった犬が、ニンゲンを噛んだとかで咎めをうけてしまい、彼女は一晩中月に向かって吠えつづけた後に、消えた。

『ロンドンの狼少女はどこに!?』と題した記事を最後に彼女についての記録は消える。

わたしは苦労の末にその救済施設を探り当て、当時の記録を取り寄せてみた。それによれば、オーガスタは、発見当時、3歳か4歳ほどの姿にみえたという。


わたしが何を言わんとしているのか、おわかりだろうか。

突飛な考えだがそれは、同じタブロイド紙の片隅にみつけた3つめの記事を踏まえてもらえば、決してわたしの妄想ではないと、想像力豊かな読者諸氏には理解いただけることであろう。

この記事は旧い日付、ちょうど最初の「事件」があったころの紙面を調べていて、偶然にみつけた。


1886年10月7日。

その記事には、こうある。


「悩める産婆、出頭
  ~わたしは奇跡の子を取り上げた~」

昨夜、スコットランドヤードに奇妙な産婆が出頭した。彼女が言うには、シ産で取り上げたはずのこどもが次の日に息を吹き返した。しかし彼女は恐ろしくなってその子を裏街に置き捨てた。だが、ひと晩経ってみると、あれは神の子だったのではないかという気がしてならずに再び探しに行った。だがそこには、彼女がこどもとともに置き捨てた箱は既になく、犬が荒らした跡があるだけだったという。彼女はその子の悲運に泣き、おのれの所業の罪深さを悔い、みずから出頭したという。しかし警察では、そもそもその子がホントウに生きていたのかどうか確認できない以上、せいぜいシ体遺棄でしか起訴しえないこと、それも証拠不十分なことから、産婆を釈放した。産婆は涙に濡れて、リオデジャネイロ行きの船が停泊する港へ去って行ったという。」












ホントのあとがき


多くは語るまい。。すでにビョルン博士がすべてを語ってくれたのだから…。

ここまで、ずっと明かさずに来たジョースター家、カニンガム家、そしてスピードワンコ財団の由来を物語る一篇。そして、フクザツカイキに入り組んでしまったgeneのプレモたちの家系図を可能な限り矛盾なくまとめあげる旅^_^;


実は、スピードワンコさんは当初の予定では、5344に同梱されているもうひとりの人物、隻眼眼帯の彼となる予定でした。ただ、geneはこのパッケージ、所有していないのです。そう、カニンガム卿こと緑のコートの御仁は、ジャンク品として我が家にやってきたのでした。その後、コレクターズブックにてこれが5344だと判明し、5344そのものも探してみましたが、すでに一人いるのに買い足すのもなんだかなーということでいまに至るまでこのまま。じゃあ、いないままの眼帯クンを財団創始者とするのか!?それもなあ…というわけで結局、カニンガム卿=スピードワンコ氏という設定ができあがりました。

スピードワンコ財団の名は以前、スピッツワゴンと悩んだことがあります。このパッケージに描かれているワゴン。そしてとあるショップの店長さん(の書いたメルマガ)によれば、5344は肉屋説とペットショップ説とがあるらしい。なるほど。スピッツを積んだワゴン。いいじゃないか。しかし結局、もともとの名前を継承してスピードワンコとしてきましたので、ここで、スピッツワゴン氏が追手の眼をくらますためにビミョーに改名してスピードワンコ氏になったという苦しい説明を…。


いや、それ以上に苦しかったのは、登場人物の系図や年齢設定のつじつまをあわせる部分です。というのも、緑のコートのカニンガム卿に関してはすでに、孫娘のアン・カニンガム、リサ・カニンガムらが何度も登場していますし、ジョースター一族についても、大陸はアメリカとカナダで子子孫孫繁栄しています。一方、財団は財団で存続していなければなりません。何より難しかったのは、ほんの思いつきでやってしまった6月の『PBC地球伝説 ちいさなちいさないきもの』でやった細菌学者たち一家の扱いです!カニンガム=ウォルフ家って?オーガスタって?そう、オーガスタは、この頃、カニンガムの姓を継ぐべき人物として、かつ、(長命ですので)例の力を継ぐ人物として、産まれていなければいけないのですが・・・う、、、フツウに描こうとするとどうしても、お兄さんのほうの子になってしまうし、そうすると力を持っていることにしづらい…


