2014年1月15日水曜日

Jan 2014 -後編-


新年の劇団プレモ座は二部構成。

前編の「帝国の夜明け」(原題『ルビコン河の最果てに・・・』)に続くのは、
「沈む夕日」・・・。

おごれるものはひさしからずや
たけきものもつひにはほろびぬ ただかぜのまえのちりにおなじ・・・

寂寥感ただよう年明けとなってしまいましてごめんなさい^_^;
そして石像モビファンのみなさん!さらにごめんなさいっっっ!!!

でも目をそらしてはいけない!そこに歴史がある限りはッ!


というわけで『落日』、はじまりはじまり~

落日のローマ


傭兵隊長 オドアケル
傭兵隊長「・・・なんてザマだ。

これがあのローマとは。

なんともあわれだな・・。」



闘士あがりの兵士「おい!オドアケル!きさま降りてこい、寝返りやがって!この裏切りモノめ!!勝負だ!」

傭兵隊長「やれやれ。

闘技場では一度もオレに勝ったことのないお前が、いまではローマの兵士気取りか?傭兵もナメられたものだな。

おい、コゾウ!ローマの犬に成り下がったか!スパルタクスが泣いてるぞ!」



闘技場から逃げ出したイフリキヤの獣たち

傭兵隊長「見ろ!このローマを!これが現実だ。蛮族どもにじゅうりんされ、獣があふれかえるこの荒れ果てた都が、いまのローマだ。もはやかつての栄光を取り戻すことはできん!

時代の流れなのだ!




ならばわたしは、その流れに押し流されるのではなく、
流れに乗り、時代を創ってゆきたい!」

ガリアからきたケルト族

ケルトの族長「おうともよ!

もうシーザーはいない。
ハドリアヌスもいない。

これからは
おれたちの時代よ!

ウェルキンゲトリクスの夢が
ついにかなったぞ!」

幌馬車できた?ゲルマンの一派


ゲルマンの族長「フン、

ひよりみどもが
はしゃぎやがって。

時代だと?笑わせるな。

この世界をいただくのは
おれたちだ。

ローマもガリアも
リビアもブリタニアも
すべてな!!」

だがその前に、まずは・・・この気取った古いものを、、、ぶっこわせ~~」


ローマの栄光、ついえたり~

ローマの将官「こら、やめろ!

モノを壊すな!
神像を倒すな!
このゴスめ!
ヴァンダルめ!

お前たちの要求はなんだ!
貴重な品々を
壊して何になる!?」

ローマの兵士「隊長、
ここはわたしが!」



オオカミの衣装を着るバルトのプロイツェン族

バルトの族長「ん~??

ちょっと遅れちゃったかなあ?

盛り上がってるねえ~

でもみなさんご自宅、
だいじょうぶ~?
いつまでも留守にしてたら
おれたちプロイツェンが
もらっちゃうよ?
いいのかな~


ハッハッハ!」

白旗・・・


ローマの将官「う、うう。。。

だめか・・・

いまのわれわれでは
勝てん

この新しき者どもの
勢いに勝つことができん

われわれは
老いたのか・・・」




・・・S P Q R・・・

SENATUS
POPULUS
QUE
ROMANUS

・・・元老と市民の
      ローマ・・・


それがいまや

・・・ケモノと蛮族の
      ローマ・・・



 
いや、しかしローマはまだ終わらない!

皇帝ユスティニアヌス

発祥の地、ローマをうばわれ
西の世界をゲルマン、ケルトに
うばわれようとも

ガリアの
ヒスパニアの
ブリタニアの
ゲルマニアの
イフリキアの

属州を喪おうとも


東はギリシアの地で
いまいちど
繁栄を!!

美しき
コンスタンティノープルで!



・・・かつて山河あり  王国あり

  その王 はるか赴きて

 帝国を奪いたり


 王は旅に生き 旅に消え



   やがて王国も消えゆく


  ヘレネスの息吹を遺して・・・




・・・かつて山河あり 海あり

統べること 幾千里

栄えること 幾星霜


やがてすべては塵に帰す

やがてすべては砂と化す

されどそこには遺されむ

確かに築いた石の街!

確かに磨いたヒトの智慧!!
確かにつないだヒトのたましいが・・・。




エピローグ -島-


聖剣エクスカリバー!?
ブリタニア駐屯軍の士官「んーーー・・・
えいっ!!やった!!!抜けたぞ!ついに抜けた!伝説の宝剣を抜いたぞ~おれが、おれがもらった~。

おい、ガウェイン、ガウェイン!

・・・グワルフマイ!!

