Dec 2014 - p14/p24 -
第十四章 大同盟
ざわめく世界
しかし勝てるのか。相手はあのオーラヴ。しかも最近、またでっかい船を造ったらしいじゃないか。長蛇号?ロングサーペント?つまりオルメン・ランゲ?っての?
だいじょぶだいじょぶ!なにせこっちは、デーンの双叉髭王スヴェン・フォークビアードとそれに従うスウェーデンの王子オーロフ・シェートコヌング、ラーデ伯のエイリーク・ハーコナルソンの三人が組んでるんだぜ。
思えば奇跡の同盟だけどよ。
なんでもやりてのシグリッドって女がその力を開放して、ありのままの大同盟をつくり上げたらしいぜ。少しも寒くないさ。
アリのママってなんだ?女王蟻のことか?女王だけに?
ばか。まあとにかく、いざとなればシグリッドの実家のヴェンドも援軍にくるってウワサだ。
す、すげーな。大戦(おおいくさ)だな。
おう、しかもな、今回は待ち伏せときたもんだ。
そんなに簡単にひっかかるか?
だいじょぶだいじょぶ!なんでもオーラヴのことをよく知ってるやつが、こっちに寝返る算段らしいんだっ!!
裏切りの傭兵
-数日前-
なに!シグリッド、わが妻よ、あの男の力を借りるだと!うーむ、わしは気が進まんな。なにせあやつはわしを二度もたばかったのじゃ。おのれ、ヨムスのならず者め。思い出すだけでもハラが立つ。ムキーーー
聞いています。一度目はかのハーコン・ヤールとの戦いにおいて逃げ出し、二度目は病気とだましてあなたを船に招き、そのまま捕虜にしたとか。
うむ、おかげでわしは、ヤールには敗れ北方中に恥をかく羽目になるし、二度目は二度目で貢納するのしないのでモメておったミシェコ殿に迫られ、同盟を結ばされることとなった。嫁まで押し付けられて。もちろん貢納も免除したわい。いや、お前の前で実家や妹君のワルクチは言いにくいが…
いいではありませぬか。それゆえにあなたはわが妹グンヒルドを得て、こうしてかわいい世継ぎも得られた。ケガの巧妙というもの。言い換えればシグヴァルディはあなた方の仲人であり、この子たちの産みの親のようなもの。
い、いや、産みの親はわし…
あ、これっ、ハーラルっっ、なんじゃその服はっ!
もらったー。ちゅどどどーん、しゃるるまーにゅだじょーーーー
伝説のフランク王 シャルルマーニュ |
えー、フルール・ド・リス、かっこいいのに~
フランク語はやめんかっ!
にいちゃんおれも着たいー じゃあそのコップと交換だ!
それはイヤー!だってノドかわくんだもの!
クヌート、おまえいっつも水飲んでばっかりだなあ(笑)
へへへ(笑)
(やかましい子たち。うちのオーロフよりも元気がいいのがまたハラがたつわ。)
もとい。それよりオーラヴです。あの男は、わが妹と交換でデーンから父の元へ嫁いだはずのタイラ王女をたぶらかし奪ったそうではありませんか。タイラ王女、つまりあなたの妹を。
そ、そうなんじゃ!あの男め、あろうことか持参金まで奪うとか言ってるらしいな。あの、たらしめ!
そうです。やつこそが敵。シグヴァルディなどにめくじらを立てている場合ではありません。
確かに…。
さーすが氷の女王、冷静だ。
何か?
い、いや。
それにシグヴァルディは今回ばかりは信用できます。なぜならやつはいまオーラヴを極めて恐れているはず。かつて彼らヨムスの者が旅の途中でオーラヴを裏切ったことを、オーラヴがしつこく恨みに思っているのを彼も知ってるからです。オーラヴが急速に旧き神々への信仰を捨てたのもあの件が原因とも言われるほど。オーディンとトールに身を捧げたヨムスのヴァイキングは、いずれオーラヴの討伐を受けることを何よりも恐れているはず。いまがチャンスです。
よし、わかった。シグヴァルディと手を結ぼう。過去は水に流すっ。
.. To be continued.