2014年12月20日土曜日

Dec 2014 - p20/p24 - 


第二十章 ヨムスの秘密    



裏切り者の帰還


[ここからクヌート君、青年バージョンでお届けします^_^;]

よし、ケント、ウェセックスは、あらかた平らげたな。


ゴクゴク。ノド渇くな~。
注:スヴェンと似てますが水筒持ってるのはクヌートです…^_^;
エゼルレッドは愚かで無思慮な王だと聞いていたが、その息子のエドマンドはなかなかの人物じゃないか。トルケルをたぶらかしたのも、あいつかもな。国内を束ねることには手を焼いているようだけど、それでも果敢に抵抗する。早くこの地を平定して父上と共に帰らないと、兄上が待ってる。


この王子、
若いのに、立派だな。
着いてきてよかった。


王子殿下!新手です!



ガウ
ガウ

まだ興奮してるから…
新手、歓迎…


いや、待て、白旗を上げているぞ?降伏か?



白旗…

つまらない…

マダアバレタイノニ…




殿下、そ、それが、あの旗は、オーディンの印、ヨムスの旗です!!

なにーーー!?






…トルケル。

クヌート殿下。おひさしうございます。大きくなられて。


フザっけんなよ、トルケル!どういうつもりだ!裏切ったと思ったら降伏だって!?コロコロと何なんだよ!


サガです。いえ、これはシャレです。

- Nordic Saga -

- Viking Saga -


…。



ガウガウ

王子、バカにした
やっつける
やっつける

こらこら、待て待て。


いや、ビョルンの言うとおりです。こいつ、斬ってしまいましょう。怪しいですよ。間者かも。


もとい。ダジャレはともかく。
おまえや!
王子殿下たちのようなお坊ちゃま育ちにはおわかりにならないでしょう。われらヨムスの者は、いつもこうなのです。父の時代からね。


トルケルのお父さん?

ええ、わたしの本名は、トルケル・ストラットハーラルソン。つまりわたしと兄シグヴァルディの父はストラットハーラル。そして父の名は、ストラットハーラル・ハーラルソン

長いよっ!
だからなんなの!



初代ヨムス・ヴァイキング総長
ストラットハーラル・ハーラルソン

父、ストラットハーラル・ハーラルソンは………



……ハーラル藍牙王の、ハーラル・ブルートゥースの子です。


ええっ!?藍牙王って、おじいさまのこと!?じゃあ、トルケルは僕らの…えーとえーと…従兄弟なの!?


はい。しかし父ストラットハーラルは、かの地に留まってはスヴェン殿下との王位継承争いが起きるからと、みずから部の民を率いてヴェンドの近くのヨムスの砦に赴き、しがない傭兵家業を始めました。耕す土地も治める土地もなき父にできたのはそのくらい。父に従う者たち、祖父の藍牙王や叔父の双叉髭王の新しき神の政策に反発する者たちを集め、オーディンとトールをあがめ、彼らを養う生活を送りました。新しきデーンと、旧き男たち、その双方のために。



それが、ヨムスヴァイキング。

…。


われわれは文字通りの寄る辺なき者。部の民を養うため、父も兄も、不名誉の烙印を押されようとも常に、力あるもの、給料を払えるものに従って戦ってきました。


たとえ、傭兵、盗賊、日和見主義の裏切者、と蔑まれようともひたすら耐えて。

だ、だからってなんで父上を裏切ってイングランドに寝返ったんだよ!


それもまたカネです。われらが一団は、大きくなりました。もはや、定住する地なくば暮らしていけない。今回のイングランド攻め、わたしはそこに期待しました。しかし、王はみずからやってこられ、われらが戦い奪い取った地もみずからの手中に納めていかれた。わたしはわたしの父と王との姿を比べ、考えた。何がいったい二人をこうも分けたのか、持てる者と持たざる者の違いはなにか、と。


そうしているうちに、そのような違いはないのだ、あるのは心の内に秘めた強き志だけだと気づきました。


父は道を選んだ。しかし同じようにスヴェン殿下も、タナボタの王位などではなくみずから道を選び、血塗られた道をみずから歩み、新たな国を築こうとしている。ならばわたしも…そういうわけでした。





じゃあ、じゃあなんでまたこっちに来るんだよ。じぶんの国を切り取れよ。


もちろん、その志は捨てておりません。一時はエドマンド殿に従ってそれを成し遂げようかと考えました。しかし...イングランドのやつらはわれらデーンを畏れそして嫌っております。先日、われらの仲間はヒレツな手で攻撃を受け、わたしの弟も命を落としました。いつの日か、この地もわれらを受け入れてくれましょうがいまはまだその時ではない。いまはまだ、わたしはエドマンド殿ではなく、王子殿下、あなたたちと共にいるべきだと考えたのです。



うーん。。。おっさんの考えることはおれたちワカモノには難しいなあ。長く生きてるといろいろ余計なことを考えるんもんなんだなあ。で、紆余曲折はともかく、これからは信用できるの?


それは…。わかりません。しかし、王子殿下がわたしの忠誠を信じてくれる限り、受け入れてくれる限りは…。

うーん。おれたち次第かー。王子も楽じゃないって、昔トルケルが言ってたのはこのことかー。ふう。


それから殿下、もうひとり、殿下につき従いたいという者がおります。西の地、マーシア伯のエアドリックという者です。


なんでも以前、イングランドの王宮にて、エゼルレッドの後妻のエマというノルマンディー女の産んだ子を世継ぎにと推したそうですが、結局先妻の子のエドマンドが王太子に選ばれたため、イングランドを見限ったということです。


ですがやつには、気を付けなされよ。


えー
おまえが言うか~??



.. To be continued.