抜けたぞ!」








「アーサー!アーサー!酒~」
酔っ払い「ヒックヒック。

おい、アーサー、酒よこせ~

エールもっとくれ~」

士官「アーサー言うなよ。

おれの名は
アルトゥリウスだッ。
ちゃんとラテン語で呼べよ!」

酔っ払い「けっ。
おおげさな名前だなぁ。
めんどうだからアーサーさ。

そういうお前もおれのことも、グワルフマイっていいづらいんだろ?(笑) 
まあいいや、ガウェインってことにしといてやるからさ・・・・ビールビール!!」

士官「やれやれ・・・。」



---のちにあの女王ヴィクトリアを産み出すこととなる
               とある島でのとある午後の出来事---



Deus ex machina


- finis -


エンドロール

  • 傭兵隊長オドアケル : 4653 グラディエーター(special)
  • 闘士あがりの兵士 : 4270 古代ローマ軍のコロシアム より 剣闘士A
  • ケルトの族長 : 4572 ケルトの戦士(special)
  • ゲルマンの族長 : 4677 部族の族長(special)
  • バルトの族長 : 4644 オオカミ戦士(special)
  • ローマの将官/騎兵 : fi?ures series 4 ボーイズ 6 ローマの騎士
    • 騎馬 : 4272 古代ローマ戦士と馬より
  • ローマの兵士 : 4659 青マントのローマ戦士
  • ローマの将校 : 4560 古代ローマ 百人隊長(centurion)
  • ローマの将軍 : 4272 古代ローマ戦士と馬 より
  • ローマの皇帝 : 4270 古代ローマ軍のコロシアムより 執政官クラウディウス=マキシムス
  • コンスタンティノープルの皇帝ユスティニアヌス : カスタム
    • 本体 : 4696 ドラゴンプリンス(special)より
    • 兜、盾、剣 : 4659 青マントのローマ戦士 より
    • 首飾り : 4592 原始人より
    • グラス of ワイン : fi?ures series 2 ガールズ 4 ヴァンピレス より
  • アレクサンドロス(友情出演) : カスタム
    • ボディ等 : 4659 青マントのローマ戦士
    • 有角のヘルメット : 4436 バッファロー軍の兵士 より
    • ファラオの王冠 : 4651 クレオパトラ(special) より
    • カツラ、荷袋、弓 出元不明
  • 建物協力 : 4270 古代ローマ軍のコロシアム より
  • 神像 : 4270 古代ローマ軍のコロシアムより 神像A/B a.k.a. 石像モビ
  • アニマルアクター
    • ローマの士官の馬 : 4272 古代ローマ戦士と馬 より
    • ローマの将校の馬 : 4272 古代ローマ戦士と馬 より
    • ライオン : 4270 古代ローマ軍のコロシアム より
    • トラ : 4270 古代ローマ軍のコロシアム より
    • ハイエナ : 7978 2匹のハイエナ(add-on)
    • アレクサンドロスの愛馬ブケファロス : 不明。ネイティブアメリカンシリーズ より。
  • ローマのブリタニア駐屯軍士官 アルトゥリウス : カスタム
    • 本体 : 4272 古代ローマ戦士と馬 より
    • 聖剣エクスカリバーと盾 : 5493 ドラゴンと宝物 より
  • ブリテン島の戦士 グワルフマイ : カスタム
    • 本体 : fi?ures series3 ボーイズ 12 闘士 より
    • ビアマグ : 不明。バイキングシリーズかと。
    • 宝箱 : 海賊シリーズ より
    • ドラゴンの神像 : 5493 ドラゴンと宝物 より

あとがき

ローマ帝国、後編は、すこしさびしいローマの陥落をテーマとしています。いわゆる、"ゲルマン人傭兵隊長オドアケルによるローマの占領"を、"pax fantasica"なりの解釈で表現してみました。なお、実際のオドアケルは剣闘士出身ではありません。その正体はナゾにつつまれており、ゲルマン諸族の出身説や、フン族のアッティラの外交官を務めた人物の子であるとの説など、さまざまです。

時代的には西暦476年。ローマはオドアケルの反乱によって破られ、皇帝ロムルス・アウグストゥルスは帝冠を奪われます。やがてオドアケルは帝冠を東ローマの皇帝に対して返上。ここに西ローマ帝国はついに幕を閉じます。

イタリア王となったオドアケル。しかしその後、ロムルスによって追討の宣旨が下り、ゲルマンの一派、オストロ=ゴス族(東ゴート族)テオドリックによって攻められます。三日天下でした・・・。


この時代のローマの衰亡に関しては、いわゆる"ゲルマン民族大移動"が語られます。しかし現実には、ゲルマンだけでなく、ヨーロッパ中央部、ガリア属州に多くいたケルト族や、バルト海沿岸、現在のポーランドやリトアニア、ラトヴィア地域のバルト諸族、それにバルカン半島のスラヴ族、あるいはこれらを押し出した遠因ともいえるフン族など、さまざまな部族がヨーロッパ大陸全域で移住と興亡を繰り広げました。ゲルマン族なのか、ケルト族なのか、よくわからないままの部族もあります。たとえば、プレモゆかりのバイエルンは、かつてはゲルマンの居住地と考えられてきましたが近年、じつはケルト族のほうが主流だったことがわかってきたそうです(出典失念)。南ドイツの文化は、ゲルマン源流だけでなくケルト源流のものも深かったのかもしれません。

なおウェルキンゲトリクスというのは、かつてカエサルの時代、現在のフランス中央部にあたる地域でローマ軍の侵略に抵抗したケルトの英雄。彼の敗北により、ガリア戦争はカエサルの勝利に、そしてカエサルの栄光に終わったのでした。

