Dec 2014 - p18/p24 -
第十八章 ポーランドの王
冒険の小舟
兄上、こっちでよいのですね?
ああ、マツガイないヨ。こっちがヴェンドだ。ボレスワフ公の領地だ。母のいるところだ。(って、ホントは迷ってるけど、、弟を不安にさせちゃ兄失格だから黙っていようっと…)
はあはあ。はあはあ。
イングランドから漕ぎっぱなしだし、疲れたな。
あ、兄上、あの灯りは!?
(ホッ、よかった~(T_T)) |
大人の階段
ボレスワフ殿下のおなーりー。
よく来た。おまえたちが小さなシフィエントスワヴァの子か。それに、もうひとりの大きなシフィエントスワヴァ、あのはねっかえりの北方かぶれに育てられたとな。
は、義母上をワルく言わないでくださいっ
はっはっは。ワルく思うな。かつてスヴォルドの海戦のおり、シグヴァルディを通じて父とわしをも動かしたあの才覚、女にしておくには惜しいと思っておったよ。いや、女は政略結婚の道具かと思っていたがなんの、あの娘は王に値した。なんでも高慢王などと呼ばれておったらしいな。はっはっは。
おじさん、それより、力を貸してほしいんだ。
なに?それはまたどうしてだ。
師匠が、いや、トルケルが…のっぽのトルケルが裏切ったんだ!あのヤロウ、やっぱりヨムスヴァイキングは信用できないよ!
ほう、シグヴァルディの弟、第三代ヨムスヴァイキング総長のトルケル・ザ・トールか。確かお前たちの剣の師を務めた後、いまはお前たちの父であるスヴェンの命を受けてイングランドを攻めまくっていると聞いたが。
そ、それが、あいつ、父さんの留守中の遠征司令官だったはずなのに、父さんがイングランドに戻ると同時に、イングランドのエゼルレッドに寝返ったんだ!あれほどエゼルレッドをバカだって言ってたのに、おかしいよ!
ふーむ。おおかた、イングランドでみずからの力をつけ、そろそろ一国の…とでもたくらんだところを、スヴェン殿が戻ってきたので、利権を奪われたとでも思ったか…。それともほかに有望な主君でも見つけたか…。で、わしにどうせよと?
僕らもう一度シュッペイするんだ!父上を助けに。お御輿にかつがれての従軍じゃなくって、ホントの戦いにいかなきゃなんだ!だけど、僕らの兵ってのはまだなくって…。だから、ヴェンドの兵を貸して!おじさんの軍を僕らに貸して!
はっはっは!ムチャを言う子たちだな。おいそれとそんなことができようか?え?
もちろん、タダでとは言わないよ!僕たち、これから北海の帝王になるんだ!その時、母さまが帝国の母后になれるよう、連れ帰ってお父さまとのあいだを取り持つよ。お父さまはシグリッド義母さまにゾッコンだったけれど、お義母さまはもう亡くなったし、父さまいま、きっと信頼していたトルケルに裏切られてショックを受けてるよ。いまなら、もう一度お母さまのことを受け入れ、きっと仲良くできるよ。そしたらおじさんは、北海の帝王のおじだよ!母后の兄だよ!
わしはそなたらに助けてもらわずともほれこうして、ポーランドの公爵じゃ。
おじさん、いまポーランドって言ったね、ヴェンドじゃなくて。知ってるよ。おじさんいま、南の帝国とモメてんでしょ?貢納しないって言って、皇帝のハインリッヒ二世と闘ってるそうじゃない。つまりもうヴェンド公じゃなくって、ポーランド王になるんだ、ってそういうことでしょ?
う、うむ。こどものくせによく知っておるな。
だから、それをおれたちが助けるよ。神聖ローマ帝国がなんだ!おれたち北海の帝国は、おじさんを支持するよ!デーンとヴェンド、いや、大ノルデン皇帝とポーランド王の同盟さ!
ふーむ。これは素晴らしい。大きなシフィエントスワヴァ(シグリッド)め、よき子を育てたな。おとなしい小さなシフィエントスワヴァ(グンヒルド)ではこうはいかなかったろう。父ミェシェコの頃から悲願だったゲルマンどもからの独立、そのための北方との同盟を、シグリッドはちゃんと理解し、それをこの子たちに教えていたか。
よしっ!わかった。兵を出そう!しかしそなたたちの木端舟では兵を載せられまい。あやつを呼んでやる。誰か!誰かある!ラーデに遣いを出せ!ラーデのヤール、エイリーク・ハーコナルソンを呼ぶのじゃ!
.. To be continued.