Dec 2014 - p16/p24 -
第十六章 我が名はオーラヴ
メイルシュトローム~災禍の渦~
へ?ご存じないんで?スヴォルド島沖ですよ?いまの季節、潮流的にこっちが近道ですぜ。
そ、そうだったか。
オーラヴのダンナも昔はこのあたりを一緒に荒らしまわったじゃあねえですか。王さまになったら忘れちまったってか?
い、いや、すまんな。
あの船は…マツガイないっ!
"オルメン・ランゲ"、オーラヴの旗艦だっ。
ひーふーみー、確かに11艘のみ。シグヴァルディの報せ通りだ。
よし、あの島を廻ったら、攻撃だ!!!!
邂逅
牙をむく蛇
ワーワーワー!
ワーワーワー!
ワーワーワー!
敵襲!敵襲!
ものすごい数です!60艘ほどの大軍です!
オーラヴー!われこそは、ラーデの新ヤール、エイリーク・ハーコナルソン!
父の仇!思い知れ~!
お、おのれ、シグヴァルディ、き、きさま…
はっはっは!智謀の将、ヨムスのシグヴァルディとはおれのことよ!おまえたちとはアタマの出来が違うのサ!下賤な傭兵と侮ったのが命取り。キサマこそ、下賤なコゾウが、そのきれいなツラと運の良さだけでここまで来たんだろうが、それももう終わりだ!いまや北海すべてがキサマの敵だぞ!
それもこれも、女を殴ったからだそうじゃないか!タラシのキサマにふさわしい最期だな!
お、おのれ!
おい、いくぞっ
ガウガウ
ガウガウ
準備おっけー
おっけっけー
うあっ、ポルカドット殿、何をする!
わるいな、エイナール、あんたに恨みはないが、こういうことなんだよ。
おのれ、仕組んだのか!ヒキョウものめ!!
うあーーー!!!
オーラヴーーー!!よくも母様にパンチしたな!(って、なんでおれ舟漕いでんだ!?イチオウ王子なのに…。王族なのに…。このおっさん…。うーん、でも同盟だから仕方ないっ!)
王よ、ここはわたくしめに
ヒュン!
うわっ、あぶねーな!
おう、エイナールか、救われたぞ。
ヒュン!バキっ!
こっちにはフィンの射手が乗ってるんだ!ラップだぞ!弓矢合戦なら狩人が上だぞ!
うわっ!
エイナール、どうした!?
弓が折れただけです。
よし、ではわしの弓を使え。
グーングーン。
…。弱い弱い、弱いのお。かの剛勇の王の弓にしては弱すぎる。これではもはや…。
トゥっ!!
エイナール!
カキーン、カキーン!
エ、エイナールゥゥゥ!
あ、あれは…
あの女は、シグリッド。そしてあっちの舟にいるのは息子のオーロフと…、あれはスヴェン、スヴェン・フォークビアード!双叉髭王か!?
ラーデ、スウェーデン、デーン、それにヨムス、おそらくはヴェンドも…、みなこのワシの敵に回ったというのか。。。
船旅の終わり
オーラヴよ、北のすべての女に愛されし男よ。ノヴゴロド、ヴェンド、ノーザンブリア、そしてデーンの女たちに愛された者よ。そなたは確かに、新しき世界を造る力強さを持っていたのだろう。
だが、強すぎた!それゆえに急ぎ過ぎた!このシグリッドとて、そなたがこの女のありのままを受け入れることができたなら、かの地ともどもそなたと共に生きることもできたかもしれん。しかしおまえは違った。新しき神を信じる気持ちの強すぎるがゆえに、彼女のありのままを愛することができなかった。おまえ色に染めようとした。
おまえはいつもそうだ。妄想と盲信の強さ。それがヒトを惹きつけヒトを夢中にさせるが…
…その反面、おまえはおまえを受け入れられないものに対して、苛烈すぎる。
それはお前が、旧き神を信じていた時も、新しき神を受け入れてからも、何も変わっていない!オーディン?ヤハウェ!?いや、おまえは、おまえしか愛していない、おまえしか信じていないのだ!
そんなものには、もはや誰もついていかない!!
アブナイっ!
ヒュン!ブスッ!
う、うわー!
に、兄さーーーん!
ソルギルスーーーー!
に、に・い・さ・ん…ブクブクブク
タイラ、ギダ、いまは亡きゲイラ、そしてアロギアさま…。
わしは、わしは…。マツガっていたのか…。
いまいくぞ!!!
我が名は、
我が名はオーラヴ。
オーラヴ・トリグヴァ…
いや、我が名はオーラヴ・ソロ[thor]…
ブクブクブク
ブクブクブクブク…
第一部 -完-