ところで、この作品ではゲルマンの族長とケルトの族長がローマの建物を破壊し、神像を倒して踏みつけるなどの蛮行を行っています^_^;が、"蛮行"を英語でいうと vandalism。この言葉は、この時期、ヨーロッパから対岸の北アフリカまでで活動したヴァンダル族に由来するそうです。geneがこどもの頃は、ゲルマン諸族の1つとして教わった記憶がありますが、その後の研究で、出身地、系統ともにさまざまな説が唱えられています。要は系統不明。フクザツですね。イベリア半島のアンダルシア。あれはもともとVandalusiaと言って、ヴァンダル族が名の由来となっているそうです。

バルト諸族についてはgeneも最近知ったばかりなのですが、そのきっかけは"ライカンスロープ"、いわゆる狼男について調べていた時でした。なんでも、古代ギリシアの時代に書かれた書物に、黒海の北のほうに、季節が来ると若者がオオカミに変身する部族がいるとの記述があるとか。。これです。オオカミをトーテムとし、獣化の儀式を通過儀礼としていたのでしょう。そしてこの部族、後にはるかバルト沿岸まで大移動を行い、のちのプロイツェンなど、バルト語派の言葉を話す諸族のベースとなっているようなのです。ちなみにバルト語派とは、リトアニア語、ラトヴィア語、古プロイセン語(消滅)などを含むインド・ヨーロッパ語の一派です。だとすると、ベルリンを含む北ドイツには、彼らの伝統が脈づいているかもしれません。

それでプレモ、オオカミ戦士、オオカミ騎士団、多いのか~!?
フードとオオカミのお供、納得です。

というわけで、「4644 オオカミ戦士(special)」を、バルト人の一派プロイツェン族の族長として、登場させてみました。廃墟の上からオオカミとともにのぞきみる姿、りりしいです。


こうして、フランス、南ドイツ、北ドイツの(まじりあってのフクザツな)源流となった3つの"蛮族"を登場させたところでふと。お?UKは? --- ということで、誕生しました。アルトゥリウス君です。

よく知られた「アーサー王伝説」。ケルト、ブルトン、新しい宗教などさまざまな要素がまじりあって生まれた中世の騎士伝説ですが、一説にはその源流は、ブリタニアに駐屯していたローマの将校アルトゥリウスにあるとも言われています。

そう、ブリテン島、この当時はブリタニアと言われるローマの属州だったのですね~。いまもハドリアヌスの長城が遺っています。 ロンドンは、ローマ植民都市ロンディニウムとして建設されました。もちろん、ロンドンだけではありません。パリはルテチア、ウィーンはウィンドボナ、そして(プレモファンにはよく知られている)"東方三博士"つまりマギ遺体が安置されているといわれる大聖堂のあるケルンはコローニュ [ラテン語で植民都市という意味。つまりコロニー。] という名のローマ都市でした。


しかし、このように拡大と繁栄を極めたローマも、この時代、西半分においては消滅してしまいます。そしてここからが中世のはじまりはじまり。現在のヨーロッパの基礎が築かれていきました。

東では?いわゆる東ローマ帝国、ビザンツ帝国、ギリシア帝国などと呼ばれた、コンスタンティノープルを都とする勢力が残りました。ちなみにこれらの呼び名はあくまで後世の歴史家たちが便宜上そう呼んだもの。彼ら自身はあくまで、「ローマ帝国」として、帝国の西半分を蛮族に奪われながらも存続。1453年、オスマンの勢力によって都が陥落するまでのミレニアム、ヨーロッパの文明の中心地であり続けました。


SPQR。これ、ローマモノには必ず登場する図像(?)ですね。SENATUS POPULUS QUE ROMANUS。つまり"ローマの元老院と市民"。すべてのローマの人々、という意味だそうです。[注:本文の詩(?)では逆になっていますが、~のローマ、ではなく、ローマの~、が正しいです。]

巨大セットにも入っておらずがっかりしていたのですが、偶然!!プレモランドさんでジャンク品として、100円で出ていたのを発掘!いや~まさに、ローマの遺物発掘の瞬間でした。


ところで・・・、12月の演目『続・欧亜戦記! -女王陛下と7人の皇帝-』。そこに登場する王侯たち10名のうち、6名が、今回の廃墟の中から生まれ出たパワーの末裔という設定になっています。

皇帝ボナパルトはケルトの族長、あるいはゲルマンの族長の。
テレジア大公と神聖皇帝ヨーゼフ=マクシミリアンはゲルマン、いや、おそらくケルトの族長の。
フリードリッヒ大王はゲルマンの族長とバルトの族長、両方の流れを汲んでいます。ちなみにその途中には『欧亜戦記』に登場したアルブレヒトがいます。
ツァー=アレクサンドルは、文明の系譜という観点から、皇帝ユスティニアヌスの後裔だということにしておいてください。ということはメフメト宗主がライバルですね^^

最後に、女王ヴィクトリア。アルトゥリウス君とガウェインたちのずっとずっと先の時代のお話。。。



おしまい