そしてこのことから、カミラの性格設定が当初から激変します。そう、カミラは当初は単なる財産目当ての悪女になるはずだったのです!!家の事業が傾いたことからだんだんと性格が歪んでジョースター家とカニンガム家の両方の財産を乗っ取るためにカニンガム氏をそそのかすワルい女という設定。だってあのfi?uresの吸血鬼、顔がぐるっと回るとゴクアクじゃないですかー。

ところが、なんとかアーサーとのあいだに娘を成すようにストーリーを練り直した結果、この物語は、犯罪物語ではなく、男と女の物語(?)、ヒゲキのはじまりとなったのです。ええ、かなーりドロドロとしていますが…。




あともうひとつ困ったところと言えば、カニンガム卿はアフリカの大地溝帯の探検で名を成した人物、息子もアフリカの自然保護運動家。かたやスピードワンコ氏はアメリカ大陸で発掘事業の結果財を成した人物。同一人物とするにあたっては、アフリカ探検を若い頃の逸話とし、アメリカへと旅立たせるために(例の白い頭巾も関係していますが)スーザンが産まれました。スーザン、ウソつかない。彼女はズニの女の子という設定です。名前はスージーQより。

ところでこの演目、超キチョウなプレモが惜しげもなくチョイ役で登場しています(笑)

たとえばこの警部。これ、プレモの故郷Zirndolfの街の警備(?)の人。市制100周年記念限定プレモ。それからカニンガム卿の日誌とそれを書いた羽根ペンは、6099のマルティン・ルターのもの!そう、Lutherの文字が写真に写っていると思います^_^; 最後に執筆中に日誌をたてかけていたのは、6107、画家デューラーのこれまた限定パッケージに入っているものです。入手以来、だいじに飾ってきました。ルターは9月の演目『獣の時代』にもパッケージ写真だけが登場しています。が、ここで一気に開封!!うーん、どきどきしました。でもメインキャラはまだあまり出ていないという^_^;

以上、この物語がなぜこんなにも入り組んだややこしい話になってしまったのか。という説明。そう、これまで無邪気に繰り広げてきたいろんな家族たちを一本の樹にまとめあげるための、くるしい、くるしい、演目でした。。

でも写真はかなり気に入っています。このたび初、オールiPhoneによる撮影、そして、Google Photosの機能でレトロカメラやモノクロ、ドラマ仕立てなどのフィルター効果を加えて使用しました。サイズも、縦横比1:1で統一しています。(ビョルン博士のぞく。)

ではでは、またの機会に…

…いやいや、ではなくって。まだひとつ残っていますよね。実際にはこのあとがきよりも前に公開されていますが、そう、ビョルン博士もまだ気が付いていない事件の真相、そしてもうひとつの男と女のフクザツさ。そう、ヒトの気持ちとか、好きとか嫌いとか、受け入れる受け入れない、結婚するしない、なんて単純に割り切れるもんじゃありません。いろんな状況やその時々の心の行方がフクザツに絡み合った結果、思いもよらない歴史を紡ぐものなのです。実はそれこそが、何よりも哀しく、恐ろしく、そして美しい物語なのかもしれませんが。

では、眼をつむらず、次のページもご覧ください!!

あ、そうそう、その前に、カニンガム卿ことアーサーの持ち帰ってきたガラクタもとい遺物の中でどれが事件に関わったのか、皆さんはもうお分かりだと思いますが、そうでない方はじっくりと写真をご覧ください。これ、7月演目『海洋冒険譚 ~ フェンリルの宝箱』に登場した3つとはまた別のものになります!\(^o^)/その由来は、ほんとにこれこそ、次回以降請うご期待です。では、ご覧いただきありがとうございました。