2014年12月24日水曜日

Dec 2014 - p24/p24 - 


第二十四章 -終章- ノルマンディーの末裔    



婚礼


婚礼!婚礼!



ハインリッヒさま、グンヒルダさま、ご婚礼!!

グンヒルダ、よろしく。
(あれ?ちっちゃい頃の絵をみせてもらったら金髪だったけど、大きくなったら茶色になったんだね。父上も母上も金髪だったのに、どうしたんだろ??ノルマンディーとデーンの子だからてっきり金髪だと思ってたんだけど…ま、いっか。)

ハインリッヒさま、よき世をつくりましょう。


皇帝陛下、万歳!

バイエルン大公、シュヴァーベン大公、ブルグンド王、ドイツ王を歴任され、ポーランド、ボヘミア、ハンガリーの諸王国にもその権威を(渋々ながら^_^;)認めさせた、真の皇帝。歴史上最強のドイツの王、並び立つものなき、栄光の神聖ローマ皇帝、ハインリッヒ三世陛下、万歳!(賛辞、なげーーー)


皇妃殿下、万歳!

おめでとう。
グンヒルダ。

あら、ハーテクヌートや、
馬から降りたら?

うむ。うま。



…。つまらないわ。
  母はかなしい…。


いや、、サガです…。






デーンの伝説の王ハーラル藍牙王(ブルートゥース)を曾祖父に、その子スヴェン双叉髭王(フォークビアード)を祖父に、そのまた子クヌート大王を父に。

そして、ノルマンディーの娘にして先のイングランド王の元妻たるエマを母に。

つまり、現デンマーク王たるハーテクヌート殿の妹御、ってことね。


北海の帝王クヌート一世と、イングランドの聖女エマさまとのお子か。

デーン、ポーランド、ボヘミア、ハンガリー、そしてイングランドの血を引く不思議な血統のお姫様ね。


それってつまり、ヴァイキングとスラヴの田舎娘ってことでしょ?

おいおい…。

宮廷でしっかり恥をかくといいわ。

…。













北と南の絆


姫君、姫君、ご生誕!


イタリア遠征中の陛下の隊からの報せだ。グンヒルダさまが無事出産された。女の子だそうだ。


ハインリッヒさまとグンヒルダさまのお子は娘御だ~

ほっ。よかった。

あーあ。女の子か~。これで南北合従連衡は、一時棚上げだな~

いいさいいさ、しばらく大戦はないってことさ。




-6か月後-


皇妃の忘れ形見


--グンヒルダ、逝去…--


あなた、短いあいだでしたが、わたくしと過ごしてくれてありがとう。

な、何を言う!おまえがいてこそのわたしだった…。




楽しかったです。ベアトリスを、良き子に育ててください。そしてできればあれを、信仰の道へ導いてやってください。。。争いのない、静かな世界へ。。。

さようなら…


グンヒルダ!!







聖女ベアトリス


-そして7年後-

ベアトリスよ、アデレードさまをご存じだな。


あのコワい修道院長のおばあちゃんでしょう?



何人もの王さま候補にダメ出ししたコワいおばあちゃん、ゾフィーとアデレードって言ったら、お城でみーんな知ってるよ!

これこれ^_^;まあそうなんだが。あのおばあさんが亡くなった。ついては彼女が長を務めていた二つの修道院、ガンデルスハイムとクエドリンブルクだが、これをそなたに任せたい。そなたを修道院に。これは亡き母、グンヒルダの望みでもある。



えーーーーーー!
若いみそらで出家!?




うむ。そういうと思った…。やはりやめておくか。まだ早かったな。。。すまぬ。



ううん、父上、わたし行くわ。わたし、そこで本を読んだりいろいろと考えたりしたいわ。


いろいろあったもの。ブルガール、ボヘミア、ポーランド、スウェーデン、デンマーク、ノルマンディー、イングランド、そしてドイッチェラント。ううん、ノヴゴロド、ノルウェー、アイルランドも。とにかく、たくさんのことがありすぎたの。少し休みたいわ。




???ベアトリス???何の話をしているんだい。


ううん。お父さまには関係ないの。ビアゴダさま、ドブラフカさま、二人のシフィエントスワヴァ、つまりシグリッドさまとグンヒルドさま、それにエマおばあさまにグンヒルダ母さま。

アロギアさん、ゲイラさん、ギダさん、タイラさん。あと、エルギフさんもね。









母さまから教えていただいた、ありのままの女のお話よ。

???何の話だ???蟻のママ???おまえ、やっぱり修道女よりも女王になりたいのかい?

いーのいーの。
おじさんには関係ないのっ!





お、おじさんって…。最近ファーターに冷たいんだね、ベアトリス。

だっていっつも戦ばっかり。つまんなーい!戦争、ハンターイ!

さ!わたしは出発の準備をするから!忙しい忙しい。お父さま、いいえ、陛下も忙しいんでしょ。ローマは一日にしてならず。されど帝国は一日にしてほろびるって、おばあさまたちが言ってるわよ。おぼっちゃんでエリートなファーターは、足元すくわれないようにほら、がんばってね!

うわーーーー!滅びてなるものかー!神聖帝国よ、永遠なれ!






聖女の旅立ち


ふぅ。ここが、修道院、か。


ある意味、女の園ね。

ま、どうせ平和でも穏やかでもないんでしょ?ね?

…。
ベ、ベアトリスさま…。
スルドい…。

さーて、オニが出るか蛇が出るか、楽しみ楽しみ♪

ん?
鬼と蛇?

トロルと
ヨルムンガンド??

もとい…


バタンっ!
たのもーう!

わたし、
ベアトリス、
きょうからこの修道院で暮らすわよー!みんな、覚悟なさいっ!



第二部 - 完 -




エピローグ ノルマン・コンクエスト


同じころ、イングランドでは…。

エルギフの子、ハロルドが一時イングランドの王位を奪うことに成功するが、1040年に他界。王位は再びハーテクヌートの元に戻る。

ハーテクヌートは、異父兄であるエドワードを呼び寄せ共同統治者とし、みずからは子がなかったことからその死後、王位をエドワードに譲った。

すなわちエマは、二人の夫との子を、無事イングランドの統治者としたことになり、クヌートによって占領されたイングランドは、一応、元の王権の下に戻ったとも言える。

ノルウェーでは、クヌート大王の死後、現地の諸侯たちがクヌートの帝国に叛旗を翻し、その支持を受けたマグヌス一世により統治される。エドワードがイングランド王位を継承するにあたり、母であるエマは、実子のエドワードではなくマグヌスを支持したと言われるが、その原因は不明である。

エマは、フランス王からノルマンディー公の地位を獲得していたヴァイキングの一派の娘であった。その父はリシャール一世、兄はリシャール二世。この兄リシャールの孫にあたるのが、ノルマンディー公ギョーム一世庶子王。


ギョームは1066年、エドワード没後の混乱を受けブリテン島に上陸。かつてクヌートに仕えたウェセックス伯ゴドウィンの息子ハロルドを倒しイングランドの王位を奪った。

世に名高い"ノルマン・コンクエスト"である。



ハンガリー、ボヘミア、ポーランド、
ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、
ドイツ、イングランド、そしてノルマンディー…

脈々と続いた女たち男たちの物語。


いまからおよそ1,000年ほど前の、北の果ての出来事であった。



- Fins -

Merry Christmas and 
Happy Holiday!